マガジンのカバー画像

短編小説

58
運営しているクリエイター

2021年6月の記事一覧

雨のひとなくした者

 雨の日が憂鬱だと、最初に言い出したのは誰だろう。そのせいで、雨が泣いていることも知らずに、私たちは当たり前のように雨の日を毛嫌いする。  湿気や低気圧や、特別な服装をしなきゃいけないとか、電車が混むとか、傘の忘れ物が多くなるとか、人間側の都合を雨に押し付けて済ませている。でも雨がないと生き物は、それどころかこの地球は行き続けられないのだ。そのことをちゃんと知っている人は、きっとあめを毛嫌いしない。きっと土砂降りの日でも喜んで外に出かけていくだろう。なぜならそれは恵みの雨だ