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君も、ドラマみたいに泣くんだね。

 今日は息子のことを書きます。高校3年生で、現在受験まっただ中。彼にとって今回の火事はことさら大きな災難でした。

 火事になって3日目の朝。息子が目に涙をためて、こういい放ちました。

「おれはさ、もうがんばってんだよ。なんだよ、がんばれって。これ以上、がんばれないよ」

 それを聞いた僕は、父親である自分から幽体離脱するみたいに、この状況を俯瞰してみていました。

 「ちょっと今日で3日目。人は極度の緊張にさらされるとしばらくアドレナリンがでる。しかししばらくすると緊張の糸が切れて、抱えてきた本当の気持ちが溢れ出るものだ。それが彼にとっては今なんだ。しかしそれにしても、君もドラマみたいに泣くんだね。311のあとのドキュメンタリーでもよく見た気がするな。どっちにしても繰り返し使われた表現。きっとぶつけられない苛立ちが彼のなかに溜まっていて、でもきっとそれは言葉にならないことで、『がんばれよ』って声をかけられたことで、あ、これなら発露できる、って思ったんだろうなぁ。そういう意味ではドラマに感謝だな。そういうきっかけをつくってくれているんだから」

 彼にとっては、ずっと準備をしてきた大学受験の真っ最中。逃げ遅れそうになった妹2人を救出し、消防の調査にも対応し、助けてくれたご近所の皆さんにも気を使い、勉強道具も服も何もかもが燃えたなかで、Airbnb暮らしを強いられ、しかも誰よりも最後まであの燃えさかる家の中にいた。

 つまり強烈なストレスのなかに彼はいた。それをなかなか言い出せなかった。その感情に蓋をしていた。しかし3日たって、抑えきれない感情となってあふれだした。しばらくは少し「荒れて」いたが、いまはすっかり落ち着いている。というか、この困難のなかで、ものすごいスピードで成長している。

 大学受験の結果は、ひとつずつ届くはずだ。それがどんな結果になるのかはわからない。でもひとついえることがある。

 艱難辛苦を乗り越えた君、涙の数だけ強くなれるはずだ。

 そんな君を、心から誇らしく思う。

 ってこれもドラマみたいだな笑


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