卒業証書
「え、他にメンバーいるんだ、入院中?」
えみるちゃんとの出会いって、そういう、ふと気づいたそんな時だったと思う。
しかもめっちゃ可愛いし好みじゃん、麻雀も好きなの?興味出るなぁ、いつか会ってみたい。
夢現シンクレティズムに興味を持った頃、えみるちゃんはまだ入院中で、たまにスタッフさんがツイートしてくれてるぐらいだった。
それでもるのちゃんにならんで暫定的推しとするくらいには、好きになった。
退院の日は突如訪れた。
やっと、ついに、あのえみるちゃんが。すごく嬉しかった。それと同時にこれからちゃんとえみるちゃんという人柄に触れられることが楽しみだった。
結果的に言えば、パチスロ大好き逆張りニコ厨オタクだった。私はさらにそんなところを気に入った。私もパチスロには触れたことがあったし、なにより今でもプレミアム継続しているような物好きなタイプのニコ厨。アイドルというより、もはやオタク友達のような感覚すらあった。
初現場の時には、えみるちゃんはたまに活動参加するぐらいには回復していた。やっと推したちに会える緊張と喜び。
特典会。なんか初めて会った気がしない、とお互い言い合うくらい、すぐ仲良くなった。
ちなみに「もしかしたら男かも」と思われてたらしい。パチスロに詳しい女の子って珍しいから。この名前このアイコンで、言わずとも女の子と思われてきたので、なるほどと思うと共に面白いなと思った。大丈夫、私ネカマじゃないよ。
どうにもできない要因で現場に頻繁に通えるわけではなかったが、これから色んな思い出を作っていける。そんな考えは割かし早めに砕けた。
えみるちゃんが、ゆめうつを卒業する。
それは勿論、ショックで悲しかった。卒業発表の瞬間は私は現地にいなかったが、もし行ってたら呆然としたまま帰ってきただろう。歴も浅く、入院もありなかなか接する機会が他メンバーより少なかったぶん、本当に惜しくて悔しかった。
でも、体調も安定していない中で、リスクや申し訳なさを感じながら活動を続けるのもそれは大変だったろう。卒業を決めたことに何も文句は言えなかった。
えみるちゃんは「自分はグループアイドルじゃなくてソロの方が向いてる」と半ば自虐しながらも、これで最後だからと卒業に向けて着々と準備を進めていった。
私も卒業ライブのチケットもしっかり取った。でびるーぷ(秋葉原にあるコンカフェ。アイドルと同時並行で在籍していた。)の卒業にも駆けつけた。
えみるちゃんとるのちゃんのツーショットチェキは、今でも大切な宝物。最初で最後の、推し2人揃ったチェキ。コンカフェ自体初めてで緊張していたものの、とても楽しかった。帰り道、降りる駅を間違えるくらいには。
「超卒業式 〜えみる散る〜」
ついにこの時がきた。超えみるちゃんの卒業式。
最前列、ペンライトを持ち、この日のために覚えてきたコールを脳内で確認する。
8人が揃って出てきた時、あの瞬間、一生忘れないだろう。
卒業ライブとしては、かなり珍しいタイプになるのではないだろうか。
本当にえみるちゃんのやりたいことをやって、なんならやりたい放題で、ジークジオンをえみるちゃんという名前と同じくらい何回も叫んだ。
しんみりした空気はあまりなくて、えみるちゃんもオタクも楽しんで終わった。
強いて言うなら、特典会の時、上手く言葉が出てこなくて、興奮状態のままとにかく喋ってしまった。名前を名乗ることすらしなくて、そこは後悔。更にまた帰りの電車乗り間違えてガチ凹みした。でも、えみるちゃんのチェキを改めて見たら、ちゃんと「めろち」と書かれてた。三度目ましてだったのに、認知されていたことが嬉しくて、ようやくその時嬉しさで少し泣いた。
それから。
超えみるはただのえみるになった。
インターネットアイドルとして活動していく、でも特に何するとかは決めてない。そんなところもえみるちゃんぽくて。
えみるちゃんは毎日のようにスペースを開いて、色んな話をしてくれた。
いつからか、そのスペースを聞く頻度が減った。リプすることも少なくなってしまった。
なんでだろう。大好きな推しなのに、いまいち気分が上がりきらない。その理由を、ずっと考えた。
ある時、いつの間にかえみるちゃんのアカウントが消えてしまった。元々ちょっと病むことも時々あったけど、完全に消えてしまうのは初めてだった。
少しして、サブ垢の方だけ復活した。
もうえみるとしての活動はしないこと。
心配しないようにしばらくアカウントを動かすが、転生する時は消すということ。
それらを知った。
その時、ようやく理由がわかった気がした。
あの卒業式の時、私も燃え尽きたのだと。
超えみるがえみるになったように、私の中でもどこか一区切りついてしまったのだ、と。
そして今。私の推しの「えみる」ちゃんもいなくなった。
そして、普通の可愛い女の子に、あなたはなった。
卒業だと思った。好きだしその気持ちは変わらないけど、えみる推しだった私から、卒業する時がきたのだ。
日本のどこかにいる、可愛くてパチスロ好きでお喋りが面白い女の子へ。
今までありがとう。
あなたがあなたの望む形で幸せでいてくれたら、そう願っています。
もし、また違う存在になった時、また出会えたらよろしくね。
また、どこかで。
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