見出し画像

【学校教育#3】平和教育で不登校になる子ども

私の知り合いのお子さんで、不登校気味の小学生の子がいます。理由を聞くと、平和教育が苦手で学校に行きたくないというのです。あまり聞き慣れないパターンかもしれませんが、私は思わず「わかる!」と言いました。実は私も子どものころ平和教育が大の苦手だったのです。

子どものころにできたトラウマ

私が小学2年生の時です。近所の公民館であった映画上映会に、親に連れられて行きました。私は度々そこでアニメの映画を見ていたので、今回もてっきり楽しいアニメだろうと思って、ワクワクしながら行きました。
しかし、その日の上映は「黒い雨」。原爆の映画だったのです。

小学2年生の私にとっては、あまりに衝撃的な映像と音声で、私は上映中に気分が悪くなり、吐いてしまいました。
それから1か月ぐらい、毎晩、原爆や戦争の夢を見るようになりました。いわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)ですね。当時はそんな言葉は知りませんでしたが。
小学5年生の時に原爆資料館へ社会科見学へ行くことになったのですが、その前には再び原爆の夢を見るようになりました。当日も行きたくないと親に訴えましたが聞き入れてもらえず。無理して行きましたが、結局中には入れずに、外で一人で待っていました。今では外で児童を一人で待たせるなんて絶対しないですが、当時はそれもありだったんでしょうかね。一人で心細く待っていたことを鮮明に覚えています。

長崎の平和教育

さて、冒頭の件ですが、私が住む長崎では、毎年8月9日が登校日で平和集会を行います。さらに、爆心地に近い小学校では毎月平和集会が行われます。内容は主に、
・被爆体験講話(最近は体験者の方が減っているので被爆体験伝承講話になりつつある)
・学年の発表(原爆資料館に社会科見学へ行く5年生が多い)
・平和に関する本の読み語り
・平和の誓い(各学級で考えたスローガン的なものの発表が多い)
・平和に関する歌
などです。
この平和集会に向けて事前に原爆や戦争に関する学習を各学年や学級で行います。
この事前学習や平和集会で、原爆の写真や映像を扱うことがあるので、当時の私のように、それが苦手な子どもにとってはかなり辛い思いをすることになります。
一言付け加えておきますと、そういう子どもに配慮して、今は以前に比べて衝撃的な映像や写真を見せることは少なくなりました。ただ、それでも苦手な子どもはまだかなりの数います。私の小3の息子もそうです。

「現実から目を背けてはいけない」という意見も

こういうことを話すと、「戦争が起きたこと、原爆が落とされたこと、そこで多数の犠牲者が出たり、重症を負ったり、今なお後遺症で苦しんだりしている人がいるのは事実。現実から目を背けるのではなく、実際に起こったことをしっかりと言葉や映像で伝えることも大事な平和教育なのではないか」という意見も出てくると思います。
これに関しては私も半分は同じ意見です。戦争の悲惨さを、原爆の恐ろしさをしっかりと後世に伝えていきたい。決して風化させてはならないと思います。
しかし、そのためのアプローチとして、小学生の子どもに戦争や原爆の映像や画像、生々しい表現がどうしても必要かと言われれば、私はそうは思いません。むしろ、上記に書いたような弊害が起こることが予想されます。

お腹いっぱいの平和教育

先ほど長崎の平和教育を紹介したように、これまでの平和教育は、戦争や原爆の悲惨さや恐ろしさを知ることに重点を置いてきたように思います。それを毎年や毎月やるものだから、子どもたちはすでにお腹いっぱいです。正直「またか」「やりたくない」「怖い」「見たくない」という思いです。平和教育はとっても大切なことなのに、子どもたちにこう思わせてしまっては、やる意味がありません。

未来志向でつくる平和教育

過去の事実のインプットももちろん大事ですが、それ以上に、これからどうしていくかというアウトプットが大事なのではないかと私は思います。
平和を望まない子どもたちはいません。だったら、「どうしたらみんなが望む平和な世の中になるか考える」未来志向の平和教育なんてどうでしょうか。
それは、ただその時だけ「学級で1つのスローガンを作りましょう」とかいう薄っぺらいのものではなくて、平和な世の中をつくるために必要な言葉や行動、考え方などについて、子どもたち同士が「あーでもない、こーでもない」と言い合う対話の中で生まれたものを一つ一つ書き出して、それを実践していく。そして、それを振り返って加除修正し、再び実践していく。その繰り返し。
そう考えると、平和教育は人権教育、引いては学級経営にもつながりますし、1年や1か月に一度、その時だけやればいいというものではないことがわかります。

これからの平和教育が、平和を願うすべての子どもたちのためになるように。
決して平和教育で不登校になるような子どもが出ないように。

そう願います。

本日もお読みいただき、ありがとうございました。
ご感想・ご意見ありましたら、コメントいただけるとうれしいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?