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無観客有料配信公演「メビウス」を上演して感じたことと、舞台配信公演を実施するのに必要なあれこれの話

先日7/31まで自劇団、GAIA_crew主催のユニット公演「meteorプロデュース 朗読劇『メビウス』」をイープラスさんのStreaming+で配信公演しておりました。
公演詳細はこちらをご覧ください

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初めての有料無観客配信公演だったのですが、そこでちょっとだけ知見が溜まったのと、終わってみたら「あれはどうやってやったんですか」「○○はどうでしたか」とかむっちゃ聞かれるのである程度纏めてみようと思いましてのエントリーです。多分長文になります…。

公演自体は終わってるのですが、劇団員三橋亮太と奥宮キエラが演じたチームの動画は公式YouTubeに上げておりますので、コレをまずは見てもらえると嬉しいです。(宣伝)

まずなんで無観客有料配信にしたのか

元々は劇団ショウダウンさんの傑作二人芝居である「メビウス」を6チームで演劇として上演する予定だったのですが、まあこのコロナの状況下で普通にお客さんを入れての公演は難しいよね…ということでかなり会議を重ねた結果、無観客で配信ならやれるのでは?というアイデアに出演者・スタッフ一同賛同して頂けたことで開催となりました。開催に至るまでのポイントは以下です。

1 普通にお客さんを入れてのソーシャルディスタンスを守ることは難しい。

キャパ40~50でギチギチの小劇場だったので、ソーシャルを守ることは難しいと判断しました。(2メートルのソーシャル守ったらお客さん2~3席しか用意できませんでした。)

また変な話ですけど、接触確認アプリを関係者、観客にも入れてもらい、入場の際には同意書に個人情報を書いてもらい、何かあれば即保健所に連絡、観客のみなさんにも連絡をし…というのが、言葉は悪いですが「めんどくさい」というのもありました。

これは決して「なにかあっても対応しないよ」という事ではなく、そこに割く人的、時間的リソースを用意するリスク・リターンを考えると、金銭的、精神的、体力的、風評的全てにおいてプラスが見込めないと思ったということです。それを考えて用意しないといけないなら他の方法でいいじゃないか、という結論です。正直僕自身は8月前半の現段階で、客席にお客様を入れての公演を主催として行うのは難しいと判断しています。

2 稽古したくてもコロナ怖いし稽古場がまず空いてない

5月~6月の段階で自粛が叫ばれて居た中、僕らが使わせてもらうような公民館などは空いてませんでした。またどちらかというと各事務所さんも「分かっている人間しか居ない稽古場よりもそこへの移動のほうがリスクが多いと思う」という意見を頂きました。

そうなると稽古をzoomなどを使ったオンラインでやるしかない。でもそれでは舞台演劇の演出として動きをつけるのは無理なので、朗読劇という形にシフトチェンジしました。

でも内容としては「朗読劇の革を被った演劇」をやりたかったのでそういう感じになっています。詳しいことはスペシャルチケット購入者様向けのコメントで書いたので割愛。ちなみに最終2回の稽古は7月に入ってだったので、稽古場を借りてオフラインで本番同様に行いました。これも最低限の人間で実施するということで、関係各所のOKをもらって稽古しました。

3 とはいえ収入がないとみんな死ぬから有料配信を考える

配信で行う場合お金をいただくにはいくつか方法がありますが、いわゆる「投げ銭」に関して言うとGAIA_crewのYouTubeチャンネルはフォロワーと再生時間が足りないので収益化できてません。(だからみんなフォローしてください…)

そうなるとチケットを購入してもらっての配信に接続してもらう形になるのですが、今回劇団員のチームを合わせて全6組です。ほぼ客演さんでその出演料、音響・照明・舞台監督・配信・小屋代その他もろもろ…ミニマムに行うとしてもお金はかかります。最終的にイープラスが新規で立ち上げたStreaming+(https://eplus.jp/sf/guide/streamingplus-serviceguide)で配信することを決めました。

決めたポイントは過去にGAIA_crewでチケット販売経験があるのでアカウントがあること、7月まではシステム手数料がサービス開始のキャンペーンで割安だったこと(3.9%)、Vemeoでの動画処理がスムーズなこと、スマチケなどのアプリから一貫して購入まで持っていけること…などありますが、一番は

自分がイープラスで働いているから

です。僕はイープラスが運営しているエンタメ情報サイト「SPICE」のアニメ・ゲームジャンル編集長をやらせて頂いているので、立ち上げから運用まで内部から見ているので安心感があったのと、小劇場のこれくらいの配信公演を行えるのか実験も行えるなと思ったからというのがあります。

