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腎臓ガン、チューインガムをかみながら(第1話:健康診断・検査じごく)

「ひとってさ、よそ行きの一面みたいなので生きてんじゃん、そこだけで付き合ってるとなんか味気ないっつーかアタシはいまいちなんだよね。」

「ほら、外向きじゃなくてもっと内側を見たいわけ。ほらアタシらの周りには色んなタイプの人がいるわけじゃん。まぁそればっかりでも気持ち悪いからほどほどがいいんだけどさ。」

僕は、とっておきの話をはじめてするときには相手を選ぶ。ウソのないリアクションを返してくれるひとが相手じゃないとうまく話せない性格なのだ。だから、他のひとが同じ話を知るころには僕にとってはとっておきの話ではなくなっていることが多い。

約束の時間10分前。僕は早足で新橋を歩いていた。
とっておきの話を両手いっぱいに抱えて。

待ち合わせの喫茶店は古そうなビルの1階らしい。ぼくはずいぶんうろうろした結果、どうにもこうにも店が見つからなかったので、一度タクシーを捕まえてワンメーターでなんとか行ってくれないかとお願いすることにした。焦りかイライラか、じんわり背中に汗を感じる。

「すぐ目の前ですよ、あれ、見えませんか?ビルの1階」

運転手さんはあきれた口調で指をさす。ぼくは片足だけタクシーに乗りかけた姿勢のまま振り返ると、小さな入り口が見えた。

なんでやねん。とりあえず良心的な運ちゃんでよかった。

すっと全身の熱が冷めていく。やれやれ、そこまでして約束の時間に間に合わせたいのはきっと親譲りの性格だ。子どものころ、車の助手席で、キッチンで、同じようにバタバタしているおかんの姿が思い出された。くそ、もっと気楽に生きられればいいんだけどさ、そうはいかず40歳を迎えてしまったのだった。

一連のバタバタで汗をかいたので、上着を脱ぎながら数歩先の小さな入口に向かって歩き出す。冷たくて都会臭い新橋の風に笑われている気がしてなんだかむかついた。上着を肩にかついで早足で向かう。

小さな入り口のドアを開けると鼻を抜ける空気が変わった。喫茶店のにおいだ。テーブルに置かれたビンに大粒のざらめ、読みかけの週刊誌に、文字盤のかすれた時計。あかりを落としているので、それらがぼんやりと絵画のようにも見える。さっきまでのイライラはどこへやら。

ぼくは、いかにもなオーラにのまれながら店内を進んでいくと、一番奥の席に知った顔を見つけた。『いずいず』である。短髪でモノトーンな装いに大きめのコート。いつもとかわらないニヤニヤした表情はすでに何かを語り始めている。いわゆる『地元の連れ』感が出過ぎていて最高なのだ。彼女は早く来いと言わんばかりに大きく手を振る。渋谷の居酒屋で見慣れた仕草やん。

「おーごめんごめん」

「いやーちょっとーアタシの話、聞いてよー」

彼女は僕がイスに座るのを待たずして、話し出す。はじまった。なにかが起こったに違いない。話題は仕事。どうやら新しいお仕事が増えて、うれしかったり、大変だったり、いろいろあったらしい。ちょいちょい不満を吐露しているように見えて、表情が明るいのが彼女らしかった。さすがアーティストやなぁ、感情が爆発しとる。

「と、とりあえず上着脱ぐわい、ええっとメニューは」

「メニュー、はぁい、こちらですよ」

絵本の中から飛び出したようなやわらかい雰囲気の老夫婦がこちらの様子に気付いて、奥さんと思われる女性がメニューを出す。

所作が美しい、日々丁寧に生きていらっしゃるんやろなぁというのが想像できる。カウンター越しに見えるマスターは特にこちらを気にすることなく、誰かのオーダーを淹れている。薄暗い空間にふんわり湯気が立つ。

