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[ライブレポート]ラテン・ミュージックのダイバーシティ。コロナ禍を経て、「日本ラテン化計画」は新章へ。

「しんゆりJAZZストリーム」DAY2となる10月30日は、日本を代表するサルサバンド、オルケスタ・デ・ラ・ルスが新百合ヶ丘トウェンティワンホールに登場した。

 
今回はボーカルのNORA、JIN、ティンバレス、コーラスの鈴木喜鏤、コンガの伊波淑、ピアノ、コーラスの斎藤タカヤ 、ベースの澁谷和利 、トランペットの佐久間勲、五反田靖、トロンボーンの相川等、前田大輔 の10名での演奏。珠玉のラテン・ミュージックに触れることができるとあってか、ホールに集まった観客は誰もがわくわくした表情で、会場全体が、明るいムードで開演を待っていた。
 
 オレンジの照明が光り出すと「スリラー(ロッド・テンパ―トン曲)」を演奏しながらメンバーがに登場。ハロウィンの小物を身に付け、テクニカルな演奏を繰り広げると、いよいよNORAの登場。「Soy Sopera(NORA作詞/作曲)」を歌い出すやいなや、観客と手拍子で一体になった。
 MCでは、会場アンケートで今回初めてこのバンドのライブを見る人がいたことから、「結成38年目、まだ初めてという人もいるなんて、私たちも人生これからです」。そして「日本ラテン化計画を旗印に活動しています。世の中明るくいきましょう!!」という言葉に、大きな拍手が沸き起こった。
 続いての「No Me Lleves Contigo(NORA/塩谷哲)」では、ホーンセクションのソロの応酬に圧倒された。そして、1980年のサザンオールスターズの名曲「私はピアノ(桑田佳祐(詞/曲)」のカバー。歌謡曲のムードを残しながら施された大胆なラテンアレンジは、この曲が40年前の曲であることを忘れさせる説得力があった。

ハロウィンコスチュームで登場!
NORA

次のMCでは、会場販売している家庭用のギロ(楽器)についての話題に。そして、4曲目はスローバラード「Contigo En La distancia(セザール・ボルティーシュ・デラルス詞/曲)」。ミラーボールが回る中、NORAの歌声が温かく会場を包む。最後のロングトーンに惜しみない拍手が送られた。5曲目は、ポップチューン「Arco Iris(GENTA詞/曲」。黄緑と青のグラデーションの照明を浴びて爽やかに歌い上げた。

 
 1部最後は、スペシャルゲスト、日本でのサルサ・コロンビアスタイルの先駆者、ダンサーBetoが、ルンバのリズムに乗って衝撃的に登場、「Mambo De La Lus(NORA/佐々木史郎)をダンスパートナーSayuriと踊った。ダンスの激しさとそれに追随するようなアグレッシブな演奏に、自席で踊り出す観客の姿もあった。

Beto & Sayuri

2部は、メンバーの中のアカペラチーム「salsa5」とNORAによる「Como Sera」でいきなり別世界へ。その後のMCでは、来年迎える39周年は、「サンキューイヤー」でサンキュー祭りを行い、2年後に迎える40周年で「ドワッと」サルサフェスティバルをやりたいという夢が語られ、会場から後押しするかのように拍手が起こった。

 
 続いて、松任谷由実(ユーミン)が書き下ろした「太陽と黒い薔薇」。NORAが「『真夏の世の夢』のようなマイナー調のラテンぽい曲を」というリクエストしでできた、激しさと、密やかさをもった曲で、赤と青のグラデーションの照明が、演奏をより情熱的に彩っていた。NORAは、ユーミンから「明るい音楽は冷静じゃないとできない」という言葉をかけてもらったそうだ。「ユーミンさんに言われるとそうかもしれない。そういうところがあるから今こういうふうにできているかもしれない。これからもそういうつもりでやろう。」と思ったきっかけになるありがたい言葉だったという。その言葉に観客も共感し、頷く。
 その後、パーカッションの伊波が、1部でも話題に出たギロの演奏をレクチャー。「しんゆり」の言葉に合わせて、全員でギロの体験を楽しんだ。

salsa 5 & NORA
手にしているのはオルケスタ・デ・ラ・ルス オリジナルの小さなギロ

後半3曲目は「Quizas Quizas Quizas(オズワルド・ファレス詞/曲)、4曲目の「Time after time(シンディー・ローパー・ボブ・ハイマン詞/曲)」を楽しんだ。その自由自在の表現力にユーミンの言葉を何度も思い出した。

近況報告等のMCのあと「さあ、グゥアーっと行きますよ」、と「Mi Alma(NORA詞/曲)を。キューバのリズム「モザンビーケ」にのって激しく音楽が進んでいく。
 
 そして再びBetoとSayuriが登場、コロンビアのステップをレクチャーした後、ラストは「Gracias Salseros(NORA作詞/作曲)」。ダンススペースに移動し、Betoから教わったステップを踏んだり、カップルでナチュラルターンをしたりする等、自由なパフォーマンスを楽しんでいた。それに合わせるかのように演奏も高潮、主客一帯でクライマックスをつくった。


客席両側のダンスフロアへ移動して踊る人たちも!

会場の中で観客が自由に踊る姿を見る景色を見ることができたライブは数年ぶりだ。改めて、ラテン・ミュージックがもつ「ダイバーシティ(多様性)」を実感。スタンダードから、スピーディなオリジナル、メロウなバラード、そして歌謡曲のアレンジまで、どのナンバーを聴いても元気になれる。まだまだ抜け出すには時間がかかりそうなコロナ禍の中にあって心から笑顔になれる貴重な時間をもらった、まさに「ラテンは世界は救う」と感じさせるライブだった。バンドが旗印に掲げる「日本ラテン化計画」は、コロナ禍を経て、新章に入り、これからもっと世の中になくてはならない清涼剤になっていくのではないかと感じた。40周年に向かっていく、バンドの今後の活躍に大いに期待したい。

Text by 小町谷聖
Photo by Tak. Tokiwa

公演概要

かわさきジャズ2022
「しんゆりJAZZストリームDAY2 」
日時:2022年10⽉30⽇(日)

会場:新百合トウェエンティワンホール
出演:オルケスタ・デ・ラ・ルス
More Info

セットリスト

【1st】
1. スリラー(Opening)
2. Soy Sopera
3. No Me Lleves Contigo
4. 私はピアノ
5. Contigo En La distancia
6. Arco Iris
7. Mambo De La Luz

【2nd】
8. Como Será (Salsa 6)
9. 太陽と黒い薔薇
10. Quizas Quizas Quizas
11. Time after Time
12. Mi Alma
13. Gracias Salseros

==ENCORE==
EN1: Salsa Caliente Del Japon
EN2: Volaré