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麻酔ってどんな感じ?

 訳あって30分程効く全身麻酔を受けた。その時からいまだ回復しておらず、ただただ横になっている時間もある。

 4年前にも、親不知を同時4本抜きで全身麻酔をしたことがある。
 全身麻酔について、「医者がカウントしている間に意識を失った」だの「4までしか覚えていない」だの聞いていたので、10まで聞いてもまだ意識があったらどうしよう! なかなか効かなかったら恐怖心が膨れ上がりそう! 効き過ぎて或いは手違いで二度とこの世に戻ってこられなかったら……。

 想像しない方が良いことを、色々心配して臨んた。手術台に乗って、器具やら注射やら施され、あれこれと声をかけられる。緊張してきたから体の力を抜くためにとりあえず深呼吸をしよう。「スーハー……」落ち着かなくちゃ「スーハー……」と二度目の深呼吸をしたら、肩を叩かれ「終わりましたよー」と声をかけられた。

 「……?? オワリマシタヨ???」

 確かに熟睡した感じはあった。
 にしても!! この一瞬の間、2時間経っていた。
 自ら深呼吸2回したら2時間経っていたなんて、なんなんだ。カウントすらなかった。怖いじゃないか。


 そして今回。
 事前に30分程度だと聞いていたので、軽めの麻酔(いきさつについてはまたそのうちに書けたら良いなと思っています)。婦人科系で、検査のための子宮内膜掻爬術なので、頭の方はどれくらい意識があるのだろうと不安だった。

 「麻酔入れていきますね~」
点滴の管が刺さっている腕に、点滴とは違う痛みを感じる。

 少し視界がクラクラしてきたけど、30分程度のものだし、前みたいに深呼吸二回で終わってるなんてなさそうだ。麻酔科医の先生がいるのだろうか。処置する先生や看護師さん、4~5人がウロウロしている。
 「どうですか?」と聞かれたので「目の前がクラクラしてきました」と言った。
 そして担当医が、私の意識の有無を確認するために「○○さ~ん」と名前を呼んだ。「は~い」と返事した。

 そう簡単に効きそうにない。

 不安をかき消そうと、その日、自分を鼓舞するために着てきたアベンジャーズのTシャツを思い出した。処置のための注意事項などが書かれた用紙を挟んだファイルも、アベンジャーズのデザインだ。思い浮かべるだけで励まされる。さっきまで読んでいた「アベンジャーズ / インフィニティ・ウォー ヒーローズ・ジャーニー」(スティーブ・ベーリング著)を思い出し、「そう言えば持ってきた布バッグに付けている缶バッジはハルクのだわ。どんだけ好きなんだよ私」と笑えてきた。そしてアベンジャーズの皆が、量子スーツを着ている様子を思い浮かべて気を紛らわそうとしていると、「○○さ~ん、終わりましたよ~」と言われた。

 「……?? オワリマシタヨ???」
 

 デジャヴ。

 私はいったいいつから意識を失っていたのだろうか。
 Tシャツのことを考えていた辺りから? アベンジャーズの皆の様子をイメージしたのは目がさめる直前だったのだろうか。なんなら最初の「○○さ~ん」に対し、本当に私は「は~い」と返事できていたのだろうか。

 4年前の全身麻酔の時は、「終わりましたよ」と言われた直後「ありがとうございました!」としっかりお礼を言おうと思ったのに、全然声が出なくて、多分傍から見たら口がパクパクしていただけだろう。いやパクパクもできていなかったかもしれない。
 
 今回は、「終わりましたよ」と言われてから声が聞こえているのに目を開けられない。身体が思うように動かない。「何かあったらナースコールしてくださいね」とボタンを渡された。左手の中に握るようにセットされたけど、その手も自分の意志で動かせない。

 皆の声はどんどん聞こえてきているのに、私の方は、かろうじて弱々しい声を出せるくらい。
 付き添いで来た夫は、手術の間、出て行かされていたので、「ダンナさん呼びますか?」と聞かれて、「はひ~(はい、のつもり)」とヘナヘナの声で返事する。

 呼ばれて部屋に入ってきた夫を見ようと、頑張って時々目を開けると「あっ。時々目を開けてますね」とか言われる。でもそれにも反応できず、また目を閉じてしまう。

 夫に、私元気だよ、大丈夫だよと伝えたくて振り絞った第一声は
 「麻酔、すごいわ」
だった。

 段々意識が戻ってきて、起きているつもりなのだけど、どうやら傍から見ると寝ているように見えるようだ。身体が動かせないしほとんど喋れないしで退屈だから、色々なことを考える。その度にそのイメージ画像みたいのが思い浮かぶ。これがとても面白くて不思議な体験だった。人の声も聞こえるし、起きているはずなのに、考え事をするとそれについてイメージ画像が勝手に出てくる。夢ってこんな風にできているのかな。

 それにしても、午前中に「痛い痛い!!」と声をあげて、何度も深呼吸していないとやり過ごせないことが、昼過ぎに麻酔かけられてあっという間に何もわからないうちに処置が済んでいた。痛い感覚もその後ほとんどなかったわけで。

 麻酔については、ぜん息のある人はアレルギー反応を起こす時があるので、また違った処置をしないといけないようだし、効きにくい人もいるという。そうでなくても何か処置を間違えないか意識がちゃんと戻ってくるのか、なども怖い。
 でも今のところ、本格的な二度の麻酔体験は不思議で、痛みに敏感な私にとっては便利だった。でもやっぱりちょっと怖いな。

#エッセイ #麻酔 #病院  

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。