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石垣原の合戦〜温泉Ver.〜

やっちきどっこいどっこいな

夏の盆踊り「やっちき」の掛け声である。

別府市で働くようになって、この「やっちき」を初めて踊った時は、なんて楽しい踊りだろうと思った。手踊りではなく足がメインの盆踊りなのだ。「歩く♪歩く♪蹴る!歩く♪歩く♪蹴る!」というようなステップで、音楽が終わりに近づくにつれてどんどん早くなるので、同期と2人ノリノリで踊っていると、沿道の人から「あんたたち!ようちょんのかえ?(君たち酔っぱらっているのかい?)」と笑われたりしたものだ。

NHKの大河ドラマ「軍師官兵衛」を見たときに、初めてこの「やっちき」のことを理解した。

はっ、やっちきどっこいどっこいな
(1)さても大友義統(おおともよしむね)様は、故郷豊後の速水を指して

(2)帰り給うや立石城に しばし足をも名も留めける

(3)かくと聞くより豊前の国の 中津城主は黒田の如水

(4)悪に長ぜし大友屋形 退治せんとて乗り入れ給う

(5)豊後横灘鶴見の内に 山を小楯に陣取り給う

(6)都合其勢八千余騎の 八千三五の二手に分かれ

(7)裏と表に立ち分かれ行く 頃は慶長五年の九月

(8)菊の花時十三日の 朝の卯の刻一番揃い

石垣原の合戦の歌だったんだ・・・

石垣原の合戦とは、九州の関ヶ原といわれる、慶長5年9月13日。関ヶ原の戦いの2日前に豊後国石垣原(別府市)でおこなわれた、黒田官兵衛対大友義統の戦である。

令和の別府市でも、この石垣原関連の史跡はいくつか見ることができる。

そして、また何も知らずに行ってしまったのだ。

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今日はどこの温泉に入ろうかな。となんのけなしに来た七ツ石温泉。ここは、単純泉の地域温泉で、別府8湯の堀田温泉の引き湯らしい。

旗がたくさんたってるので、通るときに気にはなっていたこの場所。神社の中に温泉があるのだろうか??

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神社の横に温泉を発見。

あー。また珍しいところにあるな。ちょっと調べてみよう。とインターネットサーチをしたところ。

ここは・・・

石垣原の合戦の最大の激戦地というではないですか。

ええーっ?ここなのー??

もう少しずれた場所だと思ったので、驚いた。
温泉に入りながら、あたまの中は「やっちきどっこいどっこいな。」でいっぱいである。

やっちき→やっつけい!→やってしまえ!?
二歩、歩いて蹴るもんな。あれ。
(本当にそんな意味かは謎)

お風呂から出ても、石垣原の合戦が気になってしょうがない。

色々ネット検索をしていたら、別府の歴史といえば、この方。平野資料館の平野さんが出演する動画がでてきた。

https://m.youtube.com/watch?v=GhaCRjQZjxk

黒田官兵衛は、鉄輪温泉郷に。大友義統は、観海寺、堀田温泉郷に陣を敷いたというではないか。

これは、もう令和版、温泉石垣原合戦をするしかないではないか。

早速、最も崇拝する温泉先輩に聞いてみた。「鉄輪温泉と観海寺、堀田温泉。先輩の1番をそれぞれ教えてください。私どうしてもそこに入りに行きたいんです。」

わけのわからない質問だったはずだが、温泉先輩は答えてくれた。

先輩の1番はこうだ。

「鉄輪は、渋の湯。」

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あー!!わかる。以前noteでも書いたことがあるが、この温泉は本当に気持ち良かった。ずっと入っていたい温泉なのだ。

さすがは黒田軍。この温泉はかなり強敵だ。

わくわくしながら、大友軍を待った。

「堀田、観海寺は・・・
杉の井ホテルの温泉入ったことある??あそこは、循環していて源泉ではないんだけど、その源泉に入れるところがあるんだ。」

どこ?!それは!どこなんですか??!

期待が高まる。

「杉の井の下のマンションに知り合い居る?あそこのマンションの温泉が源泉でね。」

先輩。さすがにいません。でも、そんなマンションに住める方ってなんて幸せなんだろう。羨ましい限りだ。

「あっ。じゃあ。あそこか。」

先輩の口から出た言葉。

「温泉道ではないんだけどね。五湯苑(ごとうえん)というところがあって、そこがすごく良いと思う。」

大友軍が決定した。

温泉道ではないので、残念ながらスタンプは貯まらないが、行ったことがないところに行くのもまた楽しい。
しかも聞いたこともなかったので、よりわくわく感が増す。

Googleナビで向かった。ここにあるのだろうか?
少し不安を感じたが、近づいていくと矢印看板も出ていて、迷うことなく到着した。

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毎週火曜日がお休み。10時から19時が営業時間だ。

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進んで行くと受付が見えてくる。

こんにちは!!!

