親友と連盟プロの妹との三角関係

最初は長編にして有料記事にしようかと思いましたが、今回は短めの話にしました。読んでくれてありがとう。

俺がまだギャンブルばかりしていた頃の話。

2010年、俺は高校時代の親友と所沢のパチンコ店へ通っていた。
俺は大阪に自宅があったが、関東進出を見据えてバッグ１つで来ていた。

当時のスロットは5号機時代に到来し、一気にパチスロ人気が低迷していたが、徐々に復調してきていた頃でもある。
その筆頭となったのは新世紀エヴァンゲリオン～魂の軌跡～で、この年に発売された。

いつものように朝一、所沢のパチンコ店に並ぶ。
その日は名宝という店のイベント日だった。
親友と抽選の順番待ちをしていると、目の前に可愛らしい女の子が並んでいたので声を掛けた。
いわゆるナンパというやつだ。
俺はそういう事をするのがとても苦手なタイプだったがすぐ目の前に女一人で並んでいるということもあり、声を掛けることができた。
その女と色々世間話をしていると、割と有名な連盟女流プロの妹であることがわかった。
当時私はまだ協会プロをしていたので、これも何かの縁だと思ったが、本人は全く麻雀ができなかった。
それどころか風俗店で働いていて、AVにも出演したことがある女だった。
ただスロットになるとプロ顔負けのガチな女で、所沢東口のワイズスタイルの土曜据え置きイベントには女一人で23時から朝一まで並んでいた。

【設定据え置きイベント】
前日の設定が引き継がれる内容のイベントで、狙い台に座れればほぼ勝ちが確定する。
もちろん店によってはガセもあるので100％信頼はできない。

俺は昔は結構メンヘラ気質の女が好きだったので、それらの諸事情は気にせず、同じスロット好きという理由ですぐに好きになっていた。
それからというもの、毎日のように顔を合わせ、時には３人でノリ打ちすることもあった。
しかし俺との交流をきっかけに少しずつ他の集団の男とも接点を持つようになっていった。

ある日の閉店後、その女と３人で所沢のファミレスに行った時、事件は起きた。
（事件とは言ってもありきたり話なのだが、俺の中ではこいつとの関係が疎遠になる一番の要因だったのでそうさせて頂く。）

ファミレスで食べ終えた後、スロットの話になったとき、親友は俺の目押しが遅いことや過去の話などでイジってきた。
そもそも俺は目押しは得意だし、普通の人から見たら差がわからないほどだが、そいつに比べて遅いのは事実であった。
別に彼に悪気なんてないし、目くじらを立てて怒るようなことじゃない。
自分をなだめたが嫌な予感がした。
俺が狙っている女（しかも俺が声をかけた女）の前でそれを言うのは違うだろうという気持ちだった。
暗黙の了解なんて持ち出すのも俺らしくないが、俺はひどく不愉快な気分になった。今だったらそんな小さな欠点など補える話術があるかもしれないが、当時はそれを持ち合わせていなかった。

俺が一緒に立ち回っていた親友は決して性格の悪い人間ではなかったが、スロットの腕は俺よりも立った。
そもそもスロット自体、彼に教わった。収支の面でもずば抜けていて、高校時代ですらスロットで200万程度お金を貯めていた。
私というと、高校時代は彼のようなシビアに立ち回りができず、ただただ打ちたい台（主に北斗）を打ち続けて負けていた。
そういう過去もあり、親友は俺のスロットの腕前はかなり見下していた所があった。

嫌な予想は的中し、女はその親友のことが好きになっていた。

女とはいつの時代だって強い男に惹かれるものだ。
片方が片方をイジっていたら、イジられた方は弱く見える。
しかもその女が一番熱中しているスロットに関してならなおさらだ。

女が親友の事が好きだということを知るのはそれからすぐのことであった。それからというもの、俺はその女とあまり連絡は取らなくなったが、同じ行動範囲なのでよくホールでは顔を合わせた。
そのときは何もない素振りを見せたが複雑な心境だった記憶がある。

そんな三角関係の終わりは突然だった。
数か月後、東北の震災が遭った際に、”関東にいては放射能が危ない”と世間で騒がれたのをきっかけに俺は東京を去った。
元から家もなくネットカフェや親友の家に泊まっていたので離れてしまえばそれっきりだ。

今、その女がどうしているかはわからない。
親友ともそれっきり会う事はなくなっていた。
もちろん俺の性格的に彼からの連絡を無視したりはしていないだろうが、人間関係なんてどちらかがフェードアウトしたらだいたい疎遠になる。
そもそも親友は当時、早稲田の学生だったし就職してからは仕事で忙しいだろう。


ちょうど一年前、１２年ぶりに「年末に名古屋帰るけど会える？」と連絡があった。
去年は大阪にいて会えなかった記憶がある。
むしろ会えずにほっとした自分もどこかにいた。
また来年会えたら会おうと言ったキリだった。

もし彼が年末名古屋に帰って来るなら、そろそろその連絡がある頃だろうか。

過去の恨みなんていう気持ちなどないが、どこか会いたくない自分と、会いたい自分がいる。

まぁ連絡が来たら考えるとしよう。