「ね、いいでしょ、このお店」

ぼんやりしかけた僕の脳みそにコツンと一言。それ、今言おうとしたんだけど。わかりやすかった??心の中を見られているような感覚にざわっとしたわ。

「おお。さすが、違いのわかる女やなぁ」

しばらくして、ざわざわをかき消すかのようなほっこりした香りを連れて珈琲が目の前にやってきた。なつかしい。ずっと小さかったころ、日曜の朝の空気。

「どう、ここの珈琲??」

そっと一口、カップに触れるや否や、彼女は僕を見る。

「うん、なんか濃厚というか、深いというか」

語彙が足りない僕はありきたりな言葉で味を語る。

「そうそう、そうなのよ。ウイスキーをロックで飲む感覚に似てるかな。あれってひとによっては強すぎるとか濃すぎるとかいう人がいるんだけどさ、アタシはこういう感じが好きなわけ。いいでしょう」

「うん、そういや僕もウイスキーはロックが好きかも」

「でしょ、でしょう。アタシもそうなのよ。」

たしかに、一口飲むと深みのある香りと味わいが口の中をぶわっと変えてくるようなそんなインパクトがあった。僕の好きな系統の味だ。

「…で、例の話なんだけどさ、どんな感じなの?けっこうヤバイの?」

「あ、そうそう。何から話せばいいのかな」

小さな喫茶店の一番奥の席、小人のように小さくなりながら深炒りの珈琲を味わう。

この薄暗く、ほんのりあたたかい空間は僕の緊張を解いてくれた。



僕は腎臓ガンになった。



近くて遠い病院までの距離

ガンになるひとの多くは「まさか自分が」というタイミングで発病するらしい。でもさ、まさか自分が、ほんとにそう思った。

きっかけは健康診断。ぼくのいる会社では40歳からは人間ドックの受診の補助金が出るんだけど、これまで大きな病気をしたこともなく、毎週のように筋トレしてジムに通うようなおっさんだったのでまぁ受ける必要はないだろうって思っていた。それがアカンかった。

ぼくは注射が大大大きらいである。健康診断の採血は毎回ぶるぶる震えながら受けている。

「気分が悪くなったら教えてくださいね〜」

これも毎回声をかけてもらうと思うんだけど、ぼくは注射の時間は息をとめているので正直なところ常に気分が悪い。でもうっかり伝えて打ち直しとかされたら死ぬほどいやなのでガマンしてきた。(たぶん気分が悪くなるってそういうことじゃないよね???)

そんな感じなので、内視鏡?あのオエっとしそうなやつは死んでも受けたくないと健診そのものを拒んでいたのだった。ちょうど春に親知らずを抜いたときは注射、麻酔、縫合に大騒ぎした。見えてはいけないものが見えてしまったような記憶がある。

妻「ほら、内視鏡も大腸内視鏡も全身麻酔で寝てるうちにやってくれるところもあるから楽だよ~」

そうそう、妻は僕とは正反対の人間だ。医療業界で研究者をやっており、毎年人間ドックを受けて、その他にも色んなオプションをつけて体にカメラを入れまくるのを研究のごとく徹底的に行う。何事も抜けもれなくやっておきたいタイプなのだろう。ことあるごとに僕にも検査をすすめてくれるのだ。

「そろそろ人間ドック…(以下略)」

体感で5万回くらいはこの言葉を聞いただろうか。妻の言葉は世にも恐ろしい呪文と化していた。しかしながら、コロナ禍で家族と過ごす時間が増えてきたし、この不毛なやりとりが続くのもなぁ。

そんな日々が続き、ぼくはついにPCで検索を開始したのだった。

『人間ドック 痛くない 病院』

病院を選ぶ基準が浮かばないので、ずらりと並ぶ検索結果から、近所の病院で大きくて琵琶湖の近くの市民病院に電話をかけてみる。景色も良さそうなところを選んだ。少しでもモチベーションがアガる場所にしたい。

