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『なぜ宇宙は存在するのか』/本・宇宙論

無数に作られ続ける泡宇宙の一つにすぎないこの宇宙。その超初期から未来の姿、そしてその外側の世界までが、最新の研究によりかなり明らかになってきた!超弦理論や永久インフレーションなどの物理学の方程式によって具体的に示され、ダークエネルギーの値を自然に説明することができる、ほぼ唯一の理論―マルチバース理論も徹底解説。

 宇宙、すごいよね!(アホの言い草)
 ときどき宇宙とか時間のことについての物理学の本を読んで、「キィー! 完全に理解したわ!」(サッパリわからん!)ってなるのが好きです。昔からぼんやりとは好きだったんだけど、やっぱり『三体』を読んでえらく感動したのが大きいかな。
 前に『時間は存在しない』の感想記事を書いた時も……あれ、ひとつも『三体』について触れていない? この頃には少なくとも2部作めを読んでるはずなんだけど……。というか『三体』の感想も書いてないし。いろいろとどうなってるの? あの頃の自分、あの頃の時間……存在しない……?

 歳を重ねると、なんでもない日常に不思議が散りばめられていることに気付けていいですね! そんなわけで宇宙の不思議について読んだよ!
 感想をひとことで言うと「深まった!」 いやー、深まったよね。すごく深まった。完全に深まったわ……。

 本書をどのような本にするのがよいか、著者なりに考えた結果、「はじめて触れる宇宙の不思議」といったものよりは、本格的な、そして現代的な宇宙論を知ることができるようなものを目指すことにしました。(中略)
 本書では、単に「科学者はこう考えています」ということを超えて、なぜ科学者がそう考えるようになったのか、についてもできる限り論理を明らかにしながら説明するよう心がけました。(中略)
 もちろん、これによって難易度が上がってしまうかもしれないという危惧はあります。それでもこの方向を選んだのは、(中略)本書のようなブルーバックスを手にする読者の多くは、すでにある程度宇宙や宇宙論に関する興味を持っているのではないかと考えたからでもあります。

p.3-4

 わりと容赦ないな! いままで読んだ本より入門向けと思いきや、ちゃんと理論的なグラフを提示されたりして、その都度「ほほう……」(わからん)となったけど、しっかりと説明されるので、実際深まりました。

・宇宙の膨張について
 ついつい、「宇宙の"外"ってどうなってるの?」と思ってしまうのですが……。

 ハッブルが実際に見つけたのは「ほぼ全ての銀河は地球から遠ざかっておりスピードは遠くにある銀河ほど速い」ということなのですが、これはまさに「宇宙が膨張している」ということなのです。
 これを理解するには、風船の上にほぼ一様に点を描き、それを膨らませることを考えるとよいでしょう。ここで、点は銀河を表し、風船の表面は宇宙を表すとします。(中略)
 しかし、この風船の描像は、いくつかの点で誤解を生む可能性のある例えでもあります。一つには、宇宙膨張とは「宇宙全体のサイズ」が大きくなっていくことである、というイメージを与えてしまう点です。実際には必ずしもそうとは限らず、(中略)宇宙全体のサイズが、最初から無限だという可能性もあるのです。
 宇宙の膨張とは、銀河間の距離といった、宇宙の異なる点の間の距離が一様に大きくなっていくことであって、これは必ずしも宇宙全体が有限であって、そのサイズが時間とともに大きくなっていくということを意味するわけではないのです。
 また、風船の例では風船の表面はその周りの空間の中を広がっていきますが、実際には、風船における表面で例えたようには、宇宙は何かの中に広がっていくわけではありません。先にも述べたように、宇宙膨張とは宇宙の異なる点の間の距離が一様に大きくなっていく現象のことです。そしてこの現象は、宇宙が何かより高い次元の空間に埋め込まれているということを意味しません(風船の例では、2次元面である風船の表面は周りの3次元空間に埋め込まれています)。
 これらをまとめて簡単に言うと、宇宙膨張とは空間自体が膨らんでいく現象だと言うことができます。

p.22-24

 なるほど、なるほど……なるほど? つい外を考えちゃうけど、そもそも外がないかもしれないのか。文章は理解できるんだけど、泡宇宙のモデルでも、なんかつい宇宙の外をイメージの中に入れちゃうんだよなあ……。