※ちなみにSPICEで働いているからと言っても金額的、サービス的な恩恵はなんにも受けてません。強いて言えば販売ページに乗せる文言を締め切りギリギリまで僕がチェックできていなくて「早く見て!」と担当さんからチャットが一回飛んできたくらいです。(慌ててチェックしました、担当さんその節はご迷惑おかけしました…)みなさんと同じフラットな状況での公演登録と手続きを踏んでいます。

では実際どうやったのか

まずはこちらをご覧ください、今回の公演のレイアウトと配線図です。

メビウス_レイアウト図_20200707-3-1

メビウス_レイアウト図_20200707-3-2

今回の配信公演に関しては生放送は諦め、事前収録したものをアーカイブ配信する形を取りました。いわゆる「VOD」というやつです。

理由としては、配信側となる劇場さんの回線が家庭用のWi-Fiのみで、正直かなり脆弱でした。生放送配信に関しては送り側の回線の太さというのは超重要で、安定した配信を行えないならいっそちゃんと録画したものを見放題という形にしようということになりました。なのでネットに接続する配信機材は今回ありません。それがあるなら更に盛りだくさんになると思います。

「じゃあなんで収録場所を配信をやりやすい場所にしなかったの?」という意見もあるかもしれませんが、単純に既に小屋代を半金お支払いしていたのと、劇場さんもスタッフさんも現場が飛びまくって困っているのを分かっていたからです。勿論こっちも困っているのでかなり色々相談&勉強していただきましたが、現場でモノづくりしたいというスタッフさんの情熱もかなり熱かったのをお伝えしておきます。

二人芝居なのでそれぞれを抜くカメラが一発ずつ、正面からのロングを抑えるカメラと斜めから二人を同時に写すカメラの4点視点です。(図のカメラAは現地でのセッティングで斜め上からの視点に変更になりました。)

2ショットを狙うカメラA、BがFDR-AX100、カメラマンがついて2ショットを抜くカメラC、DがルミックスDC-GH5と用途で2台ずつを合わせているのは、画質を均一化するためです。それぞれの画像を僕が操作するV1-HDに送り込んで、生でスイッチングしています。

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画像の左画面が四分割のカメラ画像、右側が録画されている実際の絵です。更にセリフとサウンドのバランスを聴くためにヘッドフォンをしているので、僕はこの現場ほぼ目の前の演技を生で見れてません。画面しか見る余裕なかったです。

マイクはフロントにAMCRON PCC160 バウンダリーマイク三枚、舞台奥にaudio-technica PRO42を3枚、客席にガンマイクを二本立てています。今回はVOD方式とは言え「ミスしても止めずに一発勝負の舞台公演」を配信するものなので、ピンマイクと悩んでエアマイクで会場の空気感を優先しました。

ということで、最低限上記配線図にある機材などがあれば今回くらいの動画は撮れます。逆に言うとコレくらいはあったほうがいいと思います。オペレーターとしては音響須川、照明河上、舞台監督九巻以外では

カメラマン2名(大塚・大野)、映像ディレクション(登坂)、スイッチャー(加東)の4名です。

各スタッフからコメント

各セクションのスタッフさんからコメントいただいたのでそれもこちらで紹介します。最後に演出として僕のコメントも載せておきます。

撮影担当 大塚正明(GAIA_crew
◆今回の配信公演の現場で気を使った部分は?
声とSE/BGMのバランス

個人の視聴環境の問題とか、慣れの問題もあるので難しいなと思うんですが、家でヘッドホンで聴くと突然の大きな音にドキッとすると言われました。演出的な部分もあるかとは思いますが、声の聞こえやすい音量に合わせてもうちょっと効果音の最大値を下げても良かったかなと。

生で見てると気にならないですが、イヤホンで聴くと音の上下幅に耳がついていかないというか…なんとなくイメージ伝わりますでしょうか?

