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レストラン「グリーンズ」の改装

スギ材によるレストラン改装事業

昨夏、一般社団法人大阪府木材連合会のプロジェクトに参画しました。林野庁の「内装木質化等の効果実証事業」を受けたもので、ホテル、レストランやオフィスなど、住宅ではない施設内装に(国産)木材を使い、その効果を実証してエビデンスを得ることを目的とした事業でした。

この大阪府木材連合会のプロジェクトは、以下のような事項についてデータを蓄積し、検証することを目標にしていました。
1.杉木口スリット材の効果的な量・配置など、店舗内装の設計意匠や施工条件の検討
2.温湿度および室内空気質IAQ (indoor air quality)などの改装前後の室内環境の把握
3.利用客の室内環境に関する反応や印象についての検証
4.従業員の身体的、あるいは心理的な効果の検証

大阪天保山、海遊館近くの大観覧車前のロータリーに沿って建つベジタブル レストラン「グリーンズGreens」がプロジェクトに協力してくれることになった。建築意匠や建材、健康医学、木材学など、関連する幅広い専門家が集められ、レストランのオーナーと従業員の希望や意見を伺いながら協議を重ねた。スリット加工した吉野(奈良)、小国(熊本)、飫肥(宮崎)スギ材をふんだんに壁面に使い、さらに月桃紙(沖縄)を天井と壁面の一部に用いることになった。厚生労働省指定の揮発性化学物質(VOC)を含まない接着剤を用いるなど、ビニルクロス貼りの壁・天井であった元の店舗内装とは大きく異なる仕様となった。

調査には、改装前後の空気質を測るほか、温度・湿度を経時的に測定し、改装前後の従業員や利用客へのアンケート調査、従業員の活動量調査などをおこなった。半年間というわずかな調査・実証期間であったが、3月中旬にオンラインと対面での報告会を経て、報告書等が公表されることになりました。

調査の結果、わかったこと

レストラン店舗への杉木口スリット材の内装導入に関わる実証調査の結果、以下のような成果が得られています。
・利用者から、内装木質化により店舗のすっきり感やあたたかみ、くつろぎ感、お洒落さが高まったと評価された。
・杉木口スリット材からの香り成分であるセスキテルペン類の放散が確認され、利用者から香りの良さについても高く評価された。
・従業員の心理面への影響では、感情的な落ち着きと共に、内装木質化により疲れにくく、働きやすい環境になったことが推察された。
・心拍計による生理指標からは、レストラン内で勤務するスタッフは、内装木質化による生理的な心地よさを示す可能性が示された。

他方、利用者へのアンケートはコロナウィルス感染拡大の影響で回答数の見込みを大きく下回り、十分なデータが得られませんでした。幸い、アンケート調査には取り扱いが簡便なiPadによる方式を採用したので、レストラン経営者の了解を得て継続調査することになった。

経営者からは、「改装後のリピーターが約1割増加した」、「空気感が違う」とのコメントがあり、従業員や来訪者に好評であることの裏付けが得られたのはうれしいことでした。また、マスコミへの情報提供や報告会の反響が大きく、事務局や関係者への問い合わせや現地視察の希望がたくさんありました。

現在はコロナ感染下で外出も大変ですが、レストラン「グリーンズ」はランチのみを提供するカジュアルなセルフサービスのお店です。新鮮な野菜たっぷりの料理がおいしいことはもちろん、雰囲気もよいので、天保山に遊びに行かれたら是非一度立ち寄られることをお勧めします。

このような事例が引き金となり、スギ材による調湿効果や空気浄化機能、居住者の心身の健康に役立つ効果が広く認められ、住民が頻繁に立ち寄る施設や保育園・幼稚園などの子育て施設、介護施設など、幅広い施設建物にスギ材で仕上げた内装が普及することを願っています。

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