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瓦
2023年8月5日 13:51
地下鉄の電車を待っている中年の男性のこんもりとした腹の山には、ひときわ大きな革のベルトが一周ぐるりと巻き付いている。彼の耳の辺りに群がる白髪交じりの毛は、渦を巻いて、その周囲の黒い髪と明らかなコントラストをなしていた。彼は、茶色の皺が幾重にも出来た年季の入った大きな鞄をだらしなく左足と右足の間に置いた。彼の後ろに偶然にも位置した正人は「いずれこうなることは分かりきっている」と思った。「これは未