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中小企業のための動画マーケティング 第11回【失敗事例:Youtubeチャンネル運営の難しさ】

もう結構前の話ですが、心に引っかかっている失敗例をご紹介したいと思います。



【クライアント】

中小規模のアパレルブランド企業様

【ご依頼内容】

業界全体の売り上げ減少の影響もあり、
今後店舗での販売だけでは厳しくなっていくことが予想される中で、
自社ECサイトでの販売を始めたいと思っており、
そのサイトにつなげるYoutubeを用いたプロモーションを行なっていきたい。

依頼内容としてはYoutubeについてのノウハウが自社にないので
運営と動画制作をサポートしてほしい、とのことでした。

条件などを詰めていき、最終的な受注内容としては

撮影ディレクション、運営ルール作成。
また、Youtubeチャンネル(Youtube Studio)の使い方、サムネイルの作り方、デザインフォーマットの作成などを
将来的に内制していけるようにOJT形式でレクチャーする。

ということになりました。

失敗の予兆

今振り返るとわかるのですが
初回の打ち合わせ段階からとある違和感をずっと感じていました。

それは
社長がどこかで得た情報を全てのように、物事を決めて進めようとしている
ことです。

打ち合わせの冒頭、話を伺っているときに
競合のチャンネルをいくつか参考に出してきて

「同じことをしようと思ってます。テイストも同じ感じにして。
 それで登録者数も再生数もこれくらいいけばなと思ってます、」
「デザインはこれかこれ、どっちにしようか迷ってるんですよね~」
「撮影はこうこう、このカメラも撮影用に買ったんですよ~」

など、社長の頭の中ではもうやることと結果が決まっているようでした。

その都度
「見た感じだとターゲットも違いますし、
 どういうコンテンツを揃えていくか考えていきましょう。」
「登録者数とか再生数はかなり時間がかかると思った方がいいですよ」
「デザインもブランドイメージに合わせてそこから考える方が良いと思いますよ」

など軌道修正をしようとする発言は入れていたのですが
「そっかー、でもまあこれやったら売上は伸びるよね?」

など、少し一方的だなという印象の会話が続きました。


進行中

次の打ち合わせではいきなり
「これ作ってみたんだけどどう?」
「担当は彼にしたからあとは彼と進めてね」
など前回の打ち合わせ時には無かった話からスタートしました。

おそらく社長がまた何かを見て「これだ!」と思うものがあったのでしょう。

当時の私は心のどこかで一応言うことは言ったし、
依頼内容だけを集中しよう、他の範囲は自分の責任じゃないし、と
振り回されつつも自分の任務に集中することを心がけることにしました。

モデルを入れての撮影やライブでは

・照明の位置
・抑えておきたい画角
・モデルさんに付けてもらう動き

などをレクチャーし、その後社長の意向を汲みながら

・デザインワーク、テンプレートの作成、
・編集〜書き出し・アップロードまでのフロー
・チャンネル自体のデザインや運用ルール、再生リスト

などを整えていきました。


担当してくれた社員の方はすごく真面目に取り組んでくれたので
ここのワークはすこぶる順調でした。

ですが、ここも今振り返ると、言われるままに対応した結果、
チャンネルのコンセプトはいろんなものが混ざってしまい、
当初考えていたものとは違う方向に進んでいたのではないかと思います。


運営開始〜契約終了

そしていよいよ運営をスタートするタイミングで社長が登場します。

「これ再生数どれくらいいく?」
「いつ頃売り上げにつながる?早くしてほしい」

「これだけでいきなりは全然はいかないと思います。
 チャンネルとか動画に誘導する仕組みがないと・・・。」
「以前に話しましたが時間がかかるので成果は最低でも半年単位で捉えてください」

みたいなやりとりをしたのですが、いまいち伝わっていない感じがしたので
ここで一つ提案を挟むことにしました。


このチャンネルをどう見てもらうかについてです。
カタログ・タグ・フライヤーにQRコードを貼ったり、SNSで地道に紹介していくなどなど。


しかし、アパレル業界は1年のスケジュールで様々な物事が連動して動いているということで、
今何かを考えても実際にそれが運用されるのは半年後のものになるということを
この時に知りました。

ではその半年後に向けて準備を続けつつ、
今はコンテンツの拡充と日々の皆さんの活動でコツコツファンを増やしましょう。

というところで一応の話はまとまりました。

そこからは社員の方と二人三脚で制作を進めていき、
次のシーズンの撮影~動画作成に差し掛かった時、

社長から「話したいことがあるから来てほしい」と連絡が。

要約すると

・再生数がいきなり伸びないとは聞いていたが、本当にこんなに伸びないのは困る
・ブランドの再起をかけて始めたのにこれではやる意味がない
・これまで成果という成果も出てないのでここで契約を打ち切らせてもらいたい

という話でした。

正直そんな予感はあったので特段驚きもありませんでしたし、
おそらくこの状態で続けても良い結果にはならなかったと思います。

【原因】

最初の段階から
社長と私の認識が違ったまま案件がスタートしたこと
一番の原因だったと思います。

社長は人気のチャンネルを真似て運営すれば成功するはずだという思考で固まっていたこと。

私は今回の案件はYoutubeチャンネルの運営のサポートのみだったので
線引きをしてしまい、
本来の課題・目的に対して意識を向けなかったこと

当時の私はまだマーケティングについて本格的に学んでおらず、
映像制作者としてのみ仕事を請けている意識が強かったので
売上につながる全体の流れが気になりつつも自分の役割はそこじゃないと、
むしろお節介になるなら言わないでおこう、くらいの認識でした。



そして結果、全員が不幸になった案件になってしまいました。


【学び】

最初に相談をいただいた時点で

・Youtubeを導入するだけでは効果が得られないこと
・それを活かした仕組みを同時に作る必要があること
・Youtubeチャンネルの性質と役割について
・社員を含めた全員がやり抜く覚悟を持つこと

というこのクライアントの本来の目的の達成に必要なものを明確に伝え、
理解してもらった上で、それでもやるのかを問うべきだったと思います。


また、ズレがありながら担当が別につき、
意識の溝が深まったまま案件を進行させてしまい、
修復しなかったことも大きな原因だったのだ思います。

ですが、この経験が痛烈にマーケターへと意識を向けました。

かっこいい映像や大掛かりな映像を作るだけでは
お客さんの本当に必要としているものを満たさない、

その映像の前後、使い方や販売への繋げ方までを作ってこそその映像も活かされ、お客さんの求める成果に繋がるんだと思うようになり
マーケティングを改めて学び、映像マーケターとして活動するようになりました。

そんな自分にとって分岐点となった失敗例のご紹介でした。


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