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meteor配信公演「メビウス」演出から見た見どころメモ

どうも、31日まで演出を担当しました配信有料公演「メビウス」をイープラス「Streaming+」で上演しております。(宣伝)

※収録したものを9日間買ったら見放題で配信しているのですが、敢えてここは配信ではなく「上演」していると言わせてください。詳しくは以下の公式サイトから。

怒涛の無料組を含めて6組同時公演なのですが、僕自身全チームを演出という立場で見ていたので、6月はほぼ毎日メビウスの通し稽古を見ているという状況でした。

それでも飽きないくらい各チーム色が違うし、それを楽しんでもらいたくて6組も組んだのですから、配信が終わる前に各チームのおすすめどころを紹介しておこうかと思っての駄文になります。ちなみにこれは各チームに優劣をつけるものではありません。どれも必死に、思い切り楽しんで、真剣に演じてくれた6チームは僕の中で最高のものを残してくれたと思っています。まあそれでも「どれを見たらいいんじゃい!」「一本見て他のも気になるけどどんな感じなんだろう…?」とかいう人のガイドになれたら、くらいのもんです。

※演出的な意図などはスペシャルチケット特典の演出ノートに記載したので、そちらを宜しければ…是非(宣伝)

Aチーム 野水伊織×伊藤節生

「艦隊これくしょん-艦これ-」翔鶴、瑞鶴や、「デート・ア・ライブ」四糸乃役を担当する野水さんと、「モブサイコ」モブ役などで活躍する伊藤くんのバリバリ現役声優コンビのAチーム。

野水さんは自劇団にも何度も出演してもらっていて、もう10年来の友達でもあるし、伊藤くんは今年2月の舞台「オタクにヒーローはむずかしい」で共演した仲です。

元々野水さんがメビウスを演ってみたい!という話をしてくれて、じゃあ出てよ、となったのですが、メビウスは男女二人だけ出ずっぱりの作品です。

※本来は通常の演劇公演用戯曲なのですが、新型コロナウイルス感染症対策に伴う昨今の状況で朗読劇という形に一部改変して今回お届けしております。

野水さんはとても器用な女優さんで、それでいて役にダイブする人です。役の人物と自分の境界線が演じながらなくなっていくタイプの演技者なのです。二人芝居で行う場合、この”役そのもの”になってしまう可能性のある相手を受け止められるのは誰か?とかなり考えました、一番配役が難航したと言ってもいいでしょう。

対する伊藤くんは兎に角優しいです。性格もさることながら、芝居がとても優しいのです。ちゃんと役がそのシーンで何を求められてそこに居て、どうすべきかを直感的に察することが出来る人です。こういうタイプの優しさをもっている人はすごく柔軟にその場を楽しめるんですけど、伊藤くんは特にそこに関して優れたものを持っていると思っています。

今回は編集なし(OPムービーだけ後から差込、その時間も演者は舞台で暗闇の中待機していました)、一発取りの公演です。野水さんがどうその場を感じて表現してくるか僕も演出として読みきれない部分がありました。まあ、8割は稽古で「こう見せてくるだろうな」と言うのはみえてましたが、残り2割をすごく細やかに、でもぶっ放してくるのが野水伊織の面白さです。それをちゃんと受けて、自分の表現のブースターにできるのが伊藤節生だな、と。そこはうまくハマった気がしています。声優としてのスキルは言わずもがな!

※イメージとしては映画「少林サッカー」のチャウ・シンチーが野水さんで、ヴィッキー・チャオが伊藤くんです。あ、これは別にわからなくてもいいです。

見どころとしては野水さんは「おそらく全チームで一番ミニマムなメビウス」と言ってましたが、どっこいどこよりも「広がりのあるメビウス」になっていると思います。収録した劇場は決して広い場所ではなかったですが、その空間を一番広げてくれたのがAチームでした。エンディングテーマを作曲してくれたなるけみちこさんも「とてもベーシックで、だからこそ広がりと深みがあるから、テーマ曲の元になっているデモを正当ブラッシュアップしたものを使いましょう」と言ってくれました。

Bチーム 窪真理×望月英

もっちーこと望月くんには何度か「メビウス挑戦しなよ」と声をかけていましたが、その度に断られていました。

曰く「今の自分ではまだ及ばない」とのことでしたが、そんなこと言ってたら僕たちはすぐおじいちゃんになって死んで灰になってしまうので、せっかくだからやりなよ、と今回オファーしました。

