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AI普及の果てに

目次

1. AIにより仕事がなくなる時代

2. AIの現在地

3. AI vs 人間

1. AIにより仕事がなくなる時代

 2013年9月、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン教授の発表した「雇用の未来」という論文で、10~20年後に全体の約47%の職業がAIや機械によって自動化されるという予測が発表された。以降、世間でも「AIによって仕事がなくなる」「AI時代を生き抜くためには」といった話題がよく取り上げられるようになった。実際、自分も就職活動にあたり「人ならではの仕事ができるようになることで自分の市場価値を高め、職に困らないようになりたい」と漠然と考えていた。
 「そんな未来、本当に来るの?」と半ば疑問に思う方も中にはいるかと思うが、いくつか発表されているAI関連ビジネスの市場予測を見ると、AIが普及する未来はほぼ確実と言える。

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上のグラフは、EY総合研究所がAI関連産業の市場規模を予測したものである。2015年では3兆7,450億円だったが、15年後の2030年にはおよそ23倍の86兆9,620億円になると予測している。自動運転技術の確立が決定的なため、運輸部門の伸びは特に顕著である。そのほかの分野でも2015年時点では数十億円の市場規模だったものが、2030年には軒並み数兆円を超えていることがわかる。

2. AIの現在地

 具体的にはどういった職業がAIに取って代わられるのだろうか。
 AIの最大の長所は記憶力と計算力だ。そのため、膨大な量の情報を学習する能力や、学習結果に基づいて推論する能力は簡単に人間の能力を超えてしまう。そのほか「ある程度の訓練をすれば誰でもできる作業(レジや施設の案内係)」も、技術が確立されれば、人間より低コストの機械が様々な業種で企業に重宝されることは間違いないだろう。すでにコンビニエンスストアの無人化やチェーン店で時折見かけるPepper君からその波を感じ取ることができる。まだ未実装だが実生活レベルで普及の可能性が高いものを挙げると、自動運転システムや医療現場におけるAI診断などがある。
 自動運転システムについては、アメリカではすでに実証実験が始まっており、一部地域では無人タクシーが走行しているという。日本でも、一部の高級車では自動で車線変更ができるレベルには達している。
 医療現場では、例えば大腸がん検診現場に「エンドブレイン」というAIシステムが導入されている。内視鏡画像を瞬時に解析し、腫瘍性と非腫瘍性を識別。ベテラン専門医と変わらない95%の確率でがんを見極めることができる。また、数年後には病気の自動診察が可能になっており、診察室に入る前に診察がほぼ終わっているという光景も当たり前になるとも言われている。

3. AI vs 人間

 一方でAIに置き換わられない職業も数多く存在する。冒頭に紹介したオックスフォード大学の論文にも、小学校教員やデザイナーなどは100%人の行う仕事と判断されている。現在日本で不足している保育士・介護士・システムエンジニアもAIには務まらないと思う。そこには人の気持ちをくみ取る能力や創造性、AIを生み出す技術が必要だからだ。これらのことは現時点ではAIには不可能であろう。

 ただ、このように見ると「AIが人間を超える」「人には、機械にはない思いやりがある」など、どうしても「AI vs 人間」の構図になりがちな気がする。私はその構図には違和感を覚える。AIに仕事が取って代わられることはそれほど問題なのだろうか。
 AIなどのテクノロジーによって機械が仕事をする未来はほぼ間違いなく訪れるであろう。そのほうがはるかに正確で低コストだからだ。ただそうすると大量の失業者が生まれてしまうので、ベーシックインカムを導入する国が必ず現れると思う。ベーシックインカムとは生活するための必要最低限のコストを国民全員に支給する制度である。巨大企業であれば自社製品以外を使用できないという制約の下、生活データを収集する目的で、生活に必要なものを無償で提供することも考えられる。
 つまり、AIの普及した世界では働くか働かないかが選べるようになる可能性がある、ということだ。そうすると人間は何か「生きがい」を見いだすはずだ。それは機械化されていない仕事に直結するかもしれないし、しないかもしれない。だた世の中の役に立ちたい、活躍したい、と思うのであればその生きがいは間違いなく前者だろう。なぜなら社会貢献性の高い仕事は、創造力・人に対する思いやり・人を導く力など、人ならではの長所が必要になる仕事だからである。

 AIは、何も人から仕事を奪って不幸にする道具ではない。人の手で行うには効率の悪い仕事を代わりに行ってくれる強力なサポーターなのだ。AIが普及しきった世界でも、社会問題というのはゼロにはならないだろう。それどころか新たな社会問題が生まれるかもしれない。その中で、「いかに世のため人のために動けるか」が、人がそして自分が活躍するために重要なことだと思う。