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AI執筆

第170回芥川賞と直木賞の選考会が17日、東京で開かれ、芥川賞に九段理江さんの「東京都同情塔」が選ばれました。生成AIを利用して執筆していたとインタビューで語っていて、話題になっていました。

第170回芥川賞受賞 九段理江さん「東京都同情塔」思いは 生成AIの未来は スタジオで語る NHK首都圏ナビ 24/1/19

九段さんは、受賞の記者会見で、作品について次のように述べていました。

「文書生成AIを駆使して書いた小説でして、全体の5%くらいは生成AIの文章をそのまま使っているところがある」

Q.言葉を大切にされているということですが、あえて生成AIを活用しているのはなぜ?と思った

この小説が、生成AIと人間がどう付き合っていくか。それを使うことで、人間の意識や価値観にどう作用してしまうかをテーマにしていますので、生成AIの文章。本文をお読みになったらわかると思いますが、どこが生成AIでどこがAIでないか、すぐにおわかりになろうかと思います。いろいろな言葉を1つの小説で表現することで見えてくるものがあるかもしれないなと、そういう可能性にかけて生成AIを活用、利用しました。

いつか来ると思っていたけど、かなり早い。

文章や画像の生成AIは、昨今ものすごい話題になっています。進化も早く、未来の技術として注目される一方で、規制するべきではないのかという議論も巻き起こっています。こちらはAI全体に対する規制のニュースですが、生成AIにも触れられています。

EU、AIを包括的に規制する法案で政治合意、生成型AIも規制対象に JETRO 23/12/13

リスクが限定的なAIシステムには、透明性に関する義務のみが課される。チャットボットやディープフェイクを使用したサービスを提供する場合は、AI生成コンテンツであるラベル付けをし、生体認証や感情認識システムが使用されている場合は利用者に通知する必要がある。最小リスクのAIシステムに関しては、新たな義務は課されない。

さらに、交渉において最大の焦点となった生成型AIなどの「汎用目的型AI(general purpose AI、GPAI)」については、欧州委案では明確に考慮されていなかったが、両機関は新たにGPAIに特化した規定を追加。GPAIモデルまたそれが組み込まれたGPAIシステム全般に対して、透明性要件を課すことで最終的に合意した。加えて、影響がバリューチェーン全体に波及するリスクのあるGPAIモデルについては、リスク管理、重大インシデントの監視、モデル評価や敵対的サンプルに基づくテストの実施などのより厳格な義務が課される。なお、これらの義務は、欧州委が産業界、科学者、市民社会などと共同で開発する実施指針を通じて運用される予定だ。

僕的には生成AIは結局のところ道具なので、使いこなしたらいいんじゃないかなと思っています。現にガンズの表紙は生成AIです。規制がゼロでもいいとまでは考えていませんが、バランス取れたところに落ち着くといいですね。

さてこの問題は、AIが人間の仕事を奪うのではないか、という点が懸念されていて。

特に僕は作家なので、AIが作った作品が人間の作家を駆逐していくのではないかという心配があるわけですけれども。

これについては、半分ぐらいは心配、半分ぐらいは大丈夫なのではないかという感じに思っています。

言われ始めた当初から一つ考えていることがあって。

生成AIは結局のところ道具なので、自分で勝手に作品を生み出すことはありません。必ずそれを使っている人がいるはずです。するとどういう人が生成AIを使って作品を作ろうとするのか。

そう考えた時に思いつくのは「手軽にボロ儲けしたい人」です。こういう人はもともと世の中に存在していますが、その人たちが使えるツールができた。さてそうすると、その人たちは一番儲かりそうなものを作るというところに突き進んでいくはず。特に自分で何かを作り上げたいという欲求があるわけではないからです。

ところが、成功者だけが取り上げられているので一見華やかに見えますが、創作の現場では頂点の一部の人を除けば屍累々。作品を売るということはとても難しいことです。

漫画家の場合には制作にものすごく時間がかかりますし、作画スタッフの需要もあるので、大概専業になろうとしますが、小説家の場合、賞を取ってデビューするとまず編集さんに釘を刺されるのは「仕事を辞めないで」ということです。売れないからです。専業で締め切りに追われて原稿を書いているような人は、ほんの一握りなのです。

なので生成AIを使って儲けようと企んだ場合、「売れそう」という部分をかなり突き詰めていかなければいけなくなります。需要が最大級に大きそうなところを狙うわけです。しかもお手軽と言うことは、そこに人が集中、ものすごいレッドオーシャンになり、クオリティがめちゃくちゃ要求されます。そして自分は書けないから、そこを突き詰めるのは難しい。誰でも一定のレベルで簡単に作れるからです。すると結局思ったほど儲けられず撤退する人が相次ぐでしょう。

そこから、もうちょっと需要が少なくてもいいからブルーオーシャンはないものかと考える人もいるでしょう。けれどもそこから先がドツボです。そんな簡単にそんな場所が見つかるんなら、みんな苦労していません。

ということで儲ける以外のモチベーションをそもそも持たない人は、そんなに続かないんじゃないかなと思うのです。

売れてもいないのに書き続けている作家なんて、物語の悪魔に魅入られてしまった頭のおかしい人たちばっかりなんですよ。

なので心配半分、つまり売れ線のところにものすごいレッドオーシャンができるんだろうなということと、あと手軽に文章や絵が欲しい局面では発注者の側が人に頼まずAIを頼るようになるので、ライターさんやイラストレーターさんには影響があるだろうな、ということは考えるのですが。

大丈夫半分では、創作の分野がAIに占められてしまい、人間が追い出されるということにはならないだろうなと思うのです。

いい言い方をすると個性的な人、ぶっちゃけた話をすると売れないと分かっているのに自分の好みに邁進して自ら苦労をひっかぶる頭のおかしい人には、便利ツール以上のことにはならないんじゃないかな。

僕は立派に頭のおかしい人なので、さらに言ってしまうと、世の中の進化の行く末として生成AIにはすごく興味があるのですが、じゃあ自分が使うのかと言うと、今のところその局面が想像できません。いや、色々使い方を工夫している話は聞くんですよ。アイディアを練っている時に相談役として使えるとか。

ところが僕は、物語を作っていて何が楽しいかといえば、頭抱えて唸っていることも含まれるんじゃねと感じており。

そこで助けて欲しいとあんまり思っていないのです。生みの苦しみこそ今自分が生きている証というか。自ら地獄に行くんだから、もう救いようがないですね。

発達して欲しいとしたら、むしろ作業工程の後ろの方でしょうか。今でも助詞の間違いとかサジェストしてくれたりしますけど、自動校正機能がもっともっと進化してくれると、チェックが楽でいい。表記ゆれとかさくっと見つけてくれたらいいのにな。

(ブログ『かってに応援団』24/1/24より転載)

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