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現場に行く、人に聞くーー川崎市議会議員・春たかあき

すみません!お世話になっております!とインタビュー会場の扉を開けるなり挨拶したのは、かわさき未来トークの立ち上げ・発起人でもある、春たかあき。議員という肩書きから想像される「お偉い先生」という印象はない。誠実さのにじみ出る振る舞いに、興味をそそられる。

本記事は、「かわさき未来トーク」の初回記事だ。立ち上げ・発起人である春より、本メディアに込めた思い、そして春と川崎のつながりをお伝えしたい。

プロフィール
1971年7月、大阪生まれ。父の会社の倒産を機に川崎市に移り、それから50年住み続ける。川崎市立橘小学校、川崎市立橘中学校、日本大学第三高等学校、星薬科大学薬学部卒業。薬剤師として脳神経外科・東横浜病院、東横恵愛病院、秋川病院など17年勤務。2015年に川崎市議会議員に初当選。現在2期目。家族は妻と長女。上作延町会防犯部部長7年目。防犯パトロールで通る、東京の夜景がきれいな場所がお気に入り。川崎は、遊ぶ場所に困らないところが好き。

「かわさき未来トーク」の立ち上げに寄せて

「かわさき未来トーク」は、多様な専門家と対談し、最新の知見や活動者の現場視点に耳を傾けながら、川崎の未来を描き、探索することを目的にしている。なぜ政治家が発信するのか、なぜ新たに挑戦するのかに迫ってみたい。

2022年12月11日、溝口にて

春「コロナ禍によって、人々は目に見えない不安と戦わなければならなくなりました。特定の誰かの問題でなく、みんなで頑張ろうとする空気が醸成されているんです。コロナが収束に向かってもなお、この流れは変わらないような感じがします。」

世界中の人々が同じ危機に直面している。わたしたちがいわば運命共同体であることを、望む望まないに関わらず実感させられた。春は、連帯のチャンスを感じている。

コロナ禍は、デジタルの浸透を全世代にもたらした。人と直接会うことは変わらず大切だが、いつでもどこでも気軽に声を届けられるデジタルに、春は期待を寄せていた。普段はLINEをつかって地域の声に耳を傾けている。今度はnoteをつかって、川崎のどのような未来を考えているのかを、世代を超えて届けていく。

春「川崎市は、政令指定都市の中で最も平均年齢が低いまちです。ですので、もちろん全世代の声が大切ですが、特に若者の声を大切にすることを忘れてはいけません。川崎市には、エネルギッシュな活動者がたくさんいます。溝の口はダンスの聖地です。スケボーパーク、バスケットコートもつくりました。でも、まだまだできることがあります。」

川崎市を、みなにとって住みやすい場所にしたいと思う気持ちが伝わってくる。かわさき未来トークでは、川崎の未来を描くための種を探していく。春だけでなく、読者においても、是非そのように活用していただきたい。

小学生の春少年が願った、強くなりたい

春は、海が大好きな少年だった。親戚のいる奄美大島の暮らしが大好きで、幼稚園のときに初めて行ってから、夏休みは毎年行って海・島・水泳に熱中していた。そんな春には、小学生の頃、思い出すのも苦しい経験もあった。

春「今もそうですが、小学生のときから小柄な体型だったんです。それが小学3年生になると、人によっては身体が成長してきて、そうするとグーパンチとかキックとかされる日々が始まりました。なかでもつらかったのは、学校からの帰り道に『目をつぶれ、手を出せ』と言われたことです。手に液体をかけられて、あっという間に瞬間接着剤で両手をくっつけられました。家に帰って、泣きながらお湯をかけて剥がしたのを覚えています。」

春がいじめられるたびに、両親がいじめっ子の家に怒鳴り込んでくれた。学校の先生も怒ってくれた。周囲には恵まれていた。ただ、両親には、あなた自身が強くならなきゃいけない、と言われていた。

強くなりたい、と願っていた。

入院患者の心と身体に寄り添う、薬剤師の新たなありかた

春が高校生のとき、春の祖母がパーキンソン病を患った。パーキンソン病とは、身体が動かしにくく、手足がふるえるような症状が出る。祖母も、典型的な症状として歩行が”すりあし”になっていた。だが、病院の処方薬の効果で、すぐにすりあしが治ったのを目の当たりにした。春はそのとき、薬の素晴らしさに感動した。一浪して、星薬科大学に進学し、薬剤師になった。

薬剤師としての17年間のうち、最初の2年は脳神経外科の病院で勤務し、残りは精神科の病院で長く過ごした。

春「精神科の病院の入院患者の人たちは、気持ちのやさしい人が多かったです。退院できる人はあまりいなくて、長期入院が多いです。そうすると、入院期間中に薬がいくつか処方されるわけですが、薬は処方されて終わりではありません。身体はよくなっているのか、どの薬がその人に合っているのか、をよく見ないといけません。病棟を巡って、入院患者の人たちの様子を見に行き、ついでに気晴らしになればと雑談していました。」

