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『シーシュポス:The Myth』最終回考察

普段は自分のくだらない思い出とかを書いているこのnoteですが、今回はイレギュラーです。
Netflixで配信中の韓国ドラマ『シーシュポス:The Myth』を最後まで見た方に向けたものになっているので、興味ない方、今から最終回を見る予定の方には意味不明だと思います。

『シーシュポス:The Myth』(以下シーシュポス)を完走した。

最初CGもしょぼいし、主人公を好きになれないしで全っ然ノレなくて4話くらいでやめようと思っていたが、「この謎分かったらやめる」「こいつの正体だけ分かったらやめる」とズルズル続けるうちに気づいたら超ハマっていた。
エヴァンゲリオンを観た後だったので、「理屈的によくわかんないことでも作中の人物が言ってるならそうなんでしょ」という対SFの姿勢ができてたのもよかったかもしれない。

最終回の結末がめちゃめちゃモヤっとさせるつくりになっていて、最初は「えっなにこれ…?」「まさかの夢オチ…」とポカーンとするしかなかったが、小一時間考えて自分なりの考察がまとまってきた(そして良くできたラストだ!と感動した)ので、ここにメモ的に残しておく。

同じくシーシュポスのラストに置いて行かれてしまったアップローダー難民の皆様の参考の一つになれば幸いである。


僕が思う、最終回を終えて残った大きな疑問は3つだ。


疑問①どうやって戦争は起こった?

ドラマ終盤で、戦争を引き起こす最初の核爆弾は、未来のシグマがアップローダーを使って送りこんだものだと明らかになった。
たしかに、あの日までホームレス同然だったシグマ(便宜上ヒゲシグマと呼びます)がどうやって核戦争を起こしたんだ?と疑問に思っていたがそれなら納得がいく…いや、ちょっと待った!

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ヒゲシグマは核戦争を運よく生き延び、誰もいなくなった街を見て覚醒、↑のテスルに嫌がらせしてるシグマになったという描写があった。
じゃあそもそもその核戦争はどうやって起こったの??最初は↑のシグマいないじゃん!

この疑問に対する答えは「最初の回では核戦争はなかった」だと思う。
作中でシグマは「何回も繰り返してる」「前回は~~だった」とことさら繰り返す。不思議と他のキャラからはあまり出てこないこの手の発言。そして序盤に出てきたシーシュポスの神話の絵から考えるに、シグマは2035年~2001年のループを何度も何度も繰り返していると思われる。

※つまりエヴァのカヲル君、ひぐらしのリカちゃんです。

<<シグマ氏年表>>

2035年(あたり)アップローダーに乗る(髪を切ってから)

2001年 地下鉄線路に到着

テスルへの嫌がらせを楽しむ ←ここがシグマの一番やりたいこと!

髪伸びて変なバスローブ着る

2035年(あたり)アップローダーに乗る(髪を切ってから)

で、これを繰り返すうちに知恵もつくわけだ。今回我々がみたシグマの最初の稼ぎ方ったらすごかったでしょ。単に未来から過去に来た人があそこまで用意周到に稼ぐための情報を用意できるとは思えない(ましてやシグマは恐らくロクな教育受けてないだろうし…)。あれは、何回も過去にきている熟練者だからなせる業だったと想像できる。

一番最初のシグマの人生はドラマの中では描かれていない。恐らく戦争も起きていない世の中で、何らかの理由でテスルが完成させたアップローダーに乗れるまでテスルへの恨みを抱きながら底辺で生きていたのではないだろうか。(個人的には一番最初のシグマの人生で、アップローダーで過去に戻れたのがたまたまシグマただ一人だけだったんじゃないかとも思っています)
何度か過去に戻るうちに「過去を変えるノウハウ」を蓄積していき、何度目かの時間旅行の時に"核戦争"というシナリオを書き加えたんじゃないだろうか。

終盤でソヘのもとに未来からパパの手が届くシーン、あの前の場面でシグマは「もうすぐ宅配便くるよね?あれやってみたかったんだよな~」とはしゃいでいる。あそこからも、シグマは何度か繰り返す時間旅行の中で、バリエーションを変えて(より残酷に)テスルを傷つけることを楽しんでいることがわかる。

ただ、上記のように時間旅行繰り返してるシグマがいるとして、①戻るたびにシグマ増えちゃわない?②シグマめっちゃ年取ってんじゃない?という問題がある気がするが、テスルの死後とかに過去シグマと未来シグマは統合して、記憶を引き継いだまままた2001年に戻るとかじゃないっすか?(最後投げやり)

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※ほんとにこの子役さん凄かったですね!