「あのー人間ドックなんですけど、今からなるべく早く受けられる基本メニューってどんな感じすか??」

病院の方は慣れた口調で対応してくれる。

「そうですねー胃の検査はバリウムと内視鏡があるんですけど…」

きたな、内視鏡のご案内。緊張が走る。

「内視鏡を入れたければ3ヶ月先になりますねぇ」

おほっ。おほほほほほほっ。
良い感じの言い訳が脳内に降りてきた。

「ああ、内視鏡はすぐにでできないのですね。残念、残念だなぁ(いえーい)しょうがないのでバリウム選択でいきたいと思いまっす。予約お願いしまーーす」

マジでこんな感じで電話した。

日程はそのままの勢いで決めた。平日の午前、検診後には完全に気力を失うだろうことを想定して有休も申請できる日を選んだ。できればご褒美も欲しいので近所においしいケーキ屋でもあればと思ったが、あいにくなさそうなので院内の一番うまそうなランチを食べよう。

それからというもの、ぼくは検診当日に向けて調整を開始する。お酒、塩分を控えて体調を整えるべく歩いてみたりもした。ちょっとでもいい数値でフィニッシュしたい。恐ろしい検査を乗り切った結果、再検査とか言われた日にはショックでぶっ倒れそうだ。ジムの体験トレーニングにも行った。検査に向けては強靭なメンタルも必要だろうから。

そして、数日後。いつものあれがやってくる。

「ほらほら、健康に気を遣うのはいいんだけどさ、やっぱ人間ドック行ったほうが良いと思うよ~」

「ああ、それなんだけど。申し込んだわ(キリッ)」

「ん??んんー??ほんとに??内視鏡は??」

「3ヶ月以上待ちでできないらしい。残念ながら涙をのんでバリウムで勘弁してやろうと思ってる」

「ふーん、内視鏡じゃなきゃわからないものがあるから早いうちにね」

「そうだな。(縁があればな)」

呪いがとけた瞬間である。まだ半分だけど。

まぁバリウムで体を病院に慣らしてから内視鏡とやらに向き合おう、それからでもおそくない。と検討を始めることを決めました的な発表に妻も納得したようなので、一件落着。ぼくは心の中でスキップしたのだった。

地獄の人間ドック、そして

ここまで書いておいて拍子抜けするかもしれないけれど、人間ドックはびっくりするくらい穏やかに進んでいった。面白くもなければオチもない。なにしろ朝食を抜いて、水も飲まずにスタンバイするので、脳みそが全く動かず終始ぼーっとしていたのだ。おまけにマスクの中がむれてメガネは曇るので視界がリアルにぼんやりする始末。

ぼくは専用の検査服に着替えてワキや下半身をスースーさせたまま、院内の地図を片手にひたすら検査室を行き来する。スマホもロッカーに置いてきたので、待ち時間は口をぽかんと開けて窓の外を眺めていた。外は寒そうだ。

結局ブルブルふるえながら迎えた採血は先生がやさしくて痛くなかったし、採りやすかったわよとほめてもらえた。うれしかった。検尿したり、お腹をエコーでぐりぐりしたり、先生と会話をしていると小学校の保健室を思い出してエモさを感じたくらいだった。病院のひとはやさしいなぁ。

うわさに聞くバリウムについても事前にネット検索しまくって『バリウム コツ』みたいな情報を読み漁っておいたのでなんとなくいけそうな気がしていた。この空腹トリップ中のカラダとメンタルのうちに終わらせてしまおう。

ちなみにバリウムは『お腹の中を膨らませる薬をいかに早く飲み込むか』が重要らしいので、はじめの白い粉をなるべく舌の奥にのせて一気に水で流す戦術にした。イメージ通りに粉を飲み込むと必死にゲップをおさえながら勝ちを確信した。

バリウムの一気飲みは酔いつぶれたときに水分を一気飲みするようなわりと慣れたしんどさだったので無事にクリア。のんべえでよかった。若き日のじぶんに感謝したい。台の上では横になったりひっくり返されたり、不思議な世界を味わった。

内視鏡よ。またどっかで会おうぜ。

そんな気持ちで病院の食堂でランチして人間ドックは終わったのであった。

…いや、終わってない。ここからがメインの話で、数日後に帰ってきた人間ドックの結果は要精密検査なのだった!