2000年前後、当時は総合病院に薬剤師がいることは少なかった。ましてや、精神科の病院で薬剤師が患者をたずねてまわったために大変珍しがられた。

2003年、秋川病院にて

春「おかげで周囲には信頼を寄せていただきました。ただ、当時、風当たりの強い上司(薬局長)がいました。大変厳しく鍛えていただき、素直に言えばつらかったです。別の病院に異動することが決まって、職場で送別会を開いてもらったんですね。そのときに薬局長がぼそっと、『お前だったらどの職場でもやっていけるから自信を持て』と握手の手を差し出してくれたのが本当に嬉しかったです。」

あれから20年が経つ。毎年、春のもとには当時の患者さんから感謝のメッセージが届く。そのたびに、頑張ってよかったと思い返す。

人の役に立つための新たな手段として、議員に挑戦

市議会議員に挑戦する話が舞い込んできたのは、春が43歳のときだった。薬剤師の仕事を投げ打ってでも市議会議員になるという決断は、春にとってどういうものだったのだろう。

春「小さい頃から、病院で働く人になると決めていたのは、人の役に立ちたかったからでした。市議会議員という職業は、病院の入院患者や来院者のお困りごとを解決するよりも、大勢の人の役に立つことができる、仕事の幅が広がる、と思いました。5日間ほどで決断しました。」

市議会議員という選択肢は、春にとって、誰かの役に立つための手段なのだ。ここに春の静かな意志を感じた。職業が変わっても、変わらないことがあったらしい。それはなにか。

春「入院患者のみなさんからすると、薬を処方されても、やりっぱなしにされると大変です。特に、精神科の患者さんは、薬が効いているのか、身体の状態がよくなっているのかは、面倒を見ないとわからないんです。一人ひとりに向き合うことは、市議会議員になっても大切でした。誰かが抱えている問題を解決するまでとことん向き合うのは、結局同じなんです。」

薬剤師時代の厳しい職場に耐え、患者さんに自ら向き合っていた、春らしい気づきだ。

一件、一件、被災者を訪ねて回った、台風19号

市民から寄せられる相談件数はとてつもなく多い。市会議員はなんでも屋だよ、と先輩議員に指導されたことがあった。今では、その意味がよくわかる。

春「問題は現場にあります。問題を聞くとき、これは国で解決する話なのか、県で解決する話なのか、市政の話なのかを見極めます。それから問題解決に取り組みます。」

これを象徴するのは、2019年の秋に起きた台風19号だ。昭和54年の台風20号以来、40年ぶりに死者100名を超えた大規模な台風は、多摩川沿いに住む川崎市民に多大なる影響を残した。春は、台風の通り過ぎた翌日の朝、テレビで川崎市内の浸水に気づいた。

春「驚いて、現地に駆けつけました。すると、みんなが土手に登っていたんです。その中に顔見知りのおじいちゃんがいて、土手に座りながら、3階建ての建物が2階まで浸水しているのを眺めている姿を見つけました。声をかけたんですが、普段はとっても元気な人なのに、元気がなかったんです。」

春は高津、二子を訪ねたが、他の地域も浸水していると聞いて全ての地域を回ることにした。バイクに乗り、何日もかけて、宇奈根、久地、諏訪、北見方、下野毛をまわった。泥の臭いがひどかった。

春「バイクで進めば進むほど、現実感を失っている自分がいました。夢の中にいるんじゃないかと本当に思いました。」

被災したお宅を一件一件訪問し、困りごとを聞いて回った。ゴミが山のように溜まっているのに清掃車が来ないとか、保険の申請に必要な書類;罹災証明書の発行手順が複雑で遅いとかーー 1日でも早く、いつもの暮らしに戻れる人を増やすために無我夢中だった。

春は、川崎市内の浸水地域をすべてまわり、人々の困りごとに全力で応えた。

人と人をつなげて、まちをつくる

春は、川崎のこれからをどのように描くのだろうか。

2022年12月10日、溝口にて

春「自分の地域をよくしたいと思っている人たちが、世代を問わずたくさんいます。川崎は文化が豊かで、産業も豊かです。この二つをしっかりまわせたら、東京にも横浜にも引けを取らないまちになれます。」

かわさき未来トークでは、教育、介護、医療、防災、アートなどの専門家や実践者と対話を重ねていく。小さな活動を集めてムーブメントにしていきたい、春は、人と人をつなぐ役割を果たすことを志す。

一人ひとりに向き合い続けてきた春とともに、川崎の未来を描いていく。


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