見出し画像

キング・クリムゾン “Red” (2003.12.15)

1970年代に私をインストゥルメンタル・ミュージックに導いたアルバムは、当然のことながらジェフ・ベックの作品だけではなかった。

“Red” King Crimson (1974)

1曲目、タイトル曲冒頭の
B - D - F - A♭ - C - E
というディミニッシュ〜オーグメント進行、主題部のオルタードサウンド(リフの構成音がEパワーコードに対して♯11、♭13の関係を為している)、そして中間部の
B7sus4 - B7sus4/D(*) - D7sus4 - D7sus4/C
(*ロック的に書くとこうだが構成音は D6,9 と同じ)
という進行に、のっけから私はすっかりやられてしまったのである。

それ以前からキング・クリムゾン作品に見られたサックス・ソロはたしかにジャズを連想させるものだったとはいえ、コードやフレージングはロック/ブルースの語彙に収まっていたし、前作 "Starless and Bible Black” や前々作 “Larks' Tongues in Aspic” でのフリー・インプロヴィゼイションにしても、「自由に演ってるなぁ」、トライトーンをちりばめたギター・リフ群も、「左手フォームの縦横移動だな」、って感じで、サウンドの妙に感じ入りながらも、それらの仕組みを理解するためにさほど慌てはしなかった。

ところが、である。この “Red”の、コードの推進力はどうだ!管楽器を乗っけたうわべのジャズ風サウンド(←これをとらえて「ジャズ的だ」と評しているリスナー/評論家が多いが)ではなく、ディストーションギターが重なった極めてハードロック的な質感であるにも関わらず、このハーモニーの構築性はどうだ!

少年ナカハラがそれまで見たこともなかった建造物が、目の前にそびえ立っていた。その後彼がジャズに走る全ての理由が、このアルバムにあった。

(2003.12.15)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?