望月くんは達者で幅もある芝居のできる人なんですが、欠点として「自分の頭の中に先に理想を作って、そこに実際の演技を合わせられないと途端に自信がなくなる」というのがあると僕は思っています。結構どう見えているかを気にするんですよね。

それを払拭すればまだまだいい表現を産めると思っているので、ここは一発「望月くんが主体になって構築していかないといけない環境」にしようと。そこで白羽の矢が立ったのが窪真理さんでした。

もと日テレ系「PON!」お天気お姉さんとしてテレビやラジオで活躍する彼女も、元々僕と望月くんの知り合いで、トルコ人とのハーフの超美人ながらコロコロ笑う素敵な人です。彼女からは「お芝居もっとやってみたい」とずっと言われていたし、どことなく儚げな表情をふとした時に見せる窪さんがこの作品を演じたらどうなるのだろうか?という興味もありました。

演技経験は望月くんのほうが長いです。稽古はお互いがアイデアを出しつつも、どことなく望月くんが舵をとって勧めていきました。これはシメシメと思いつつも稽古が続くと、面白いことが起こってきます。窪さんが毎回どこかしら「本当に心から出た自分の言葉」としてセリフを言う瞬間が出てきたのです。多分それは必死に作品に向き合ってくれたからだと思うのですが、その瞬間が重なれば重なるほど、望月くんの演技も「もっと窪真理の瞬間を引き出そう、見逃さないようにしよう」と集中が上がっていきます。これは思った以上の相乗効果でした。

このチームの見どころはそこです。80分無い本編の中に窪真理の「本当にそこで思って、感じて、出てしまった言葉」がたくさん散りばめられています。それを逃さず受け取ろうとする望月くんがいるBチームは一番「愛に溢れているメビウス」なのではないかなぁ、と思います。なるけさんとはこのチームの雰囲気だと、ケルト音楽とかのローホイッスルのイメージっぽくないですか?と話した所「私もそう思ってたんです!」と言ってもらえたので即決でエンディングテーマはそういうアレンジになりました。

Cチーム 熊野ふみ×坂本佳史

自劇団の前作「真説 LinKAge~凛国異聞」はダブルキャストの公演だったのですが、そこで同じ花火師の弥太郎という役を演じてくれていたのがこの2人でした。

つまるところ「ずっと同じ役を演じあった」関係なんですね。それぞれの解釈で思い切り演じてくれたのですが、この2人が相手役として組むのは面白いよなぁ、というのがCチームの始まりでした。

熊ちゃんはスマートな美人ながら物凄く多彩な演技の出来る技巧派です。メビウスは最低でも10役以上それぞれが演じなければならないので、そのスキルが存分に発揮されています。かつとてもサバサバした性格の彼女は、年上と組ませるのはちょっとおもしろくないかなと思っていました。

坂本くんは野水さん、望月くんと同じ声優事務所「プロダクション・エース」の新人声優です。彼は多分僕がここ5年で出会った人間の中で一番真面目です。好青年という概念が受肉すると坂本佳史になると僕は思っているのですが、きっちり真面目、礼儀正しく、先輩を立てる。親になるならこういう息子がほしいです。

でも、正直今回出ている演者の中では一番の実力不足でもあります。ただ、彼には他の誰もが持てない強力な武器があります。それは「若さというパワー」です。

これは結構馬鹿にできないマジな話で、例えば僕やEチームの土性くんはもう坂本くんみたいなエネルギーを出せません。だって40代だもん。培ったスキルや経験はあるけど、20代前半のパワーはどうやっても出せないんです。出せるとしたらそれは「40代のパワー」なんですよ。

だからもう一点突破で「終わったらぶっ倒れるくらい全部出しきれ」と言い続けました。テクニカルな部分はしっかりと熊ちゃんが補ってくれます。そうしたら案の定、熊ちゃんも負けじとパワーが出てくるんですよね。熊ちゃんも実は物凄いパワーを秘めたスタープラチナみたいな女優さんでした。そして熊ちゃんとの稽古を通じて坂本くんも演技の機微を学んでいった気がしています。

このチームの見どころは「真面目さに裏打ちされた圧倒的なパワー」です。とても細かく、出すべきところで思いっきりエネルギーを放出する。それは多分画面を飛び越して皆さんの心に何かを伝えてくれるのではと思っています。なるけさんとはラストシーンに踊っているダンスに合わせたアレンジがいいですね、という話になり、そういう形になっています。

あとね、みんなそうなんですけど、特にこのチームはこれからきっと売れる2人だと思っています。というか売れてくれ!そういう願いも込めるぞ!みんな応援してやってな!

