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プラスミドゲート事件について #1

今回、プラスミドゲート(Plasmidgate)事件について、これを重大な問題だとする『専門家』はもちろん、これを「否定する」・あるいは「問題ないレベルである」とする『専門家』も、結構おかしなことを言っているのを見かけたので、少しこれについて言及しておこうと思います。

まずは、基礎知識の確認から。
我々のヒトゲノムを構成するDNAからRNAが合成(転写)されるように、mRNAワクチンに含まれるRNAも、それを合成する基となるDNAを必要とします。
この「基」となるDNA、専門的には「鋳型(テンプレート)」と呼びますが、それが今回のキーワードである『プラスミドDNA』です。

このプラスミドDNAがmRNAワクチンに多量に含まれることが明らかになったというのが、今回の『プラスミドゲート事件』と呼ばれる騒動の発端です。
Medicinal Genomics社のKevin McKernan氏の測定結果から、mRNAワクチンに含まれるプラスミドDNA量は、RNA量の20〜35%であることが分かりました。
mRNAワクチンの一回分のRNA量は30 μgであることから、測定結果に従えば、含まれるプラスミドDNA量は10 μg前後であると考えられます。

高校や大学で、分子生物学実験をやったことがある人ならば、『エタノール沈殿』は知っているでしょう。DNAはエタノールに溶けないため、DNAの溶液にエタノールを加えるとDNAは凝集、沈殿します。

参考)ブロッコリーのDNAを抽出する実験例。夏の自由研究におすすめです。↓

バナナの実験例。↓

mRNAワクチンに含まれるとされるDNA量が『10 μg』というと、これは実はかなりの量で、エタノール沈殿で凝集したDNA 10 μgは下図の左端のように見えます(図中のピンク色がDNA)。

(画像:https://www.flickr.com/photos/damon_tighe/4799892345)

10 μgのDNAをイメージできない・エタノール沈殿を知らない素人でも、これを見れば、「そんなに含まれているの?!」、「そんなのあるわけないじゃん!笑」というような、現役の研究者たちの感覚的な部分が理解できるかと思います。

実験者の感覚としてもありえない量。研究者全員が同意すると思う

mRNAの製造の仕組みを知ってれば、20~35%とという数字が異常なのは分かります

まずは、この『感覚』を共有することが大切だと思いました。

#2に続く。

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※ この記事は個人の見解であり、所属機関を代表するものではありません。
※ この記事に特定の個人や団体を貶める意図はありません。
※ 文責は、全て翡翠個人にあります。
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おまけ)
この『プラスミドゲート事件』に関して、Twitterで興味深いアンケート結果を目にしました。

この正答率の低さの理由は何なのでしょうか?

絶句…
正解が3割切るとは…

特に驚いたのは、①の「あなたは毎日DNAを食べていますか?」という質問に「No」と答えた人がいたということです(32.6%+2.4%)。まぁ、中には食事が1日おきという人もいるかもしれませんが…。(苦笑

ただ、毎日普通に食事をしているのに「No」と答えてしまった人には、ぜひ上で紹介した野菜からDNAを抽出する実験をやってみて欲しいと思います。簡単にできますよ。

期せずして、このアンケートは、プラスミドゲート事件で騒いでいる人たちのおよそ7割の『正体』を明らかにしたと言えるかもしれませんね。
非常に興味深いアンケート結果でした。

以上。

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