卒業式の祝辞を勝手に考える

昨日は長男の小学校の卒業式だった。校長先生の祝辞は、一部はいいなと思ったけど「夢をあきらめないで努力しましょう」みたいなくだりになると、ひねくれた性格なもんで「夢ってなんだよ、そんなんないわー」と、思ってしまう。そのあとのコール大会(「一致団結したー」「うんどー かい!」)に呆然とした僕が考えていたことは「おれが校長先生だったら生徒にどんな祝辞をおくるのか」でした。ある程度まとまったので、書いておこうと思う。


祝辞

みなさん、ご卒業おめでとうございます。保護者のみなさま、ご卒業おめでとうございます。校長の川口です。

小学校1年生のときのみなさんと、今のみなさんを比べると、まったく別人のように成長しています。1年生のときにできなかったけど、6年生の今ならできることは、100000個くらいあるんじゃないでしょうか。すごいことです。先生はこの6年で、できること2,3個しか増えてないと思います。

さて、これからみなさんは「ティーンエイジ」という特別な年頃を経験します。英語の時間に数の数え方を習ったでしょう。ワン・ツー・スリー・フォー・・・ね。ティーンエイジというのは、数字あとに○○ティーンとつく年代のことです。

イレブン、トゥエルブまでは、ティーンがつかないですね。サーティーン、つまり13歳から「ティーン」がつきます。そのまま14歳はフォーティーン、15歳はフィフティーン、16歳はシックスティーン、17歳はセブンティーン、18歳はエイティーン、19歳がナインティーン。そして、トゥエンティー。20歳で「ティーン」がとれます。13歳から19歳が「ティーンエイジ」。「ティーン」のつく年齢は、わざわざこの年代を指すための単語が存在するくらい特別な時期です。小学校1年生から6年生での変化とおなじくらい大きな変化が、もう一度、このティーンエイジで訪れるはずです。

そんな変化の時期に、覚えておいてほしいこと、思い出してほしいことを3つ。伝えたいと思います。

まず、1つ目は、「恋をしよう」。いきなり恋バナかよって話なんですが、まぁそうですね。恋バナです。ここからの数年で、みなさんは、誰かの事がとんでもなく好きになる経験をするとおもいます。異性でも同性でも、恋人でも親友でも、その人のことが好きで好きでたまらなくなって、もっと一緒に居たいとおもう。これが「恋」ですね。ちょっと恥ずかしいですね。でも、先生はこの気持を大事にしてほしいと思います。「好きになったらすぐ告白しろ」って意味じゃないですよ。相手も自分のことが好きになってほしいとおもって、おしゃれしてみたり、スマホでメッセージを送ってみたり。もっと、よく見られようと勉強やスポーツを頑張ってみたり。うまく思いが伝わって、最高の気分になったり、好きな人が誰か別の人のことが好きなんだってわかって、眠れないくらい落ち込んだり。すべての気持ち、心の動きを大事にしてほしいと思います。そういう気持ちの変化を経験することはとても素晴らしいことです。ぜひ、恋をしてください!

もうひとつ考えておいてほしいのは、自分とおなじく、周りの人も「恋」をしてるってことです。誰でも、誰かのことが好きになってるわけです。自分の気持ちを大事にする、自分の好きな人を大事に思うのにあわせて、他の人の「恋」も大事にしてほしいです。「友達の恋を応援しちゃおう!」といってるわけじゃないです。告白の段取りのお手伝いしなくても全然いいです。ただ周りにいる人も自分とおなじように色んなことを考えて、誰かに夢中になっているかも知れないと「分かっておく」ことが大事です。色んな人が色んな人に「恋」しています。自分とは全然好みが違う人もいるかもしれません。考え方も性別も国籍も人種も違うかも知れない。でも、それぞれが、それぞれの「好き」を「恋」を持って生活している、これを理解しておいてほしいです。理解して、認める。他人からも自分の気持ちを認めてもらう。お互い認め合う。自分の恋も他人の恋も大事にしてあげてください。以上、恋バナでした。

さて、2つめ。それは勉強のことです。中学になると、算数は数学になるし、英語も文法がはじまります。理科も化学とか物理とか、どんどん難しくなります。そんなとき、ふと思うのが「勉強してなんの役にたつねん?」ってことですね。先生が瀧本哲史さんという人の本を読んで「そのとおりだなー」と思った表現があったので、ここで紹介します。

いきなりですが「勉強は魔法だ」ということです。そんな夢見がちなこと言われてもって感じなんですが、いまみんなが生きているこの世界はすごい数の「魔法」でできています。例えば、僕がティーンエイジだった30年前は、インターネットはなかったです。あったけど、ごく一部の大学の研究室のパソコンがネットにつながっていただけでした。もちろんスマホもなかった。なので、遊びに行くときは「朝10時にJRの駅の改札な、遅れんなよ!」と、前の日の夕方に約束してました。電話も家に1台しかなくて自由に使えないので、前の日に約束です。このときの13歳の先生が、いまの世界にタイムスリップして、みんなが持ってるスマホをみたらどう思うでしょうか?これ「魔法」ですよね。びっくりして、うんこ漏らすと思います。なんでもできる、魔法の箱。リアルドラえもん。スマホのような最新技術じゃなくても、いま先生が話してるマイクだって、300年前の人からしたら「魔法」ですよね。声のでっかくなる魔法。コエカタマリンです。

