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源氏物語を読みたい80代母のために 2

そもそも今まで読書をしていなかったのか?

母が、「何で今までもっと本を読まなかったんだろう。誰か私にもっと言ってくれてれば」というので、えっ私が散々本も漫画も薦めたじゃない、ていうか何だかんだ結構本読んでなかったっけ?と返すと、

「違う違う。もっと若い頃に読んでおきたかったの。子供の頃に誰かがうまいことすすめてくれてればって思って」。

なるほど。この歳にしてこの貪欲さ、流石は卓越した技能者(2016)にして黄綬褒章(2017)持ちの伝統工芸士(手漉き模様和紙)である。(あからさまな宣伝:タイトル画像も母の和紙作品)これ以上の何者になろうというのであろうか。是非、その調子でどんどん突き進んでいってほしい。

なぜ源氏物語?

何しろ時代を超えて多くの人々を魅了してやまない、日本随一の超絶ロングセラーだ。これまで生きてきて何度となくその名に触れたにはちがいない。福井県人にとって、舞台となる京都は仕事がらみでもプライベートでも身近だ。さらに作者の紫式部は(イヤイヤとはいえ)父の転勤について、一時福井県(武生の辺り:近所)に住んでいたというではないか。これはもう読むっきゃない。

ということで母の中で幾度目かの盛り上がりが来た2000年頃、私が紹介したのが、田辺聖子さんの「新源氏物語」。今となっては貴重な箱入り文庫本三冊セットである。(仏教系の本が多いのはお土地柄)

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これは原文をかなり端折りコンパクトにまとめていて、初めて読む人に易しい「源氏」だと思う。ただ、文庫本三冊というのが既にハードル高かったかもしれない。コンパクト、というのも単に他の訳者と比べてというだけだし、登場人物多すぎだし、名前らしい名前がなくて覚えにくいし、そもそも当時の身分制度や生活習慣や宗教観などある程度知っていないとわからない部分も多々あるしで、キャパ越えしてしまったものと思われる。

そういや「ひかるのきみ」を書き始めたのも「有名な古典だから興味がなくはないんだけど、あまりに沢山本が出過ぎていて&しかも巻数も半端なくて、手が出しづらい」という声を聞いたのがきっかけだった。いやいや、そんな敷居が高いものじゃないよー実はかなり下世話かつドラマチックで面白いんだよと言いたくて、田辺さんよりさらにざっくり&いい加減な感じで解説を試みたんだった。

自分の書いたものを抜粋するのも面はゆいが以下:「ひかるのきみ 壱」冒頭より

一 源氏物語って?

 源氏物語は、あらゆる少女漫画の原点であるといっても過言ではない。
 悲恋によって生まれた、容姿端麗・頭脳明晰・何をやらせても人並以上、の非の打ち所のない主人公・光源氏が繰り広げる数々の恋愛ストーリー。

 相手は人妻であったり、
 誰とも知れぬ街の女であったり、
 聡明な未亡人であったり、果ては
 亡き母にそっくりな義母、
 その義母にそっくりな少女、
 熟しきったお局様、
 落ちぶれた深窓の令嬢……
 シリアスからラブコメディ、メロドラマ、ホラーに至るまでジャンルは様々。女房さんたちの間で回し読みされていたということ、実在の人物や事件を下敷きにしていたりすることから、ある意味女性週刊誌、実話系読み物といった趣もある。要するに、わりと下世話なのである。

……てな感じである。適当きわまりない。冒頭の「桐壺」巻はあえて飛ばして解説のみとし、「帚木」よりスタートした(「桐壺」は後に改めて掲載)。訳文という形ではなく、平安時代の女房さんたちを大企業のOLさんと見做し、会話の中で諸々説明しつつ進行する形を取り、あくまで軽く読みやすく!を心がけた。更に「ひとりがたり」というちょいシリアスタッチな語り口も盛り込んだ。この多彩さが功を奏したのか、はたまた我が娘の手に成る物だからと頑張ったのか、判然としないがとりあえず母が一冊(~夕顔まで)読破したことは事実。しかしここまでは「大体ストーリーは知っていた」から読めたのかもしれない。これから先の更なる怒涛の展開、飽かずに読み続けられるか。自分の筆力も試されている気がして、かなりドキドキである。

まだつづく。

      ※「ひかるのきみ 壱」「弐」はこちら

      ※ブログ「もの書く日々」で連載中♪

「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。