病後の夫と結婚25年目に出かけた“新婚旅行”という名のドライブ。
2018年に夫が脳出血で倒れ、一時はどうなることかと思ったが、5年が経つ。
現在、本人は要介護者だが在宅で元気にしている。
足りないところは2人で何とかしながら暮らしています。カワコです。
当時、夫59歳。会社員。
仕事中に倒れ、救急車で機関病院へ搬送され入院。
発見当初は意識がもうろうとしており、ろれつが回らない。脳出血と診断を受け手術。
入院してから眠ったまま。
目を覚ました時には喜びしかなかったが、意思疎通ができない。そして立ち上がれない…寝たきり？
“これからどうなるんだろ…？”
本人の回復もそうだけど、これからどうやって生活したらいいんだ？
どう考えていいかわからない。
漠然とした不安だけが頭の中で渦巻き、どん底に落ちてゆくような気持ちだった。
そんな不安の中、院内のソーシャルワーカーさんから（いわゆる社会福祉士）急性期の疾患は2カ月しか入院できず、転院しなければならないと告げられ、相談に乗ってもらいながら次の病院の橋渡しをしてもらった。
その時にかけられた言葉
「今が一番辛いと思いますが、これから必ず良くなっていきますから！」
半信半疑だったが、その言葉の通りとなる。
転院先の病院は休む日など設けず、リハビリ漬けだった。最初にそう説明された。
5カ月間頑張った結果、入院前より滑舌も良くなり、会話もでき、不安定だけど歩けるようにまで回復した。
ひとえに本人の努力と、スタッフの皆さんのおかげと思う。
“在宅だなんて、夢だと思ってた…”
退院後は申し込みをしておいた小規模多機能居宅施設に通う。
私が送迎。出勤が早すぎ困っていたら、わが家の都合で受け入れを快諾してくれ、本当に助けられた。
慣れない生活から9カ月が経ったある日。それはゴールデンウィーク。
テレビを見ながらだったか、帯広の豚丼の話題になる。
「一度はちゃんとしたの、食べてみたいよねぇ。」
長いこと北海道に住んでいるが、本場のそれは食べたことがない。
すると夫が
「食べに行こう。遅ればせの新婚旅行だ！これまでお前に何もしてやれなかったし。」
え？え？え？え？え？
どういうこと？
なになに急すぎる。本気で言ってるの？
…耳を疑った。
ということは、私が車を運転する…ってこと？？
運転歴は27年。遠方への走行は距離にして、最大で片道100キロ位のレベル。
帯広のまで行くとなると、その倍の200キロ相当。
それはいいとして、あなたは要介護の人。
そんなに車に乗りっぱなしって大丈夫なの？？？
しかも言い出して、これからすぐ行こうって？？
迷ったが決定！
善は急げだ！
弾丸ツアーってこういう感じかな。
連休なので真ん中っ子が帰省中だったが、
「かれこれこういうことになった。行ってきます！」と、一方的に告げ出発！
いい天気！晴れてます。
行けるところまで高速道を使います。
上川町のコンビニでトイレタイム&買物。
層雲峡温泉を通り、山々の絶景を横目に走ります。何度か通ったことがあるが、いつ通っても怖い。山が今にも自分たちに襲いかかってきそうだ。
その先には三国峠。
この通りも晴れ晴れと山の中に光が差し、気持ちがいい。
くだりのカーブも楽しいけど、気を引き締め直す。安全第一。
上士幌のぬかびら源泉郷。士幌も通過。
行きはとにかく帯広の豚丼を目指します。
音更に入ってから、“豚丼”ののぼりがチラホラ。
“豚丼はもうすぐだ！”
最初のコンビニからノンストップで走ります。
ついに帯広に到着！！！
とりあえず駅周辺へ。
…
何の情報も持たずに2人で飛び出したので、有名店が分からない。
食べてみたいね！と採算語ってきたが、調べ上げて食べに行くタイプの人間ではない。
ここへ来て“失敗”を確信。
停車し、ネットで調べる。
駅近にもお店がある！
行ってみるとお客さんが並んでいる。
他の店も行ってみるが、やはり並んでいる…
“なんてことだ！”
夫は病後、立っているのもやっとやっとで、並んで待つなんて無理な話。
「どうしようか…」
せっかく来たのに豚丼にありつけない。
もっと、下調べしておくんだったよ…
後悔しかないけど、夫が言います。
「さっき、音更にのぼり立ってたよな？」
「え？いいの？戻ることになるし、帯広じゃないけど？？」
「いいよ、きっとそれっぽいと思うし…」
9時に出発して、すでに12時を回っている。
とりあえず遠出した証に豚丼だけは食べたい。
音更に戻り、お店に着いた。14時過ぎだった。
聞くとまだ大丈夫という。よかった！
早速豚丼を注文した。
のぼりは豚丼だったが、そこはラーメン屋さんだった。
気さくなおじさんとおばさんが応対してくれます。
そしてついに…
豚丼です！
おいしい。炭火のお味もします！
想像していた以上おいしい。
「そんな遠くから…！」と、お二人驚いていらっしゃった。ここら地域でブロッコリーラーメンというものがあると聞き、
「また来たいね！」と、夫と誓う。
また同じ豚丼だっていい。
ごちそうさまでした！
食べ終え、ゆっくりする間もなく、すぐに自宅へ向かい走る。
途中、上士幌の道の駅に寄る。
三国峠にも寄り、コーヒータイム。
お土産も買い、夜にはおうちに到着。
新婚旅行と呼ぶにはお粗末すぎるけど、いい思い出になった。
長距離ドライブも、ほぼノンストップで翌日まで腰背中が痛かった。
夫もつらかったと思う。
また食べに行きたいな。
うん、きっと行こう。
今度はきちんと計画してから行こう。
思ってさえいれば、私たちの旅はどこまでも続くんだ。
夫へ。
疲れるかもだけど
また、一緒によろしくね。
カワコ
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