ワンピース

わたしは幼い頃からピンクが嫌いだった。今は黒色が好きだ。ピンクも日によっては好きだけど。


小学四年生の時、母親と洋服を買いに行った。あの時わたしが何色の服を選んだかはもう忘れたけど、青か黒だったと思う。それを跳ね除けて「これ試着してみて」と真っピンク色の服を渡してきた。嫌だった。結局遠足にはそのピンク色の服を着て行った。窮屈だった。

小学六年生の時、母親が洋服を買って来てくれた。嬉しかった。何でもない日に母親からプレゼントを貰えることがすごく幸せではしゃいでいた。袋を開けると淡い無地のピンク色が出てきた。その時の感情はもう覚えていない。わたしにはすごく不似合いだったことだけ覚えている。


それでも、小学四年生の時も、小学六年生の時も、その服を一番着ていた。好きじゃないのに。嫌いなのに。母親に好かれたかったのだ。似合わないピンク色を着て学校に行っていた。きっと友達も似合わないと思っていたんだろう。いっそのこと言ってくれればよかったのに。


今はもう母親と洋服を買いに行く事もなくなって、自ら買う服の色は黒ばかりだ。でもそれでいいし、それがいい。前に友達に「湖愛は本当に黒が似合うね」と言われた。自分でもそう思う。鮮やかで華やかな色は似合わないし似合いたくない。暗い色でいい。

でも時々鮮やかな色をした洋服を着ると母親が喜ぶから、未だに何着か母親の為の服を持っている。


わたしはきっと好きで縛られているんだと思う。

#ミスiD #ミスiD2019

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