◆難しかった部分は?
台本に合わせたカメラワーク、演者への説明

次にやるなら、カメラ側の「どう撮るか」と演者側の「どう見せるか」を、もっとリンクさせたいですね。

Eチームの土性正照さんは左右分割でずっと演者が写ってるイメージでいたそうで、話していない時の芝居が見えなくて失敗したなーと思ったそうです。

まあ、本気でやると稽古の段階からがっちりついてないとダメなので、なかなかキツくなりますが…配信前提だと、ある程度キメカットとかだけでも考えてた方がいいかなと思いました。

◆機材周りに関して通常の舞台公演と特に違った部分は?
撮影チームとしては、みんなの手持ちだとこんな感じですかね。
可能ならもっとカメラ台数増やして、普段客席からは見えないアングルがあっても楽しいかなとは思いました。本質の部分ではないですが。

あと、カメラのスペックや操作の問題で、照明の良さをフルで出せなかったのはちょいと心残りがありました。薄暗い時、窓枠などの効果が、目で見るよりずっと暗くなってしまって…

◆舞台の配信公演、というものに関してどう思われますか?
舞台配信というものに対しては、可能ならやりたいし、見たいです。

コロナが落ち着くまで何もしないと、やはり火が消えてしまうのではないか、落ち着いた時にもうやれる人がいないんじゃないか、という不安があります。

今は代替手段としての配信ですが、照明、音響も含めて、映像で見せることをメインに考えた演劇というのが増えてくれば、楽しみ方のひとつとして定着するのではないかなと。時間とか座席数に縛られないというのは、メリットでもありますので。

映像ディレクション 登坂義之
◆今回の配信公演の現場で気を使った部分は?
後の設問で真逆の事を言いますが、「舞台(朗読劇・演劇)である」ということをかなり意識しました。
ですので、演者さんにカメラ位置などはご説明しましたが、映画のように撮影側からアクトの注文はしていないはずです。

◆難しかった部分は?
これはライブコンサートの配信などにも共通で、少し総論的になりますが、最終的な出口が違うので今までの演劇的なノウハウが活かしきれないところですかね。

例えば舞台照明はいかに舞台を彩るか、舞台音響は会場でいかにいい音を聴かせるのかという技術なわけですが、配信の場合16:9のフレームに収まったものが全てですので、「カメラのレンジに合った照明」「ユーザーのデバイスで良く聞こえる音」が理想になります。映像部と各セクションとで、しっかりコミュニケーションを取るべきだと痛感します。コンプひとつ取っても、すごく嫌がるPAさんとかいるので、自分も収録時に柔軟性のある対応をしなければいけないなと思います。

でもこの現場で個人的に一番キツかったのは納期です(笑)

◆機材周りに関して通常の舞台公演と特に違った部分は?
特にはないですかね。リアルタイムでスイッチングしてそれを収録したので、そこはちょっと特殊だったかと思います。

◆舞台の配信公演、というものに関してどう思われますか?
昔noteに書いたんですけど、基本的には配信は観劇の代替手段としてしまうとエモさが薄れちゃうので、映像コンテンツとしてしっかり作り込むべきだと思います。

じゃあ演劇は全部劇映画じゃねえか!っていう話ではなく。演劇を配信する前提で、どういう演出がいいんだろう?演技プランは?明かりは?音は?美術は?衣装は?っていう再定義が必要かなと思います。

で、「観劇の代替手段にはならない」とは思うのですが、劇団の表現の場や収益モデルとしては代われる部分があるとは思います。まだまだ映像配信自体が過渡期なので、色んなチャレンジを見てみたいし、自分も参加したいと思います。


音響担当 須川忠俊(ALTERNAIT)
◆今回の配信公演の現場で気を使った部分は?
配信のみという事で、現場の空気感がどうやったら届くかなと。ワイヤレスマイクを使う事も考えたのですが、今回はエアマイクのみでの収録にしました。反省点は多少ありますが、ある程度の指針にはなったかと思います。

◆難しかった部分は?
やはり、現場と映像との整合性をどうとるか。

銃声など大きな効果音に関しては現場レベルの出力をしてしまうと配信では歪んでしまう。演劇は元来LIVEと違って音のダイナミクスレンジ(強弱の比率)が広いのである程度大きな効果音はボリュームを下げ目にしたのですが、あまり下げ過ぎてしまうと俳優のテンションに影響が出る可能性があります。

ギリギリのラインを攻めてみたのですが、やはり視聴環境によっては大きかった効果音もあったみたいです。今後の課題ですね。

◆機材周りに関して通常の舞台公演と特に違った部分は?
今回配信用とオペレート用のミキサーを分けていなかったので、実際の配信音声がモニタリング出来なかった事です。これは今後の課題かと思います。

その音声を聞きながらオペレートをするスキルも必要なのかなと思います。

◆舞台の配信公演、というものに関してどう思われますか?
コロナ渦に於いては「致し方ない」というスタンスではあるのですが、配信でしか味わえないものもあると思います。

そこに付加価値を付け、実際に劇場に足を運べないお客様に満足していただける作品作りをしていきたいと思っています。

照明担当 河上賢一(ラセンス)
◆今回の配信公演の現場で気を使った部分は?
普段の舞台と違って肉眼で観るお客様はおらず、全員がカメラ越しに観る事になるので、スイッチングのモニターでどう見えているかをチェックしながら作りました。

