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駅ナカマンション波昂し/駅近から駅ナカへの大転換

「慌てず急げ」とは古代ローマ帝国皇帝アウグストスの口癖。
アウグストスの義父であるカエサルが性急に皇帝位に就いたがため非業の死を遂げた。
このことをアウグストスは戒めとして、慌てずに地歩を固めつつ皇帝位へと近づいてく。

だからアウグストスクは、
「慌てず急げ」を座右の銘としてローマの元老たちと粘り強く交渉し、盤石な状態で皇帝位へと最終的に上り詰めることが出来たのだ。

本日はこの「慌てず急げ」を切り口に、
「駅中型えきなかがたマンション」略して「駅ナカ」という新基軸について語ってみよう。

マンション購入という「慌てず急げ」

マンションというものは実に厄介な存在だ。
急いで買わなければ売り切れてしまうし、かといって急いで買ってしまうとトンデモナイ高値で掴まされてしまう。
自分たちが6000万円で購入したマンションを、隣人さんが5000万円で買っていたなんてことは日常茶飯でアルアルだ。

「人生は一箱のマッチ箱に似ている。慎重に扱うのはバカバカしいが、ぞんざいに扱うのは甚だ危険である」
とは芥川龍之介の言だが、マンションの購入もマッチ箱に似ているのではないか。
あまりにマンション購入にばかり頭がいってしまうと、日常生活が成り立たなくなる。
かといってマンション購入をいい加減にやってしまうと、いわゆる一生の買い物が一生の反面教師になってしまう。


だから、
マンション購入ほど「慌てず急げ」という戒めを念頭に置いて行いたいのだ。



コンパクトシティという「慌てず急げ」

今、駅前直結徒歩0分というマンションが俄然脚光を浴びている。
確かに便利だ。
寝ぼけたままで駅に辿り着いて、寝ぼけたままで都心に出れる。
しかも駅前直結マンションはタワーマンションかそれに類するものであることが専らなので、スタイリッシュで「そこに住んでいる」ということがステータスになりうる。
それが二十階を超える高層階ともなると、夜景を眺める高揚感と景観の美しさたるやそれ至れるかなである。

これから高齢化が進行し、駅前に人も施設もモノコトもあらゆるリソースを密集させて効率化をはかる潮流はまず間違いはない。
いわゆるコンパクトシティーというものが現在進行形にて具現化されている。
その象徴が「駅前直結マンション」であり「駅近マンション」ひいては「タワーマンション」なのだ。



「駅中型マンション」という新機軸

だが駅前直結マンションないし「駅近マンション」の次に大急ぎでやってくる何か、その足音がワタシには確実に聞こえる。

それが、
「駅中型マンション」だ。
略して「駅ナカ」である。
いや「マンション内蔵型ステーション」という呼称も捨てがたい。
駅中型マンションとはその名の通り「駅の中にあるマンション」のことである。
駅改札の中にマンションがあり、改札をとおるまでもなく電車に乗り込むことができる。
真実の「徒歩0分」がそこにはあるのだ。

「駅中型マンション」
「マンション内蔵型ステーション」

どちらにしても、そのコンセプトは、
「もはや駅の改札通過すら生ぬるい」だ。

「マンションを出たらそこは駅のフォームだった」の世界である。
しかも電車を乗り放題にするという手だってある。
電車版・サブスクリプションだ。

マンションを買ったら電車が乗り放題になる。
これはなかなかに面白いのではないか。
もはや都心では車という移動手段が下火になって久しい。
移動手段が車から電車へとルネッサンスげんてんかいきしている訳だ。

だから、
だからこそ、
「駅中型マンション」ないし「マンション内蔵型ステーション」への強いニーズが見込めるのだ。



変わりゆく最寄駅のレゾンデートル

駅直結マンション華盛りの現在でもそうだが、
この駅中型マンションが流行トレンドになったらば、最寄駅の意味合いがさらに大きく変わることになる。

なぜなら、
最寄駅から徒歩で離れた郊外に行く意義が希薄になるからだ。
むしろ、最寄駅ではない他の駅に行くケースの方が多くなるだろう。
こうなってくると、これまでの「最寄駅で生活を完結させる」というライフスタイルはまったく成立しなくなる。
新たな「駅中型マンション時代」においては、
「最寄駅以外で生活を完結させる」というまったく異なるライフスタイルになるはずだ。




駅前の再開発不要という駅中型マンションのメリット

駅前の再開発などが盛んに喧伝されているが、この駅中型マンションが主流になれば、
駅前の再開発は無用の長物になる。
というのも、「最寄駅以外で生活を完結させる」という新ライフスタイルがメインストリームになり、駅前の再開発をするコストはその地方自治体にとって無為になるからだ。



自治体逆転の大チャンス

今や人気駅と不人気駅がクッキリと鮮明に分裂しつつある。
だがしかし、この駅内蔵型マンションは不人気駅や不人気な地方自治体にとって大逆転のチャンスを運んでくる。

どういうことか?
説明しよう。

先ほど述べたように、
駅中型マンションは、最寄駅の施設整備を必要としないライフスタイルを人々に提供していく。
つまり駅中型マンションは、駅前ならびに地元自治体による整備運営と切り離された存在になるのだ。

駅中型マンションの住人は、
他のステーションだったり地方自治体が整備した施設を利用すれば事足りるからだ。



「人気の町 No. 1」が一気に凋落する訳

ここまで述べたように、
駅中型マンションには「最寄駅の存在意義をガラリと変える」力がある。
最寄駅ではなく、他の駅と他の自治体の設備を利用するライフスタイルへと人々を誘う。

こうなってくると、困るのは今「人気の町ナンバーワン」を誇示している自治体ないし駅だ。
なぜならば、整備した施設を他の駅からやってくる人々にフリーライドされるだけだからだ。

換言すれば、
それをこそ、この「駅中型マンション計画」は狙っているのだ。

だから、
だからこそ、
この駅中型マンション計画は、
不人気駅や不人気自治体の、逆転の起爆剤となり得るのだ。

これは「人気の町No. 1」が凋落することに他ならない。



駅中型マンションによる大逆転近し

 「慌てず急げ」


この「駅中型えきなかがたマンション」
略して「駅ナカ」という新機軸はまだ数えるほどしか存在しない。
いや意図して存在させているケースは皆無かもしれない。

だがこの駅中型マンションが具現化すれば、
現在の地方自治体パワーバランスは一変急変することになる。

だから読者が「いま住んでいるところはあまり人気のない駅だから・・・」と思っていても落胆しすぎることはない。

コンパクトシティの潮流が強くなればなるほど、
駅前への施設密集度合いが強くなるが、
それと同時進行で「最寄駅離れ」、が進行する。

そして、
いま立派な最寄駅前施設を誇っている自治体が「フリーライドされて不遇をかこつ」時代がやってくる。

これが筆者の見立てである。

要はいつの時代も、
「慌てず急げ」で生きていけば良いということだ。



ありがとう。
では、また、
慌てず急げで逢いましょう。

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