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M-EACH TIME L-ONG 〜大瀧詠一師匠との40年

 1981年3月21日。

 おそらくは東京藝術大学美術学部の合格発表があったその日——もしかしたらもう少し前だったかもしれないが——俺は〝冷たい拒絶〟を受け、ともかく大学浪人が決定した。〝桜散っちゃったパット散った 散った!〟

 そしてこれがまたなんともはや、俺のみならず俺が通っていたアトリエの全員が、美大受験に失敗した春だった。

 その中にはその時点で「5浪」だったアトリエ最古参のセリザワさんも含まれており、アトリエの2階に下宿していたセリさんの部屋で、残念会を催すことになった。
 四畳半、思い切り密な状態で。

 さて宴もたけなわ大盛りあがりの中で、セリさんがいきなり「凄いレコードが出た」と、デザイン科を目指していた俺から見てもどうにもかっちょいいジャケットの、しかし聞いたこともない名前のアーティストのLPをおもむろに取り出して、ターンテーブルに乗せ針を落とした。

 ピアノから始まるリハーサルらしい音の風景からやがてドラムスティックがリズムを刻み、続いて流れ出した「音の大瀑布」に、いっぺんに心を鷲掴みにされた。

 それが、大滝詠一『A LONG VACATION』だった。

 第1曲目の『君は天然色』のあまりの衝撃にほっとする間もなく次々と繰り出せるこれまで耳にしたことのない音世界と魅惑のヴォーカル。
 やがて盤が裏返り、B面ラスト曲『さらばシベリア鉄道』が終わった時には、完全に放心状態。受験に失敗したことなども、どうでもよくなっていたと思う。

 あれからちょうど40年。

 NIAGARAの滝壺にまんまとハマり、知ればしるほど奥深い大瀧詠一という人物を人生の師匠のひとりにまで位置づけ生きてきた。
 2013年の大晦日12月31日。前日の30日に師匠が逝去されたことが報じられた際には茫然自失、明けて正月三が日を泣きはらして過ごしたものだ。

 その「ロンバケ」発売40周年となる本日。

 各種の記念盤が発売されたと同時に、歌手〝大滝詠一〟の楽曲の数々がApple Musicを始めとする各種のサブスクリプション・サービスで解禁された(注)。

 中には俺のような超が付くほどのナイアガラー(大瀧詠一マニア)でなければ所有していないような音源もあったりしちゃったりなんかして、
「いいのか!?」
 と驚くと同時にこれまでの投資を〝忘れても思い出せば苦笑い〟している。まあ、解禁されていないいろんなバージョンもあるのでそこはそれ。これを期に〝大瀧〟詠一作品と〝大滝〟詠一の歌唱の素晴らしさが、若い世代も含め広く聴かれ、再認識されることを願ってやまない。

 とまれこの記念すべき日を迎えた本日2021年3月21日に向け、この2週間ほど我らがバー『浪漫社」で、ママこと女房を相手に大瀧師匠にまつわる思い出や『A LONG VACATION』各曲についての動画を録画してはせっせとYouTubeにアップしてきた。
(ママ、アップロード作業お疲れ様&ありがとう)

 それらをパートごとにまとめたものを店のnoteアカウントで記事にしたので、ここで紹介したい。

◎Disc 1 Side A「大瀧詠一師匠との出会いと影響」

◎Disc 1 Side B「大瀧詠一師匠に教わったものたち」

◎Disc 2 Side A「『A LONG VACATION』各曲について A面」

◎Disc 2 Side A「『A LONG VACATION』各曲について B面」

 ぜひ、ご笑覧のほど。

 長い年月《としつき》を経てもけっして〝想い出はモノクローム〟とならない大瀧詠一師匠と『A LONG VACATION』。

〝いついつどこどこ〟までも俺の大切な、天然色の宝物だ。

注)同じ「NIAGARAレーベル」でもシュガー・ベイブ『SONGS』やシリア・ポール『夢で逢えたら』、あるいは「多羅尾伴内楽団」「NIAGARA TRIANGLE」「NIAGARA SONG BOOK」「CM Special」らのVol.1やVol.2は解禁されていないところがミソ。さすがのナイアガラ商法(笑)


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