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私、妥協できないんです

結構仲の良い女友達の話だ。


私と彼女の相違点は数えるのも面倒になるほど多い。

何かと私を慕ってくれる彼女は、

社交的で愛嬌があり、見た目も清楚で可愛らしい。いわゆるモテ系の女性だ。

もちろん学生時代からこれまで様々な恋愛経験があるが、現時点で人に紹介できる彼氏はおらず、本人曰く「もう結婚できないかも」という悲観的視点を持っている。

傍から見ている分には、きっと引く手数多であろうし、

ひょんなきっかけですぐに彼氏くらいできそうなものだと思うのだが、

福岡在住の妙齢女子の恋愛事情はそう単純ではないらしい。


そんなある日。

久しぶりに顔を合わせた私に、彼女のプチ恋愛相談が始まった。

最近気になっている彼が、いわゆる「オレオレ系」であり、

わがままで気分屋な部分に翻弄されつつも惹かれている自分が嫌になる、という内容であった。

どうやら彼女の中には、結婚するなら「自分を大切にしてくれる穏やかな人」、恋愛止まりであれば「(オレオレ系含む)自分が追いかけたくなる刺激的な人」という定型があるようで、

最近結婚願望がフツフツと芽生えてきた彼女としては、

時間を無駄にしないためには結婚向きの人を好きになってお付き合いすべきだが、本能的に「恋愛止まり」の人を好きになってしまった、という「どうしようもない私」を嘆いているようなのだ。


そこで出てきた一言が、

「私、妥協できないんです」

だ。


この瞬間に私に芽生えた違和感を敢えて言葉にするとこうだ。


いやいや、そもそも「妥協して」人を好きになっている人なんて(私が知る限り)いないし、ただ単に自分のタイプの人を好きになったからといって「妥協していない」なんてヘンテコな解釈を入れる必要はありませんよ。

それに、あなたが結婚向きだとしている「自分を大切にしてくれる穏やかな人」を好きになることが「妥協」だと感じているとしたら、あまりにも世の中の男性をカテゴライズしすぎだし、「穏やか」=「退屈でつまらない」というレッテルを貼ってしまっているあなたの狭い了見をみせびらかしてしまっていますよ。

妥協なんてしなくても、「自分を大切にしてくれる穏やかな」魅力的な男性と本気で恋に落ちて結ばれている人もいるわけですが、ひょっとしてその人たちのことを「結婚したいがためにつまらない男性で妥協した女性」とバカにしているんでしょうか。

もう一つ言わせてもらえば、一人ひとりの個性と向き合っていれば、「結婚向き」「恋愛止まり」と選別しなくとも、あなたのタイプの人と自然と結婚という流れになるかも知れません。あなたのそのステレオタイプなものの見方は、目の前の彼を生きづらくしてしまうかも知れないんですよ。


とまぁ、このようなところ。


正直言って、既婚者である私に対して、

「結婚って妥協が必要ですよね」と言っている気がして、

何だかムッとした。


だけど、よぉく話を聴いてみると、

決してそれだけの話ではなくて。


彼女が「妥協」としているのは、

「結婚するために、”結婚向き”の男性と付き合う」こと、ではなく、

「結婚に向けて、”恋愛止まり”の男性の様々な弱点を受け容れる」こと、だったのだ。


つまり彼女が伝えたかったことは、

「私、結婚したいけど、好きでもない”結婚向き”の男性で手を打つなんてできないんですよね」、ではなく、

「私、結婚したいけど、当然ながら自分の好きなタイプは”恋愛止まり”の男性なわけで、その人のわがままや気分屋なところに寛容になって許すことができないんですよね。だから結婚できないんです」、ってことだった。


なんと、既婚女性をバカにするどころか、

自らを客観的に卑下する内容だったということだ。


「妥協」という言葉に対して「甘んじる、手を打つ」というイメージだけを抱いていた私にとって、彼女が同じ言葉に抱く「歩み寄る、許す」という感覚は非常に新しく斬新だ。


何より、「妥協」という言葉の定義を彼女と共有できていなかった私が、

彼女を思い遣ったうえでのアドバイスができるはずもなく、

違和感や抵抗感が芽生えることになってしまったということだ。


何事も「定義」は重要だとは言うが、

こんなプチ恋愛相談の内容から実感するとは思わなんだ。

ごめんよ。

奥深いよ、「妥協」。

#恋 #言葉 #女友達


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