◆難しかった部分は?
通常の公演時には視界の端に写るだけでもお客様が無意識に認識して下さる様な照明効果が、カメラの画角から外れてしまうとその役割を果たしてくれない事に苦労しました。

◆機材周りに関して通常の舞台公演と特に違った部分は?
今の機材環境ではあまり気にしなくても良い場合が多いのですが、LEDはチラつきの原因になる事が多いので、顔のフォローには極力使わない様にしました。

◆舞台の配信公演、というものに関してどう思われますか?
もともと舞台業界そのものの知名度の低さや、足を運んでまで観る気には至っていないというお客様をフォローするのに有用だなという捉え方をしていたのですが、昨今の防疫事情からこれまでより多様な展開がありそうだなと期待を高めています。

演出担当 加東岳史(GAIA_crew)

◆今回の配信公演の現場で気を使った部分は?
まずやっぱり舞台演劇は客席のお客様もあって成立するものだというのを痛感しました。リアクションがなくてもそこで人が見ていて、何かを感じているというのは作品自体の空気を変えます。それがない状況でアクトする演者には「画面をぶち破るくらいの本気がないと伝わらない」と稽古から言い続けました。

◆難しかった部分は?
一番は狙っていた照明効果がまるで映像では反映されなかったこと。ミラーボールをクライマックスで使う予定だったのですが、カメラテストの段階でまるで映像に反映されないので外して別の照明に吊り変えてもらっています。舞台照明の美しさを映像で反映させる難しさを痛感しました。あと音響のバランスですね。劇場感を狙ってエアマイクを使っていますが、音を上げるとどうしてもホワイトノイズが乗る。そのへんはこれから考えないとならない部分だと思います。

◆機材周りに関して通常の舞台公演と特に違った部分は?
各セクションの皆様本当にご尽力いただきました。演出は普段舞台が始まってしまったらもうあとは演者に任せるしか無いのですが、スイッチングという一番の大任を受け持ってしまったので誰よりも緊張して集中していました。

あとは通常の舞台だとお客さんが演者の細かい演技を自分で見たいように見れますが、配信だと見せる絵はこちらの選んだ一つだけになってしまう点です。なので重要になるのはやはりスイッチングで、コレは演出家か、稽古から作品をよく見ていた専門の人間が担当すべきだと思います。

◆舞台の配信公演、というものに関してどう思われますか?
GAIA_crewでは2011年より全ての本公演を無料生配信しています。これは東日本大震災を受けて行いだしたことなのですが、今回の世界的な疫病でまた新しい演劇の見せ方のフェイズに入ったと思っています。

今後コロナが落ち着いたとしても、劇場集客と有料配信のハイブリッド公演は当たり前になると思いますし、GAIA_crewはそちらにシフトしていきたいと思っています。どうしても劇場に来れないお客さんは沢山いらっしゃるので、その人達が「この劇団は配信もやってるからそっちで見れる」と思える環境を伝えていくのは大事なのではないかと。

また、やってみての感想としては舞台公演に関して言うと、よほど仕掛けや理由がない限り舞台配信は生放送よりVOD方式が良いと思います。

理由としては、ライブなどよりも圧倒的に「ストーリーが機材や通信環境で止まったり落ちたりする」事に対するストレスが高いこと、今回のユーザーからの言葉で「期間中何度も見れるのはありがたい」「お気に入りのシーンを何回も見直したい」という意見が多かったことです。更に配信機材を用意する手間と資金もかかりません。小劇場としてはそれがベターなのではないかと…勿論配信の方に「配信ならでは」の面白さを加味することも考えないとなりません。

なら配信をどう面白く見せるか

コレは様々な意見やアイデアがたくさん出てくると思うのですが、今思っているのはこんな感じです。

今回はOPだけ別動画を作って差し込んだのですが、これみたいに「配信側では凝った映像が流れるシーン」や、「VJ的に効果が乗っているシーン」(火事のシーンで実際画面上に燃えているエフェクトが重なっているとか)というのも面白いかと思っています。

販売する配信も一種類ではなく「通常ver」「効果マシマシver」「主人公のみ追いかけ続けるver」とか、バリエーションを上手くもたせられたら観たい絵面が提供できるんじゃないかな、別アングルも購入して観てくれるんじゃないかなとか、まあ色々ゴニョゴニョ考えてます。なんかアイデアあったらどっかでブレストでもしましょう。