腎臓になにかあります。精密検査受けてください。
胃になにかあります。検診を受けてください。

ビビるくらい怖そうな漢字いっぱいの検診結果がやってきた。腫瘤、腫瘍、みたいな字が並ぶ。肝臓…じゃないよね。腎臓って漢字は久しぶりに見たので正直読めなかった。じんぞう。場所もわからなければ大きさも知らなかった。確かおしっこに関係する臓器だったと思う。中学校で教わった。そんな感じだ。

やべー、また病院に行くんか…

ぼくはなんとなく検査結果の表記が怖かったのでそれ以上NETで調べたりせず、きれいな(空っぽな)脳みそのまま病院に向かった。漢字の羅列って怖いよね。漢字を考えた人たちはほんとすごいよ。

場所はだいたい覚えたので、車で向かう。なんとなく、好きな音楽をかけながら。冬の彦根は寒いので暖房をMAXにするんだけど、そうすると送風の音がうるさすぎて音楽が聞こえないので厚着して暖房は弱めにする。いつもはガムを噛みながらなんだけどな。そのまま検査の可能性があるので、しゃかしゃかボトルをふって匂いだけかいでおいた。

入り口で消毒を終えると、まずは内容が軽そうな(漢字で判断)内科に向かう。朝一はひとが少なくてスムーズだ。数分で声がかかり、早足で診察室に入るとイケメンなお医者さんが登場した。

「検査結果を…あーはいはい。ピロリ菌がいるようですね、胃の状態を確認するので内視鏡検査を受けてくださいね」


はい?



ないし??きょう??



えええええええええええ。



まさかのタイミングで内視鏡さまが降臨した。


めまいが…。


「あの…内視鏡というのはいつ頃受けることになりますか???」


「来週です」


ええええええええええ。


世の中にはピロリ菌というのがいて、井戸水とか飲んでいるとお腹の中に繁殖するらしい。こいつがお腹の中にいると、色々悪さをするので治療をする必要がある。

まぁ井戸水は海外で散々飲んできたからな、しょうがない。旅人だもの。

ほんで、内視鏡はそういうひとのための検査枠を確保されているので、ぼくは即検査可能となったわけである。まさかの3ヶ月ショートカット。

※あとからびびって親族に告げたらみんな健康診断をしてて治療済みとのこと。そんなに一般的な菌なのね。みなさんも胃のコンディションにはご注意を。

しばらく、緊張感が続きそうだなぁ。

ぼくは脱力しながら、泌尿器科へ。内視鏡の件で一撃くらったあとなので、すでに気力が尽きておりふらふらしながら検査室に向かう。こちらはもう一回エコーでお腹をグリグリするだけで済むらしい。よかった。

暗い部屋に入ると冷たいゼリーみたいなのをお腹にぬってグリグリがはじまる。右のほうかな。今回は念入りにチェックしているのがわかった。その後先生との面談が行われる。

「エコーを受けてもらったのですが、やはり腎臓に腫瘍がありますね」

「先生、検査結果には腫瘤と書いてありますが…違いが…」

先生は紙に書きながら説明を続けていく。

「腫瘤というのはしこりなんですけどね、その中に腫瘍が含まれていて、良性と悪性の2種類があるんですね。で、悪性はいわゆるガンです。これからハッキリさせるために造影剤CTというのを受けてもらうことになります」

泌尿器科の先生は無知な僕にとても丁寧に説明してくださった。精密検査を受けてガンかどうか白黒はっきりさせようという話だった。

帰り道、運転をしながら先生の言葉を思い出す。悪性腫瘍って聞いたことがあるけどガンのことだったとは…年末にもさしかかってきたので、ピロリ菌と合わせて年内に白黒つけてきれいにしておこう。ああ内視鏡かぁ。

ぼくは音楽の音量を上げると、ガムを一粒、口に投げ込んだ。
こうして人間ドックへの結果共有は終わったのだった。

さて、それから数日後、ブルブルふるえながらの内視鏡が行われた。太いのをのどから入れるか、細いのを鼻から入れるか、先生から決断を迫られた。

ちなみにメリットデメリットを整理しておくと…
■太いやつ→カメラが大きいのでよく見える。でも最高に気持ち悪い
■細いやつ→カメラが小さいので通しやすい。でも最低限しか見えない。

