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ドリアンの花

ドリアンの果実は見たことがあっても、ドリアンの花はあまり見た目が知られていません。
トゲの多いいかにも危険な見た目をした果実ですが、花は意外とかわいらしい見た目をしています。
どんなに見た目がイカツイ人でも子どもの頃は可愛いのと同じです。生まれたてのドリアンは可憐な白い妖精のようです。

開花直後のドリアンの花、開花時刻を入力しています

一年中猛暑の続くマレーシアですが、実は季節があります。
赤道に近い熱帯・亜熱帯地域特有の乾季と雨季の繰り返しです。
日本では多くの花が春に開花しますが、それも季節の変化によるもの。ドリアンもご多分に漏れず、季節が変わると花を咲かせます。
年によって多少の変動はありますが、おおよそ、3月と9月が開花のシーズンです。

ドリアンの開花の時期は乾季ど真ん中、からっからに乾いて日差しは強いものの、風が吹くと気持ちのいい時期に咲いています。
昼間から蕾をおっぴろげるような下品な花ではありません。日暮れの時期にひっそりと花を開き始めます。
仕事が終わって帰ろうかと思い始める18時頃、ドリアンの開花は静かに、しかしダイナミックに進みます。

1枚前の写真の約1時間後、大きく花が開いているのがわかる

香りの強い果実とは裏腹に、ドリアンの花はあまり香りは強くありません。
嗅いでみるとほのかに甘い香りがしますが、鼻をつくような花の香りとは違います。

その代わり、中に蜜が入っており、その蜜が非常に甘いです。
開花前まで蓄えられた蜜は、開花後に花を揺すると雫になって落ちてきます。

ドリアンの花にわずかについた水滴、花の付け根のあたりから落ちてくる

ドリアンの受粉には蜜を吸うコウモリが一役買っているようですが、シロップのような甘味の蜜を求めて吸いにくる気持ちがよくわかります。
また、ドリアンの花には、ガやハエ、アリなどの昆虫がついていることもあります。濃くて甘い蜜は受粉を助ける役目もあるように思います。

ドリアンの花についたアリ 花粉も美味しいのか葯に群がる

ドリアンは雌雄同株なので、花には雌しべと雄しべがどちらもあります。
中心の先端がオレンジ色をしているのが雌しべ、そのまわりにある白いふわふわとしたものが雄しべです。
雌しべは雄しべよりもやや長く、品種によっては開花前に既に雌しべが露出しているものもあります。
開花直後の雄しべは、まだ完全には成熟しておらず、雄しべの先端の葯(やく)が開いて花粉が出てくるのは開花から2~3時間後です。
ドリアンの花粉はべたべたとしており、風で飛散したりといった心配はありません。ドリアンで花粉症になることはないので安心ですね。

ドリアンの花は非常に寿命が短いです。
夜に開いた花は、朝にはもう乾いた様子で、白みがかった花弁も黄色く変色しています。
雌しべや雄しべも翌日には干上がっていて、雄しべや花弁は朝方にはすべて落ちてしまいます。
この非常に儚いドリアンの花が咲くタイミングを見計らうのは難しく、ふらっと立ち寄ったドリアン農園では花が咲いていないこともよくあります。

開花翌日の花、見るからに老化が進んでいる

栽培をしている人しかほとんど見ることのできないドリアンの花。
未だに謎も多く、詳しい開花の条件もわかっていません。
ドリアン好きの方は収穫期に農園へ行って、採れたてのドリアンを食べたいことと思いますが、開花の時期に行ってみるのも面白いですよ。
花を見ることでさらにドリアンへの愛着を深めてもらえたら幸いです。


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