Dチーム 田村望琴×後藤大輔

前作「真説 LinKAge~凛国異聞」のオーディションに来てくれた望琴ちゃんのことを僕は「逸材」と呼んでいます。

ビジュアルもスタイルもありつつ、そのセンスと感性はちょっとずば抜けていました。棚橋弘至レベル…かはわかりませんが、兎に角素晴らしいモノを持っています。なので僕は野水さんと同じタイミングで早々に望琴ちゃんに「メビウス」をやってみないかとオファーしました。

「例えばLinKAgeで共演したうちのメンバーなら、誰とメビウス演ってみたい?」

「そうですねえ…もあい(後藤)さんかな」

「なんで?」

「もあいさんは声が丸いので、私はあの声と合わせてみたいと思って」

予想外の理由が帰ってきましたが、僕も自劇団GAIA_crewから誰か出すなら後藤かな、と思っていました。

後藤はぼやーっとしたよく食べるデブのように見えますが(いや実際そうなんですけど)実は腹の中では芝居に対する思いが沸々としている熱い男です。望琴ちゃんと組ませたらいいなと思ったのにも訳があります。

望琴ちゃんはたしかに逸材ですが、その表現や感性をどうやってアウトプットすれば伝わるかという経験が少ないと僕は思っていました。すごいエネルギーを放出は出来るけど相手にきっちりと届ける手段をまだ持っていないと言うか。

対する後藤はああ見えて結構頑固な人間で、そうじゃないと思ったら結構言ってくるタイプです。なので稽古では望琴ちゃんの無尽蔵に生まれるアイデアを「いや、それはうまく伝わらないと思うからこっちでやってみない?」と上手く話し合いの中で導けるのではないかと。

それは結果としてかなり上手くハマった気がしています。望琴ちゃんの言っていた「声が丸い」というのも改めて二人の掛け合いを聴くと納得できる部分もあり、やはりいい感性をもっているなと。

Dチームの見どころは「細やかで美しいメビウス」だと思います。触れれば壊れそうな望琴ちゃんを後藤が優しくほわほわと包む、そういう作りになっているのではないかと。なるけさんは最後の牧歌的なシーンを稽古で見て、そこに合う曲を、と制作してくれました。湖の風景が見えるアレンジになっている気がします。

Eチーム 園崎未恵×土性正照

2018年に舞台版のメビウスにも出演していただいたお二人。

※その時は僕も劇団員の大西真央とメビウスを演じました。すげえ大変だった。

園崎さんはぜひ再演したいと常々仰っていたのでお声掛けをしたら快諾、ただ一つだけ条件がありまして。

「土性さんとまたやれるのなら出る!」

というまさかの逆オファー。土性くんもコレを受けての出演となりました。

園崎さんは言わずとしれた実力派人気声優。「24」「クリミナル・マインド」などの洋画・海外ドラマから「ストライクウィッチーズ」「サクラ大戦V」などのアニメ・ゲーム作品、そして松屋の店内放送や券売機の声までこなす凄いお姉さまです。

※関係ないけどしれませんが僕が最初に園崎さんを知ったのは「こみっくパーティー」の長谷部彩ちゃんです。コレは大事なことなので。

土性くんは大阪の老舗エンタメ劇団「劇団赤鬼」の生え抜きで、僕とは15年来の友達で、尊敬すべき俳優です。普段は面白いおじさんなのに、兎に角舞台に出るとかっこよかったり面白かったり多種多様。いつも自劇団に出てもらう時は劇団員も客演さんも、僕自身もすごく学ばせてもらうことの多い人です。

まず一回メビウスをやってるわけです、過去にこの2人は。なので基本的にはそれをどう朗読の形にブラッシュアップするかを稽古では詰めていく感じだったのですが、元々の座り位置も逆で想定していたので、このチームだけは座り位置も逆。こだわりを持って細かく作り込んでくれたから、それを反映させましょうと照明の河上さんも灯体を釣り直してくれたり、音響の須川さんも音の鳴る方向をいじってくれたり、スタッフさんも本当に協力的でした。

どうしても見る方は声優としての園崎さんの圧倒的プレイに目が行くと思うのですが、それを園崎さんが遺憾なく発揮してのびのびやれるのは土性くんが抑えながらもしっかりと芯のある演技をしているからです。一度共に作品を作った信頼感がこのチームには骨子としてありました。