そりゃ細いほうに決まってますがな。

ついでに内視鏡が初めてなのでコツを教えて欲しいと伝えたら、鼻に麻酔のようなものをさしてくれた。感覚が弱くなるので負担が軽くなるらしい。その先は正直記憶があいまいだ。とにかくゲロゲロしながら内視鏡は無事に終了した。

後半のサビの部分(胃を通過するころ)には記憶が飛んでいて世界がぐるぐるまわった。マジでこれ書き始めるとあのゲロゲロがよみがえりそうでやばいので割愛させてほしい。

検査後にはたくさんの看護師さんから「がんばりましたね」「服が大変なことになってますね…」と声をかけてもらって、ティッシュを大量にもらい、ふらふらしながら家に帰ったことだけ記しておく。

そして、数日後には造影剤CT検査。妻は最近病院に行きまくっているぼくを心配してか、車で送ろうかと言ってくれたけど、検査だし仕事を遅刻してもらうのもなぁってことでじぶんで行くことにした。

家から病院までの道のりは琵琶湖沿いを30分くらい車で走る。
ぼくはこの時間が気に入っていた。

右手にでっかい琵琶湖が見えていて、晴れていると青くて美しい。

好きな音楽をかけながら、ガムをかんで、この道を運転していると旅行しているような懐かしい気持ちになる。だいたいいつもGReeeeNを聴くんだけど、たまたま先週ランダムにしたままで流れてきたVaundyの『踊り子』の歌詞が胸にしみこんできた。リピートしながら彦根に向けて走っていく。

さて、いつもの入口検温を通過し受付に行くと同意書が渡された。

CTをとるときには色んな項目に同意する必要があるらしかった。

例えばこんな項目もある。

問:結果の通知はどうされますか?
□自分だけで聞きたい
□家族と一緒に聞きたい
□家族だけが聞いてもらい結果を知らせて欲しくない

うちの場合、妻も忙しく働いているので、わざわざ結果を聞くために休んで欲しくないし、これは自分だけで聞きたい、にサインをしておいた。また

問:今後子どもをつくる予定はあるか?
※治療によっては生殖活動に影響します

こんな問いもあった。へぇーちょっと考えさせられた。

夫婦間でこの先、子どもを持つかどうかという話はしたことがない。なんとなく、2人授かったし年齢的なものもあるからここまでかなぁという雰囲気は互いに持っていたのだけれど。どうかな。

人生の可能性をひとつ閉じる決断というやつだろうか。心がざわざわした。でも大人になって歳をとるとちょっとずつこういう出来事が増えてくるし、いつかはやってくるだろう。じぶんで決めてサインをしなければならないこともある。

受け入れていかなきゃ、なんやろうな。

ぼくはサインをした。

待合室、老夫婦が寄り添って座っているとなりにちょこんと座ると、いつものようにぼんやりした時間が流れていった。おそらくご夫婦のどちらかが立ち会いだろう。これが望ましい夫婦の形なのかな?どうだろう。

この数日、病院にいる時間を通してちょっとずつじぶんの中で何かが変わってきているような気がした。その先になにが起こるのかいつもわかんないけど、ここ数回の検査では毎回何かが起こっている。ぼくは想像のつかない世界をすごい勢いで転げ落ちているのだった。

日記をつけよう。
なんとなく、本能的にそう思った。


しばらく待っていると名前を呼ばれたので、重たいスライドドアをあけて入室する。

「こんにちは、よろしくお願いしまっす」

なんか怖いので無駄に明るい口調であいさつをしてしまったが、先生はあきらかに機嫌が悪そうだ。ぼくが部屋に入るなり同意書を出して僕の回答に指をさす。

「はじめにお話があります」
「はぁ…なんでしょうか??」

(つづく)

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闘病の記録、第一話でした。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
続きは毎週更新していきますのでよかったらまたのぞきに来てくださいー

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