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卒業式の祝辞を勝手に考える 〜中学編

先週は長男の中学校の卒業式だった。2021年の小学校卒業から3年。とてもいい式だった。やっぱり小6と中3は全然違う。生徒主体でセレモニーをつくっていく感じ。ほんとに成長したんだなー。ちょうど3年前に「卒業式の祝辞を勝手に考える」という記事を書いたので、3年ごしの続編「卒業式の祝辞を勝手に考える 〜中学編」を書きたいと思います。

祝辞

みなさん、ご卒業おめでとうございます。保護者のみなさま、おめでとうございます。校長の川口です。

はい。3年間どうでしたか?あっという間でしたか?入学してきたときのみなさんと今のみなさん。短い間で、心も体もまったく違った人になっているように先生には見えます。春から、高校生になってさらに成長していく皆さんに、すこしだけ長く生きている僕のほうから、考え方や行動の「コツ」のようなものをお話ししたいと思います。


自分を理解できるのは自分だけ

論破する人の決めセリフで「それって、あなたの感想ですよね?」っていうの、知ってます?これは「個人の意見は、客観的な証拠や根拠がないから、価値がないよね」って意味で使われてます。議論に勝つために。でも、僕はまったく逆だと思うんです。自分がその瞬間に思ったこと、つまり「わたしの感想」って、かなり大事なんじゃないかって。

いきなりなんだけど、言葉でのコミュニケーションって4段階になっています。

  1. 自分が何かを思う

  2. 自分の思いを言葉にする(言う・書く)

  3. 相手が自分の言葉をうけとる(聞く・読む)

  4. 相手が解釈して何かを思う

    これの繰り返し

そんなん当たり前やん、ってかんじですね。

でも、誰かと正しいコミュニケーションが成立するのって、この1〜4のキャッチボールが何度も上手くいって起きる奇跡みたいなもんだと思います。先生もこの4段階すべてがずーっと上手く続いて、お互い理解しあったって感じることは、かなり珍しい。もしかしたら、お酒飲んで、感覚が麻痺して、わかりあった気になってるだけかも知れないし...。まぁ、言葉でわかりあうって、それくらい難しいんです。だから、仕事をしている大人たちは伝達ミスが起きないように注意深く言葉を選んで使っています。

で、若いみなさんを見て、ふと、先生は思ったんです。

1.  自分が何かを思う

「これ1. だけで十分やん」って。自分の気持ちを誰かに伝える必要もないし、認めてもらう必要もない、ましてや論破する必要なんかまったくないんじゃないかと思ったんです。そのスタンスで考えると生きていく「自由度」みたいなものが一気に上がります。なんで自由になるのか?

まず、何を思うかが自由です。「もっと可愛くなりたい」「今朝はダラダラ寝てたい」「戦争なくなったらいいのに」「あのひと好きだな」「なんかうまくいかない、悔しい」「この漫画ほしいな」などなど。時には、人にはとても言えないようなことを考えちゃうこともあるでしょう。欲望むきだし、憎しみ満載、人とは全然違うアブノーマル。でも「こんなこと思ってる自分って変なんじゃないか?」と、気にする必要はありません。だって誰にも言わなくていいんだし、認められてなくてもいいんだから。
家族にも友だちにも言えない、自分だけが気づいてる自分の気持ち。それを何よりも大切にしてほしいです。まずは他人のことは気にせず、自分の心の中を観察して、それを基準に行動してみてください。

さっきのコミュニケーションの4段階の話にもどします。世の中は1〜4を上手くやろうとしてる「正しい」言葉であふれています。テレビや映画もそうだし、教科書だってそう。SNSの投稿、YouTube動画も一部は相手にこう伝えたいっていう意思をもった「正しい」言葉です。勉強でもテストでも、ちゃんと伝わる正しい言葉を使うことはとても大事です。あと、これができる人はいい成績がとれます。極端にいうと学校は正しい言葉を使うトレーニングする場所なんです。ある人は化学式や数式で、ある人は調査レポートで、ある人はスポーツの練習や試合で、正しい言葉・正しい法則・正しいルールとそれを伝達し合う方法を学びます。

でも、そうやって日々進んでいく「正しい世界=勉強の世界」とは別に、特に高校生くらいから、自分の中に「正しさなんてどうでもいい、自分だけの世界」ができてきます。でも、そんな内側の世界でも、言葉は役に立つんですよ。どういうことか?

答えはシンプル。自分の考え・価値観をよく見つめるために、日頃、勉強でトレーニングした「言葉」を使うのです。自分の考えを、自分のなかだけで言語化してみる。頭の中でこっそり日記をつけるかんじ。ただ、言語はとてもロジカルだから「なんとなく」が通用しない。ボーっと考えてることを集めて、自分だけの自分の気持ちを言葉にしてみてください。言葉・思考という不思議なものを介して、勉強と非勉強はつながってるとも言えます。

自分自身の心を自分の言葉で理解することは、良い成績をとることよりずっと大事かもしれない。ある人は「これやってる時は夢中になれる」と気づいて将来の仕事を決めたり、ある人は「このひとのこんなところが好きだ」と思って恋愛したりする。自分と周囲の価値観がずれていると気づいた時は、外の世界に飛び出せるし、逆に「この場所が好きだ」と気づいて、居続ける人もいる。

高校でも、上手くいったり、いかなかったり、いろんなことが起きるでしょう。

今日話したことをたまに思い出してみてください。「分かりあうことは難しい」これが原則です。

そしてそれをもとに、

まずは、
自分の考えを大切にする=自分を大事にする

つぎに、
自分の考えを言葉にする=自分を理解する

を、試してみてください。

長くなりましたが、先生からのコツ伝授コーナーでした。それでは、最後に聴いてください。作詞・作曲、小田和正。「言葉にできない」。

以下、教師たちに押さえつけられ、強制的に退場させられるまで、熱唱がつづく。

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