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「組織」と「個」

みなさんこんにちは。久しぶりのnoteになります。

今回のテーマは「組織」と「個」についてです。先般行われた天皇杯・皇后杯の男子決勝において、このテーマにふさわしいゲームが行われたため、本稿を書かせていただく。なお、以下にアーカイブのリンクを貼らせていただくので良かったらご確認頂きたい。

◆現代バレーにおける「組織」の概念

現代バレーにおける組織プレーとは、大雑把に言えば「トータルディフェンス」と「4枚攻撃」に代表されるのではないか。この組織的に動いていくプレーを円滑に機能させることにより、ゲームを有利に進める事が狙いだ。

◆守備における組織プレー

ではまずトータルディフェンスについて概要を述べてみたい。トータルディフェンスはサーブが起点となる。サーブで相手レセプションを崩すことによりブロックの対象となるスパイカーを減らすことにより3人のブロッカーが相手スパイカーに対し2枚ないし3枚のブロックを揃えて飛ぶことが容易になる。そうして相手スパイカーのスパイクコースを限定することによりディガーの守備位置を限定しディグをしやすくすることが狙いだ。

この連携において重要になるのはブロックである。ブロックが1枚になってしまうとディグする範囲が非常に広くなってしまい相手にとって有利な状況となってしまう。そうならないためのブロックフォーメーション(戦術)として最近よく目にするのはバンチシフトだったり、テディケートシフトである。

ここで組織的守備におけるポイントを整理する。

・サーブは相手を崩すように打ち、スパイカーの数を減らす       (ミスのリスクはある程度背負う)                   ・ブロックは相手によりバンチ/テディケートを使い分ける            ・複数枚ブロックを揃えてディグコースを限定する              非常に荒っぽい表現になってしまったが守備における組織プレーとは以上のようなものとなる。

◆攻撃における組織プレー

次に4枚攻撃についてだ。4枚攻撃とは両サイド(場合によっては片方のサイド攻撃はOPのバックアタックとなる)と中央のMB+OHによるパイプ/+BICKによる4スロットを使用した攻撃となる。バレーボールのルール上前衛は3名だ。よってブロックの最大枚数も「3」となる。これに対し攻撃枚数を「4」にすることにより有利に攻撃を行うことが狙いだ。近年よく耳にする「シンクロ」や「同時多発位置差攻撃」というのは全員が同じテンポ(同時に助走を開始すること)で違うスロット(攻撃する場所)に入ることにより4か所から同時多発攻撃を仕掛ける組織プレーになる。

当然ブロックは3人で4人のスパイカーをケアしなければならないため攻撃側にとって非常に有利な状態となる。

◆ゲームにおける組織プレーの駆け引き

ここまでざっと組織プレーを紹介してきたが、現状V1男子においても全チームが4枚攻撃を標準装備しているわけではない。そしてバンチリードブロックもすべての選手が確実に実行できるわけではないことをお断りしておく。

天皇杯決勝においては両チームが守備的組織プレーにおいて卓越したプレーを見せてくれた。サーブ、ブロック、ディグにおいて全くの互角であったと言っていいと考えている。両チームの違いは攻撃枚数。準優勝の堺ブレイザーズの攻撃枚数3に対し優勝したウルフドッグス名古屋は4であったことから攻撃においてはウルフドッグス名古屋に軍配が上がったかに思われたが、堺ブレイザーズのブロックポイントが15本もあったことを考えると堺のブロック陣は名古屋の4枚攻撃に対し対応できていたと考えていいのかもしれない。

◆組織の上にある「個」

このようなゲームの中で勝敗を決めるのは何か。組織力において差がないのであれば試合を決定づけるのは「個」だ。しかしこの場合の個というのは旧態依然の個とは意味が違う。どうしても「個」というのはアウトオブシステムにおける状況打開力というイメージに引っ張られてしまいがちだが、現代バレーにおいてはそれプラス「戦術遂行における個人の精度」という部分にも関わってくる。

例を挙げればOHのレセプションしてからのBICKに入る能力であったりMBのBパスからのファーストテンポを裁く技術、OPの不利なハイセットを処理するための引き出しの多さなど多岐にわたる。今挙げたものもほんの一例であるとご理解いただきたい。

このような「組織」の上にある「個」のクオリティの向上が現代バレーにようやく追いついた日本男子バレーにとっての課題となってくるのではと個人的に考えている。

◆今後の日本バレー界のために

さて、ここまで長々と述べてきたが今の現役選手が上達すれば日本バレーが強くなるわけではないということを強く申し上げたい。強くなるために必要なのはこれからのプレイヤーがそういった知識・経験をもって上のカテゴリに上がっていくことだ。「組織」と「個」、「知識」と「技術」全てをバランスよくレベルアップしていかなければ必ず頭打ちになる。レセプションからのスパイクしかり、Bパスからの攻撃しかり、最も顕著なのはブロックである。リードブロックの技術だけをとっても習得に非常に時間がかかる。しかし習得しないと世界では戦えない。もっと言えば学生カテゴリでも習得しているチームが出てきているのが現状だ。将来的に必要になる技術があって、それは習得に非常に時間がかかるものであることをご理解頂きたい。

今できなくて良いんです。「やったことがある」が積み重なって「できる」になるのですから。今からのバレーボーラーは単なるスペシャリストではなく、「オールラウンダーなスペシャリスト」(矛盾していますが伝わりますでしょうか・・・)が必要とされる時代に突入しています。

なんだか思いつくままに書いてしまいまとまりのない文章になってしまいましたがまだまだ続くVリーグ、そしてパリオリンピックにおいてもハイレベルな、脳汁あふれる試合が観戦できることを願いまして筆を置きます。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

いつもサポートありがとうございます❗️頂いたサポートは執筆の機材費、情報収集、自身の学習に当てさせて頂いております。本当に感謝です❗️