見出し画像

イチゴを見ると思い出す

小学生のとき、珍しく私の家に友達が来たことがあった。
母が出したおやつは、器にごろごろとイチゴを入れ、牛乳と砂糖をかけたもの。
うちはいつもそうやって食べてたので、イチゴはそういうものだと思っていた。
Aさんは普通に食べ始めた。
Bさんは器を見つめている。イチゴ嫌いなのかな?と思っていると、
Bさん「メリーミルクないの?」
私「え?なに?」
Bさん「メリーミルク」
私「え?え?」
Bさん「メリーミルク知らないの?」
私「みりんミルク?」
Bさん「メリーミルク!」
私「なに?Aさんわかる?」
Aさん「わからない。Cさんは?」
Cさん「ううん」
Bさん「みんな知らないの?もういいよ。牛乳苦手なんだよね」
私「あ、じゃあ牛乳かかってないのを」
Bさん「いい、いいよ。食べるから」
後になって、練乳の商品名?と思ったけど、なんにしても家に練乳はなかった。
Bさんには申し訳なかった。

私の母はイチゴは洗わないとイヤ、父は洗うと美味しくない、
でいつも対立していたけど、用意するのは母だから、毎回洗われていた。
父は「洗わんでいいのに」と言いながら食べていた。
一度だけ家族でイチゴ狩りに行ったことがあった。
母も食べてた気がするけど、洗えないからイヤ、と言って二度は行かなかった。

こどもが生まれて離乳して最初の春、イチゴをあげてみるともりもり食べ、
「お父さんお母さんの分残しといてね」
と言ったら逆にあわてて口いっぱいにほおばっていた。
ハムスターみたいでかわいかった。
それを聞いた私の実家では、孫はイチゴが好きなんだとしっかり覚え、
次の年の春に手土産にイチゴをくれた。
こどもは食べなかった。全く。
こどもの偏食は離乳食中から始まり、
一度は食べていたものを突然食べなくなる、ということが起きていた。
うちのこどもの場合、食感はかなり重要なようで、
つぶつぶ感、シャキシャキ感などの感覚が発達して受け付けなくなったもよう。
私と夫は食べれるから、イチゴもらって困りはしないけど、
孫が喜ぶと思ってくれるので、もう食べないよ、と実家に言うと残念がってた。

こどもが小学生になって通学していたころ、
付き添って一緒に歩いていると、イチゴのハウスから換気扇で風が出ていて、
辺りに甘いイチゴの香りが濃厚に漂っていたことがあった。
よその子たちが「いい匂ーい」とはしゃいで深呼吸していた。
うちのこどもは鼻を押さえて「臭っ」と言った。
よその子とうちの子、過去のこの子と今のこの子、
落差が大きすぎて可笑しかった。
ここから嗅覚過敏がはじまるんだろうか?と思ったけどそうはならなかった。
いくつか嫌いなにおいはあるようだけど、嗅覚は私より鈍いくらい。

我が家はイチゴもイチゴ味も、もう10年ほど食べていない。
やっぱりこどもが食べれるものを一緒に食べたいので。