色々と参考になったことも検討材料になったことも多い今回の配信公演でしたが、一つ次回公演開催でほぼ確定でやろうと思っている事として、「当日パンフの完全データ化」というのがあります。劇場と配信を平行に扱うなら、当日パンフも配信視聴の人に渡すべきだと思うんです。なので次回公演はおそらく当パンはサイトかPDFかで展開して、購入者には当パンゲット用のQRコードを配布する形にするつもりです。

あれ、必ず余るし、捨てるのも大変だしお金かかるし、でもないと寂しいというなかなか難しいアイテムなんですよね。サイト作って展開するなら演者コメントも動画で乗せることも出来るし、演者個別の次回出演作品もSNSアカウントもリンク貼ればいい、折込希望もわざわざ何千枚も持って劇場に折り込みに来てもらわなくても、チラシの表面とウラ面のPDFとリンク先のURLだけ送ってもらえばいい、ほら楽だ!!

あと今回面白いと思ったのは、公演期間中は既に収録済みなので、演者さんたちがゆっくりツイッターなどの感想を読んでくれたり、同時視聴を企画してくれる機会が多かったこと。演者たちはちょっとしたお祭り期間みたいな感じでした。チケットの売上も配信前の段階で全体の5割だったのですが、配信開始日(7/22)から販売最終日(7/30)の間で残りの5割を売りましたしね。始まってからの伸び率は通常公演以上だったかもしれません。よくありがちな

「見に来てくれるの?え、ああ…もう土曜の昼は満席でキャンセル待ちなんだよね、他の日程ならまだ余裕あるし…え、もうそこしか空いてない?じゃあ今回は仕方ないか…一応1席なんとかならないか制作に掛け合ってみるよ」

みたいなことは配信あれば無いです。キャパの上限が基本がないので。というか上記のようなやり取りをしてパッツパツに劇場に来てもらってきつい環境で2時間近く拘束して芝居を観てもらうというのはもう世情的にも無理だし、やめたほうがいいと思います。

だって映画だろうが家で動画見てようがなんだろうが、楽でゆったりした環境のほうが満足度は高いし見るものにも集中できるんですよ。僕なんか体がでかいので一回芝居観に行くと2~3回は自分の尻の痛さで集中が切れることがあります。まあバチバチに埋まってる客席を感じると演者のテンションも上がるのは事実ですが、それは自分の演技の仕上がりが甘いのを助けてもらっているだけなので。いつまでも甘えたらいかん。

端的に配信を行うということは、可能性としては30人程度の小さな小屋でやる芝居を1000人に見てもらう可能性もできたということだと思ってます。(過去の本公演無料生中継は大体50~100人くらいが観てくれることが多かったです)そうなると今まで重要なのはパブリッシングです。

演劇のパブリッシングって凄い難しいと思っていて、未だに情報が稽古場で撮った稽古風景の動画や写真と、チラシやサイトくらいしかありません。予告編を作ってもそれは映画と違って本編を切り抜いたものではないので、どこまで行っても本編を見るにはどういう内容か把握しきれないチケットを買って劇場に行くしか無いわけです。

(再演の場合とかは前回の動画とか使えると思いますし、そのどんな内容が出てくるか不明瞭なドキドキが演劇のいいところという意見も勿論わかります)

でも配信公演の場合、観た人の感想が口コミになってリピーターや新規客が観てくれる可能性が増えるわけです、映画と一緒ですね。更に配信期間に本編映像を頑張って編集すれば本番素材を使った宣伝材料も作れます。これは劇場での集客公演しかできない状況と違って圧倒的なイニシアチブだと思います。(今回はそこまで手が回らなかった)

更に今回は九日間の配信期間でしたが、もっとこれを伸ばせば更に観て貰える機会が増えたかもしれません。売れ行きの速度感としては通常の公演と同じく、初動と終わり際が伸びるUの字をきれいに描いていたので、伸ばしたけどチケット動かないという事態を避けるために、配信期間中の中パブをしっかり考えたほうがいいかもしれません。


という事で別段とりとめもなくつらつらと書きましたが、何か質問がございましたら加東のツイッタ―(https://twitter.com/kaxtupe)までリプでもください、お答えできることはお答えします。

こういう状況ですので、舞台公演を実施するのは本当に難しいと思います。それでもなんとかやり方を考えていきたいですし、思いついたことや経験はシェアしていければと思っています。何か皆さんの創作のお手伝いになれば嬉しいですし、興味があったらうちの劇団の次回公演とかもチェックしてください。長文を最後までありがとうございました!

劇団GAIA_crew代表 加東岳史



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