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いま、起こっている未来

二つの世界:リアルとバーチャル

世のなかには、二つの世界があるらしい。ものの世界と認識の世界である。実と虚の世界とも言える。前者は、実在し、実体のあるいわゆるリアルなものの世界であり、後者は仮想、つまりバーチャルの世界です。わかりやすい例をあげると、あるときと場所の事件や出来事など現実の世界と小説や映画など虚構の世界のごときものです。関連して、「実と虚」は、実業と虚業、実像と虚像、実数と虚数などさまざまな分野で二項対立的な概念としても用いられています。

虚の世界は、かって実体の見えない、未だ明確な形をなさないので存在証明が難しいもの、いわば夢・幻(ゆめ・まぼろし)とされた世界でした。一方、虚の世界は、ひとのこころの問題を扱う領域でもあります。脳が作り出す心象や想像の世界も、また思考の世界も大切な人間の営みで、創造の原動力になっています。脳科学の進展によりこころの世界の解明が進み、AIの発展に伴いバーチャルな世界もリアリティを増し、いまや両者の融合が進んでいます。フェア精神を根幹とするスポーツの祭典、冬期オリンピック北京大会は、厳戒のコロナウィルス対策やドーピング疑惑などさまざまな課題があったが、開会式や閉会式ではバーチャル・リアリティ(VR)技術の先端を見せてくれました。

21世紀の世界の変化は、アナログからデジタルへの変化です。そして、リアルとバーチャル、実と虚の統合が時代読み解きの鍵となっています。

アナログ世代とデジタル世代

このような時代の潮流は世代間に大きなギャップも生み出しています。戦前世代はアナログ世代です。大人になって電話/テレビに接した世代で、一般にPCが苦手、キーボードに基本触らない、実在世界にリアルを感じる世代と言えます。

戦後のベビーブーマーは団塊の世代とも呼ばれていますが、わが国経済の高度成長期に成長し、子供時代に電話/テレビに接し、大人になってPCを触った世代です。アナログ世代後期とも言うべき世代で、バーチャルの世界を覗き、バーチャル世界に興味を感じるものの、情報と知識の核は、広辞苑と百科事典など書籍に代表されるリアルな媒体にあります。

これに対して、第二次ベビーブーマーはバブル崩壊時に子供時代を過ごした世代で、ガラケー携帯電話を経由して、スマホに馴染み、知識と情報の主体は順次バーチャルなメディアに移ったデジタル世代です。

21世紀に生まれたミレニアム世代は生まれたときからバーチャル世界に馴染むデジタル世代後期に属します。スマホ・PC・タブレット端末などが生まれたときから身の周りあり、知識/情報の多くをこれらデジタル機器から吸収している世代です。

未来はこの子供たちのなかにあります。いま、起こっている未来を見たければ、この子供たちを見るにしくはありません。人類は進化し、変化を続けています。昨夏の東京オリンピックではスケートボードで、また今冬の北京オリンピックではスノーボードで、日本のミレニアム世代が軽やかに、そして楽しそうに高く宙を舞い、メダルに輝きました。アナログ世代では考えられなかったボードスポーツの世界で、すばらしい技を見せてくれました。そして、この世代の子供たちはリアルの世界も、バーチャルの世界も瞬時に抵抗なく受け入れ、反応します。

いま起こっている未来

コロナウィルスのパンデミックは、わが国社会のシステムや仕組みのデジタル化の遅れを一気に露呈しました。そもそもわが国はデジタル化の時代に大きく乗り遅れていました。デジタル化は情報の一元化に、そしてネットワーク社会に不可欠です。行政などの業務資料、事務書類や資料のデジタル化の遅れは、コロナ禍に伴うさまざまな感染防止措置や補助対策の初動に大きな混乱と遅滞を招き、ワクチン予防薬の接種や病床確保に絡んでいまだに非効率で、社会的不公平が生じています。

見方を変えれば、コロナ禍はアナログ時代からなかなか抜け出せないでいたわが国のデジタル化を促したということもできます。社会の仕組みは、ポストコロナの時代に大きく変わるのではないでしょうか。デジタル化は情報産業の活字/音声/映像情報などの統合を、また産業/物流分野では企画/設計/工作/流通/販売/認証などシステム統合を促し、金融界もデジタル通貨が大きな話題となっています。

このような背景から、インターネットによる情報共有化は、ネットワークを介したものの売買、契約や決済などの取引の流れを変え、物販や商取引の主役はネット通販や電子商取引に代表されるeコマース(Electronic Commerce)にシフトしつつあります。そして、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS ;Social Networking Service)などのコミュニケーションのオンライン化が進み、データベースやアーカイブなどだれでも、いつでも、どこでも、情報の受け取りと発信ができるようになりました。

インターネットとAIの発展は将来のイノベーションの鍵となっています。実体の見えない夢・幻(ゆめ・まぼろし)からバーチャル・リアリティ(仮想現実)の世界へ移行し、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使ったスポーツ競技、つまりeスポーツが流行のきざしを見せています。

このような世の動きには、いつも光と影があるものです。デジタル化による社会の情報/ネットワーク化の動きは、権力と情報をもつ一握りの層を優位にし、情報操作によって世の中を動かし、一方、フェイクニュースの拡散やサイバー攻撃など、これまでの戦争とは全く質の異なる紛争が起こる可能性も高まってきました。

実虚の世界を統合してすばらしい世界が拓けるのか、あるいは、衰退の道を歩むのか、われわれヒトの進化に大きな分岐点がやってきているのかもわかりません。

写真:N.U. PC画面に見入る生後100日の乳児

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