『フィンガーネイルズ』―愛情と相性

 同監督の前作『林檎とポラロイド』に夢中になり、新作が観られると知ってAppleTV+に加入した。

 SF映画、というと難しくて置いていかれないか不安になる。しかしこの映画は単純。恋人の爪からふたりの相性がわかる世界。電子レンジみたいな機械に、彼氏と彼女の爪を入れるだけ。三分も待たずに結果が出てくる。とっても簡単。そして「こんなので本当にわかるの?」という気持ちさせられる。結果は100%、50%、0%の3パターン。わりと極端。

 設定は簡単でも、物語の答えを出すのは難しい。相性100%なはずの恋人とは上手くいかず、他に気になる人ができてしまう。診断結果を信じて付き合い続けるべきだろうか?
 爪を剥いで検査するというのも絶妙なライン。それだけで相性がわかるなら安いものかもしれないが、ちょっと抵抗がある。映画の「難しい」の部分が世界観や設定よりも登場人物の心情にあるので、集中して「どうなっちゃうの〜」という気分になれる。(世界も主人公もどうなっちゃうの!という映画も好きです)
 作中のサブキャラ、お似合いの若いカップルはずっと仲良しで癒される。ちょっとヘタレっぽい彼氏と明るくてかわいい彼女。しかし、彼らだってこれからも上手くいき続けるかはわからないし、お互いに遠慮がちで0%の結果が出てしまった人々も今後は上手くいくかもしれない、なんて少し思う。

 前作『林檎とポラロイド』はインスタグラムを彷彿とさせる内容だったが、今作はマッチングアプリだろうか。また、MBTI診断による相性診断なども思い起こさせる。しかし両作ともスマートフォンなどは出てこない。もし簡単にできる診断が生まれずとも、人は「客観的に」「自動的に」振り分けてくれるなにかを欲するだろう。


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