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君はケニアに行ったことがあるか(前編)

唐突だが、あなたはケニアに行ったことがあるだろうか。

18歳の時、のらりくらりと生きていたところに「ケニアに行ってみないか」という誘いがきた。

同い年で幼馴染のセイコちゃん(といっても親が仲いいだけで、本人同士はほぼ付き合いなし)という女子が、動物保護のボランティアに行きたがっている。
しかしセイコちゃんの親御さんとしては、何名かのグループツアーとはいえ、未成年の娘を一人でアフリカの厳しい大地に送り込むのは心配だ。
というわけで、当時杉並区で一番暇だった僕に白羽の矢がたった。

大学に通ってはいたが生来の陰気がたたり友人はあまりできず、いやあまりじゃなくて全くできず、少しの空き時間でも家に帰って部屋でなにやらパソコンをパチパチやっている、半ひきこもりの息子を心配したのだろう。親も「折角の話だからいってらっしゃい」と積極的にサポートしてくれた。

僕は別にアフリカにも動物にも何の興味もなかったが、暇だし金も出してくれんなら行くか…というくらいのテンションだった。
海外には、物心ついてからは中学の時に家族でオーストラリアに行ったっきりだった。ケアンズという海沿いの観光地で、宮崎出身の父はケアンズに着くと「ほぼ宮崎じゃん」と言っていた。
なので海外旅行経験はその時点でなかったともいえる。"ほぼ宮崎"に行っただけだった。

1か月後、僕はアフリカに向けて旅立った。
ボランティアの内容は色々だが、メインは国立公園での動物の様子を調査するお手伝いらしい。
空港で同じボランティアに参加するメンバー6人くらい+ガイドのゲンさんと合流。
メンバーの年代は大体18~22くらい、大学生もしくは大学院生だった。
みんな単独での参加で、あとで聞いたところ、男女コンビでの参加になる僕とセイコちゃんは当然その時点ではカレカノだと思われてたらしい。
もっと言うと「チャラチャラしやがって。カップルでアフリカ来んなよ」と思われていたらしい。まあ逆の立場だったら僕もそう思うだろう。

アフリカ到着前にトランジットでインドに一泊。ちなみに"トランジット"という概念もここで初めて知った。
空港でタクシーの運ちゃんにパスポートや財布の入ったカバンを預け、トランクに入れてもらい乗り込むと、全ての荷物を抱えて乗っていたセイコちゃんが「あんた何やってんの!!荷物預けちゃダメ!!」と一喝。
どうやら異国の地では日本とは違い、こういったサービス業の方すら信用してはいけなかったらしい。世知辛いもんだ。ガンジーの国じゃないのか?

タクシーはクラクションを5回/秒くらいの頻度で鳴らしながら人でごった返すムンバイの街を爆走。
道端で死んで腐っている牛がいたり、ギリ死んでない感じの人間がいたり、「これがカルチャーショックか!人生変わるかもな…いや、この旅で変えてやる」と旅へのモチベーションがそこであがってきた。ちなみに恥ずかしながら当時まだ童貞である。人生変えたがっている年頃なのである。

幸い荷物も乗ってる人間も無事で、モワンとカレーの匂いのするベッドで夜を明かした。

そこからまた10数時間飛行機に乗ってケニア・ナイロビへ。

空港に降り立ち、意外と近代的なビル群を見て、ナイロビは普通に大都市なんだと分かった。
しかし空港を出て街を歩いた瞬間。

「ッワ~~~~!!」

「ワーワー!!!!」

どこからともなく現れた小学校低学年くらいの子供たちが僕たち一行を囲んだ。みんなキラッキラの笑顔だ。
彼らは手に鉛筆を持っている。え、サインですか??まいったな…。
するとガイドのゲンさんが言った。

「鉛筆売ってきますけど絶対に買わないで!!!キリがなくなります!!」

なんと路上のモノ売りだったのだ。
ストリートチルドレンなのか、お小遣い稼ぎなのかわからないが、ここでは子供が観光客に鉛筆を売りつけることでいくらかのお金を手に入れようとしているらしい。ゲンさんから教わった「いりません」という意味のスワヒリ語を連発してると、彼らは輝く笑顔をスッとおさめ、無表情でまた空港の方に戻っていった。

別の通りに入ると、今度は本格的に路上でお店を開いている大人たち。
目玉商品っぽいラジカセには「SQONY」というロゴが書かれていた。日本が誇る電気機器メーカー、プレステやウォークマンで有名なあの「スコニー」製品がアフリカでも売られているのだ。すごい。

高層ビルやショッピングモールが並び、スーツ姿のビジネスマンが行き交う、想像していた所謂"アフリカ"のイメージとは全く違うナイロビの街を歩きながらゲンさんが説明してくれた。
「ナイロビは綺麗な街に見えるけど油断しちゃダメです。慣れてない観光客は17時以降絶対に外出しちゃいけません。そこで何かあってもその人の責任です。もちろん皆さんをそんな危険な目には合わせませんが」

恐らく街の中での貧富の差が激しく、持たざるものはいつだって持てる者から奪う機会をうかがっている、ということなんだろう。


この辺記憶があいまいなのだが、ナイロビからすぐバスに乗り、最初の目的地、マサイ・マラ国立保護区に到着。

こういうところでした。

photo by paradiseintheworld.com

大都会ナイロビから一転、いきなり純度100%、想像通りのアフリカが出現。
この時点で僕は動物にも自然にも一切興味がなかったが(怒られろ)、マサイ・マラの雄大すぎる光景にはさすがにテンション上がった。ライオンキングも大好きだし。

その日はもう日が暮れるので、一泊して翌日から動物調査へいくとのこと。
圧倒的な非日常感にワクワクしつつ宿舎へ行くと、そこで衝撃的な事件が僕を待っていた…。

(後編へ続く)
(一応ヒキをつくっておいた)
(別にそこまで衝撃的じゃないけど一応そう書いておくべきだよねこういう時は)
(とにかく後編へ続く)


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