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クラシック倶楽部を聴いていて

BSのクラシック倶楽部を毎日録画していて、
テレビの近くにいるけどずっとは見れないとき、
たとえば洗濯や掃除、片付けのとき、BGMに流している。
定番の曲は繰り返し出てきて聴くことになるけれど、
作曲家や曲名をよく覚えてないまま何度も聴いている曲もある。

きのう、夫は仕事にとりかかり、こどもはまだ寝ていて、
一人で朝食中に聴いていると、そういう曲が流れた。

あ、これ聴き覚えがある、この出だしでいつも悲しい気分になる曲。
何かをなくしてしまったり失敗して、もうどうにもならないようなことのあと、
しばらくしてちょっと落ち着いたけど心が疲れてるみたいな、
そんな気分を思い出して、毎回、最初の数個の音で、すっと気が沈む。
心のどこかでぐっと踏んばらないと、そのまま鬱に沈みそうになる。
なんだっけこの曲、と画面を見ると、“ソナタ 第1番 (ブラームス)”
ブラームスのバイオリンソナタだった。
そのときちょうど字幕解説で
“このソナタの作曲中 ブラームスが名付け親となった
敬愛するシューマンの息子フェリックスが亡くなった”
と流れたのを見て、そういうことか、と腑に落ちた。

そんな作曲の背景知らなくてもその気持ちが音楽を通して伝わるって、
ブラームスすごい!と思い、
再現できる演奏者も職人技だなと思い、
音楽と脳のしくみって不思議だなと思った。

それから、自分が10代の頃の、実家のこたつのある部屋を思い浮かべていた。
いつもそこで豆菓子をボリボリ食べていた父の背中も。
父が亡くなり、部屋も模様替えされ、もう父もあの空間も記憶の中にしかない。
もう無い、と、しょうがない、さみしい、なつかしい、が混ざってる。
そういう気持ちに一瞬で連れていかれるソナタ。
だけど、冬の縁側みたいな、夕焼けみたいな、すこし暖かみも感じる。
あ、悲しい曲、と思いながらも再生を止めることなく聴いていられる。
きのうは一日中、頭の中で出だしのメロディがリピートし続けていた。