男性の方が1人いて、初めて来たんですというと親切に外に出て説明してくれた。

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ここには、五棟(湯)あり、うち二棟が屋根のない露天風呂。残り三棟が屋根のある半露天になっているそうだ。

入湯料は、1棟あたり2人まで1,000円。3人以上が1,500円だ。

張り切って、屋根なし露天の1番上。柊に入ることにした。

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わぁあー!!とっても素敵。貸切だし。
しかし、その時突風がひゅー!!!!と吹いた。
なんだか寒いし。やっぱり屋根付きにしよう。

受付まで戻り、屋根のある桃に変えてもらった。
屋根付きがこちら。

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屋根付きも素敵だなー。

早速服を脱ぎ、かけ湯をしてまずは温まる。
貸切だから、この辺りは周りの人に気遣わなくて良いのが嬉しい。

いつもの地域温泉なら、石鹸で体を洗ってから中に入らないと冷たい視線をあびるため、寒い中洗って入るという修行のようなことになるところだった。

少し熱く感じるが、本当に気持ちが良い。

最近皮膚科でカンパンと診断され、マスクで皮膚が擦れるらしくシミが目立ってきて嫌になってきていた。改善するために、皮膚科のセラピーを始めたのだが、しばらく顔の皮が剥けるのに耐えねばならず、周りの人からは顔がカピカピになってない?!と心配されていた。

そう。私の顔は皮がむけてカピカピだったのだ。

この温泉で顔を洗うまでは。

本当に驚くことに、顔を洗ったあと肌がツルッとなって潤ってしまったのだ。この温泉は力が強い。

先日温泉名人の高崎さんから、別府温泉を案内する時は、山の上から海へ向かって降って巡って行くのがいいよ。山の上は温泉が強いから。と教えてもらったのを思い出した。

温泉分析表が掲示してあったので、読んでみると、PH5.9の弱酸性の単純硫黄泉温泉。効能は、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹等なるほど肌に効きそうな温泉だ。末梢循環障害、軽い高コレステロール血栓などにも効果があるようなので、血液循環も良くなったのだろう。

素晴らしい!!素晴らしい温泉ではないか!!

そして、この力強さは大友軍かなり優勢である。

しかし、メタケイさんで比べると話は逆転してくる。
五湯苑のメタケイさんは、72.1。対して鉄輪温泉渋の湯のメタケイさんは、611.7。8倍以上の美肌の湯となる。

だからといって専門的なことは全くわからないので、いったいどちらが勝者であるか。これは非常に難しい問題になってきた。

鉄輪温泉と黒田官兵衛の知名度に流されそうになるが、この渋い堀田温泉と大友義統の力も侮れない。
そもそも勝者だからこそ知名度があがっているわけで。

大友義統に仕えた、吉弘統幸(よしひろむねゆき)という有能で勇猛な武将が別府市の吉弘神社に祀られている。

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この武将は、一時期黒田家にも仕えたことがあったのだが、石垣原の戦いでは主君大友義統について黒田家とは敵同士になってしまった。井上九郎右衛門との一騎討ちが大河ドラマでは描かれていた。吉弘統幸の素晴らしさは、敵の黒田家からも讃えられているという。

また、吉弘神社には、吉弘統幸のお墓と伝えられている墓跡も残されていた。地元の人も讃え、守ってきたのだ。

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結果、敵も味方もすごいのだ。
戦いのあと、敵も味方も鉄輪温泉で傷を癒したという話も聞いた。

時は令和。石垣原の戦い〜温泉Ver.〜は、平和に和睦といきたい。

五湯苑のお風呂から出ると、なんと!五湯苑には、蒸窯があった。

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200円の別料金で、食材を持ち込めば蒸して食べることが可能だ。

あー。卵を持ってくればよかったと後悔。そして、もう一つ。ドライヤー。持ってきた方が良いです。
(コンセントがあって、使用可能)

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お風呂の蛇口(温泉が出てる)を貯める窯?オケ?が設置されていて、そこから洗面器でくんで身体にかけれる工夫がされていたため、気持ち良くてつい何も考えず頭まで洗ってしまった。

体はポカポカなのに、髪が冷たくてこれはまずい。

石垣原の妄想はやめて急いで家に帰った。


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