このチームの見どころは「技術をフルに使いながら、それを使っているとひけらかさない丁寧な作品作り」ではないでしょうか。どのチームよりも静謐で豊かな作り。大人のメビウスとでもいいましょうか…。アダルトな雰囲気を楽しんで頂ければ。

Fチーム 奥宮キエラ×三橋亮太

今回自劇団GAIA_crewからこのチームをyoutubeでの無料公開として出したのには理由があります。

まず、奥宮はGAIA_crewでは衣装担当なのですが、彼女は元々某有名劇団の劇団員で、役者として活躍していた人なのです。舞台俳優としては僕を抜けばぶっちぎりの経歴の持ち主なのです。

※ちなみに僕は初舞台が12歳なので、もう31年…

その奥宮はいつも素晴らしい衣装を担当してくれているのですが、やはり舞台に立ちたいという思いをずっと持っているな、と感じていました。以前「ハラカラ・コエダス・レクイエム」という作品で出演してもらったのですが、今回のメビウスはガッツリ70分以上出ずっぱりの作品です。挑戦したいという思いを前回の舞台公演版のときに、衣装を作りながら持ってくれていました。

なので今回は奥宮に絶対出てもらおうと思っていました、が、例のコロナの問題でお客さんを入れての舞台公演から配信での無観客公演へ。イープラスさん側と配信公演の段取りを組む中で、5組同時配信が色々とマックスなのではないかという事になりました。

でもどうしても奥宮に出てもらいたいと思い考える中で、有料配信公演はまだちょっと視聴に至るまでのハードルが高いかもしれないということ、そこへの導線がほしいということ、GAIA_crewのyoutubeチャンネルには永続的に置いておけるコンテンツが欲しいということなどが合致して、youtubeでの公開チームとしてFチームを立ち上げることにしました。

GAIA_crew公式youtubeにアップするのなら、相手役もメンバーじゃないとならない。

後藤はすでにDチームで出演、僕は演出があるので除外とすると、残る男性メンバーは三橋、草梛、沙汰の三名になります。奥宮に誰と演ってみたい?と聞いた結果、彼女は三橋と演じてみたいと答えました。そして三橋もこれを了承。

三橋も劇団最古参メンバーで、結構僕も脚本やいろいろなことを相談する中です。

※過去作「LinKAge」や「アマオト」のタイトルを発案したのは三橋です。

今年に入って僕も忙しくなってきた部分があったので、三橋に副代表をお願いすることにしたのですが、彼もその肩書を持っての一発目として静かに気合をいれていたようです。

稽古はキャリアはありながらブランクもある奥宮のエンジンをアイドリングするところから始まり、三橋もまず理論をこね回してから動き出すタイプなので一番形になるのに時間がかかったような気がします。

でも、多分どのチームより付き合いの長い2人なんですよね、だからこそのコミニュケーションも多かったと思います。最後にはお互いのやりたいことを支え合う形でいいメビウスになった気がしています。

狙い通り無料公開から有料をご購入頂いた方や、有料を見て、無料のFを見てから他のも!と購入いただいた方も居るみたいで、皆様には本当に感謝です。

Fの見どころは「そこにある幸せを感じるメビウス」です。特別なことじゃなくて、凄いことでもなくて、僕たちの隣にはいつでも演劇があって、それは人の心を少しだけ豊かにできる。コロナの状況下でそれを思い出させてくれた一本だと思います。ずっと(なんかあるまで)youtubeには残しておくので、うちの看板の一つに見る人の力で成長していってくれたらいいな、と。なるけさんもとてもシンプルでベーシックな作りと感じてくれたらしく、元々のエンディングテーマの基礎になっているAチームのアレンジがシンプルなFにも合うのではないか、と同じ曲でいくことになりました。


以上、だらだらと6チームのことを書きました。7月30日の23:59までチケット購入可能で、31日の23:59分迄見れますので、是非時間を超えた一組の男女の2千数百年を超えた出会いと別れと約束のお話、楽しんでもらえたら。

チケット購入・詳細は以下より!(宣伝)

https://gaiacrew.com/mobius/

※Fチームの男性を考えたとき、そのあまりの選択肢の狭さに驚いたので、GAIA_crewは男女ともにいつでも劇団員募集していますよ、そんな頻繁に公演してるわけじゃないけど、みんなちょっとマニアックでオタクっぽいけどw 気になったらいつでも連絡してくれよな!






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