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「成瀬は天下を取りに行く」読了

画像 : https://www.shinchosha.co.jp/special/naruten/

今回は、本屋大賞2024にも選ばれた「成瀬は天下を取りに行く」を読んだ感想です。

最初、この小説のタイトルを見たときには、どこかの企業で出世でもするのかと思い、表紙を見て女子野球もしくは野球のコーチで全国優勝でも目指すのかと思いましたが、まったく違いました。

滋賀県を舞台とする本小説は、主人公である「成瀬あかり」が挑戦(しでか)したことを軸にすすんでいきます。成瀬は突然親友とコンビを組みM-1に出たり、坊主にしたりと思いつきで自分の達成したい・確認したいことに飛び込んでいきます。それはまさに天下を取りに行くように。

小説は、各登場人物からどのように「成瀬あかり」が見えているのかが書かれています。親友や、中学校が同じで高校で同じクラスになった子などから、成瀬をどのように見ているのか、成瀬がどのように作用しているのかをさらりと爽やかに読むことができました。

最後の章では、成瀬自身が見た成瀬がテーマになっています。何事も完璧にこなし、自分がやりたいと思ってきたことを実行してきた成瀬は、親友が引っ越すことを知り、スランプに陥ってしまいます。前章までの成瀬像は、完璧で近寄りがたく、突飛なことをする変な奴というイメージだったのに対し、親友のことを考えると何もかもうまくいかなくなってしまうというとても人間的なキャラクターに感じました。

結局、親友とは離れるもののコンビが解散するわけではないことを確認し、ここまでは飄々としていた成瀬が喜びを噛みしめて物語は終焉を迎えます。

サスペンスやAIの反逆は起こらないものの、1人の少女が巻き起こすあたたかい青春の物語を書店員さんが売りたい・読んでほしいと考える理由がわかったような気がします。

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