さて、考えてみてください。この30年でインターネットやスマホを作ったのは一体誰でしょうか?それは先生たち大人です。スマホが雨みたいに空から降ってくるとかないですよね。誰かが作らないといけない。科学の技術を結集してみんなで作るわけです。ずっと人類が積み上げてきた、科学・技術・知識が魔法のようないまの世界を作っているわけです。そして、それらの基礎はすべて、ここから中学・高校で習う教科にまとめられています。ちょっとワクワクしませんか?これから10年後、みなさんが新しい魔法を作り出そうするときに、かならず必要になってくるものです。最新の技術・すばらしい発明でなくても、例えば、パンを焼くんだって魔法です。調理の技術、栄養について、どんな化学反応で発酵が起きるのか、材料をいくらで仕入れていくらで売るのか、一つ一つが学問になってます。どんなことも、過去の人たちが積み上げてきた技術と知識の寄せ集めです。なので、中学・高校の勉強は「魔法の基礎訓練」なんですね。基礎をひろく勉強して、そこから自分の得意なジャンルの魔法を選ぶ。それを使って、30年後の世界を、いまの君たちがタイムスリップして見たらびっくりするような魔法の世界に変えてください。楽しみにしています。テストで良い点をとるためだけに勉強するとしたらそれはもったいない事。勉強は世界とつながっています。

つぎが最後。3つめ。たぶん聞いたことのない言葉を紹介したいです。それは「フロー体験」。スマホやパソコン、タブレットがあったらGoogleで検索してみてください。「没頭している・集中している状態」という意味がでてくるとおもいます。

先生は、むかし音楽をやってまして、きっかけは中学3年生のときにふと「ギターを弾いてみたい」って思ったことでした。部活は野球部にはいっていたのですが、全然上手くもないし、正直まったく好きじゃなかったし、顧問の先生のことは嫌いでした。3年生の夏になって部活が終わったときにふと思ったんですね。「野球はもうやらん!」と「ギターってなんかカッコいいなー」って。そして親にねだって青いエレキギターを買ってもらって弾いてみると、うまく弾けるわけじゃないのに、じゃ~んって鳴らすと自分がすごい人になったみたいで、上手になりたくて夢中になってずーっと弾いてました。この夢中になってずっと練習している状態が、あとから考えると「フロー体験」です。フロー体験ができるものを見つけられた人は、ラッキーです。僕はラッキーでした。いまだにギターを持つとワクワクするし、Youtubeでジャズギターの弾き方とかみては夢中になって弾いてます。別にプロにならなくてもいいし、どんな事だっていいんです。漫画を描いてると夢中になってどんどん上手くなって、つぎは長いストーリー描いてみようかと時間を忘れて没頭する、とか。僕が好きじゃなかった野球に夢中になる子もいるかも知れません。人それぞれなんです。なので、なんでも色々やってみて、自分が没頭してるな「フロー体験」だな、って思ったら少しでも長く、多い回数それを続けてください。

そのときに、親や先生は言います。「おまえギターばっかり弾いとらんで、勉強しろ」とか「ゲームは1日1時間、宿題してからやりなさい」とか。もうみんな言われてますよね。親から。さっきの勉強は魔法っていう話と逆のことを言ってるんですが、フロー体験できることを見つけて没頭することは、勉強するよりも、もっと大事です。まぁ勉強で、フロー体験してテストで良い点をとるというのは、褒められるし、オススメなんですが。みんながみんな勉強に没頭できるってわけではないですよね。なので、とりあえず、対策としては大人になんか言われたら適当に誤魔化すことです。ちょっとだけ勉強してみるとか、お手伝いして機嫌をとるとか。「いまはeスポーツとかあるし、ゲーム解説のYoutuberもいるからプロになれるんだ!」とか反論して言い負かしてる暇はないです。時間がもったいないし、大人はアタマが硬いからそう簡単に意見を変えません。ゲームに没頭してどんどん上手くなってるんなら、もうそれだけで十分素晴らしいことなんで、飽きるまで没頭して、ずーっとゲームし続けてください。せっかくならナンバーワンを目指しましょう!ナンバーワンを目指している人同士が知り合って、友達になったり、一緒になにかしたりすることも楽しみのひとつです。もし、それでも大人や先生が口をだしてきて、プレステ隠されたら、僕を呼んでください。校長として「フロー体験!!!」って大人のひとに言います。校長は一番偉いわけなんで。とにかく自信を持って、いま夢中になってることをやりましょう。

フロー体験の面白いとこは、集中している間は「楽しい」とか「嬉しい」とかそういう感情もあまり出てこないこと、もちろんゼロじゃないけど。スポーツの練習でフローにはいると、極限まで頑張っちゃうので「しんどいな・・・」って思うときもあるかも知れないです。ただ「それでも、どうしてもやっちゃう」んですね。だからどんどん上達する。どんどん詳しく知りたくなる。なんとなくボーッと楽しいとかだと、それはフロー体験にはまだ至ってないかも。

この経験をティーンエイジのときにしておくと「なにかに夢中になる練習」みたいなもので、それは、その後の人生に必ず良い影響がでてきます。毎日を楽しく充実したものにしてくれます。夢中になってやって、何か成果がでる。どんな小さなことでも、それだけで満たされます。もしかしたら、この中には、もうフロー体験をした人もいるかも知れない。サッカーに夢中、ピアノをずっと弾いてたい、絵を描くの大好き、電車のことを調べまくる、レゴブロック作ってたらあっという間に時間が過ぎてた。実はそれはすごいラッキーなことなんですよ。続けましょう。「あんた、漫画ばっかり描いてどうすんの!」って言われながら、誤魔化しつつ続けて、10年後には鬼滅の刃みたいなヒット作を描いて、超有名・大金持ちになれるかも知れません。ならんかも知れないけど。

ということで、3つですね。

恋をしよう
勉強は魔法
フロー体験


思い出してもらえたら嬉しいです。みなさんのこれからの人生がワクワクに満ちたものでありますように。先生も頑張ります。

卒業、おめでとうございます!

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