疑問②最後の飛行機でのテスルとソヘは何?

視聴者をポカーンとさせた最大の問題シーン、飛行機で目覚めるテスルの場面。これは疑問①よりは単純で、「死後の世界」を描いたものだと思う。
中盤でソヘが注射うたれ、テスルが助けに行ってチューしたあの"黄泉の国"と同じようなものじゃないだろうか。

正直、この『シーシュポス』という話、ラブストーリーとしてはハッピーエンドを迎えられないことは視聴者みんなが気づいていたと思う。シグマを倒しアップローダーを作らず、未来を変えたら大人ソヘだっていなくなるわけだ。
終盤、僕は「大人ソヘは涙ながらに消えるけど、20年後大人になったソヘと60歳くらいのテスルが…みたいな結末だったらめっちゃやだな…」と心配していた。

その矛盾を解決する策が「テスル死亡、死後の世界でソヘとハワイいったりして幸せに暮らす」という力業だったわけだ。
多分賛否両論あると思うが、僕は嫌いじゃない。1話で兄テサンの幻覚が座っていた席と同じところにソヘが座っていて、あそこは幻覚専用シートといった感じなのも良い。


疑問③結局どういう話だったの?

僕はこの『シーシュポス』を、神話のシーシュポスが伝えている「どう頑張っても結果は同じ」という話とは逆で、「諦めなければ意志の力で未来は変えられる」というメッセージをもった作品だと読み取った。
この話の中ではっきりと罰を受けたのは2人。シグマとエディ・キムだ。
2人ともテスルによって「自分の不遇を人のせいにしている」と断じられている。つまり自分で自分の幸せを切り開こうという意志がなかった2人が悪い結末をむかえたのだ(と、思う)。

まずはエディ。これは分かりやすいが、教会で自害したテスルを前にガックリと崩れ落ちている。この先彼は永遠に勝てないハン・テスルの亡霊に苦しめられながら、贖罪の意識と共に暮らすことになるのだろう。

エディキム

※『ミセン』のムカつく先輩じゃん!と思ってたら今回もムカつくナイスな役だった。


そしてシグマ。ここが多分読み取り方が分かれるところだと思うので、「※個人の解釈です」という注釈をつけておこう。

疑問①で書いたように、彼はこのドラマで描かれた前のループまでは、繰り返し繰り返しテスルを痛めつけることを楽しんでいた。恐らくそれだけが彼の生きがいだったはずだ。

しかし、テスルの死によってそれはかなわぬものとなった。

ラスト、ソヘパパのメモで「あるはずだった別の世界線」を知る。しかし既にテスルは死に、アップローダーも使えない。結局は鏡の中にテスルを出現させ、それに話しかけることしかできない(つまり、テスルに執着しながら報われない煉獄のような生を続けるしかない)という結末だったのではないだろうか。
ちょっとゾワッとくるくらい残酷な終わりだと思う。

このエンドはほんとによくできていて、単純に「シグマは生きていた!まだ戦いは繰り返される…」みたいな終わり方にも読み取れる。そこらへんが分かりづらいともいえるが、こういう考えたくなる結末は大好物です。

一つシグマの救いとしてありうるのは、ソヘパパが優しくしたことで少なくとも外面を良くするくらいの社会性を身につけていること。時間の経過と共に、もしかしたらテスルのことを徐々に忘れていき、シグマは自分の人生を生きることができるようになるのかもしれない。
※部屋にあるテスルのキモい絵が少なくなってる、という指摘もあるようです。

ちなみに他の人たちは…

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このカップルはワイハ旅行 in 死後の世界でハッピーエンド。

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社長は家族の絆取り戻すような兆しがありましたね。

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子供ソヘとその両親は、戦争起こらずもちろんハッピーエンド。

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みんな大好きソン君ももちろんハッピーエンド。でも実は地味に彼だけがほとんどの顛末を知りながら生きていきますね。

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ソジンは父と母とテスルを亡くすことになりますね。もしかしたらエディと2人で支え合うのかも。

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お兄ちゃんはバッドエンドっちゃあバッドエンドですかね。テスルが死んでるわけなので…実は作中ずっとお兄ちゃんの行動が一番謎だったので、もう考えないようにしています。

というわけで以上『シーシュポス』最終回の考察でした!いやー面白いドラマだった!

もし「ここは違うっしょ」とか「ここはどうなってるの?」とかあったらコメント書いてください。一緒に楽しく考えましょう。

何せ周りに観てる人が皆無なので…。

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