・ダークマターとダークエネルギー

 これはよく混乱を生む点でもあるのですが、ここでの議論でもわかるようにダークマターとダークエネルギーは、その名称が少し似ているにもかかわらず全く別のものです。ダークマターは、標準模型に含まれる粒子ではないものの、物質であることには変わりありません。一方で、ダークエネルギーは物質ですらないのです。

p.42

 そう、混乱してました!
 まあ、マターとエネルギーだから、たしかにそうね、ちがうね。

・宇宙の年齢と対数

「宇宙の本当の最初のことはわからないのだから、このようにして求められた宇宙年齢の誤差は非常に大きいのではないか」という疑問が生じるかもしれません。しかし、これはそうではないのです。
 このことを理解するためには、「対数」の考え方を身につける必要があります。

p.53

 Wikipediaの「対数」のページを見ても、何が何やらなんだけど、本書で例としてあげられているのは、以下のようなもの。

 東京から京都まで車で移動するとしたらアバウトに10時間くらいと思われる。数時間ずれても1分とか10日ってことはあり得ない。同じようにキャッチボールをするとして、相手に届くまでの時間を考える。距離や速度にもよるけど、大体何秒かのことであって、0.001秒とか1分ってことはない。
 このように、ある時間尺度で起こることが推定される事象は、一般にその時間スケールで完結する。

 とのこと。
 へえーーーーー、ぜんっぜん知らなかった! 賢い人たちは賢いのねえ……!

・出たー、元素周期表!
 高校行ってないんで、ぜんぜんわかんないんだよなあ。上にあげた対数も、p.30に載っていた素粒子の標準模型の数式なんかカケラもわからないの。高校の物理と数学はいつかふんわりと触ってみたいが……それはいつになるんだろうね!

・マルチバース理論による宇宙の外側と始まる前

 ここで「宇宙の外には何があるのか」という問いについて考えてみましょう。この具体的なマルチバース理論によれば、私たちの宇宙の「外側」ともいうべき領域(中略)は、泡宇宙の内側に住んでいる私たちから見れば宇宙が「始まる前」(中略)の領域だということになります。つまり、泡宇宙の中の観測者から見たときの「宇宙が始まる前には何があったのか」という問いと、泡宇宙の外の観測者から見たときの「宇宙の外には何があるのか」という問いは、同じなのです。そしてこの問いに対する答えは、私たちの宇宙がその中に泡として生じる別の宇宙、「親宇宙」です。
 このようなよくある質問、「宇宙の外側には何があるのか」や「宇宙が始まる前には何があったのか」といった基本的な問いでさえ、宇宙とは何かを定義し、また誰から見たときの外側なのか、誰から見たときの始まる前なのかをしっかりと指定しないと、質問自体が明確な意味を持たないのです。このようなことは物理学ではよくあることです。私たちが当たり前だと思っている概念、この場合は宇宙、空間、時間などですが、それらは私たちが思っている以上にゆたかな構造を持つ概念なのです。

p.238-239

 ううーん、無限かもしれない「我々がいるこの宇宙」の外側に「親宇宙」があって、たぶんそれも無限かもしれなくて、そしたらその外側には……?
 いろいろとよくわからなくなってくるが、p.236にある「無数の泡宇宙」の図はときめくので良い。
 ちなみに親宇宙には行くことができないが、シグナルがその領域がくることは可能らしい。うおお、わからん、わからんがロマン……!!!

・よくある誤解

 よくある誤解は、人間はマルチバース理論の予言する別の宇宙に行くことはできないのだから、この理論は検証しようがないというものです。これは、いくつかの点で間違っています。
 第一に、(中略)ある領域に行くことができないということは、その領域からの情報を得ることができないということを意味しません。実際、遠くの銀河であれ、恐竜が生きていた時代であれ、人間が直接そこに行って確認してきたわけではないのです。しかし、これらを調べることは明らかに科学の範疇に属しています。
 またもう一つ重要なのは、ある科学理論を検証するときに、私たちはその理論の全ての予言を直接確認する必要はない、ということです。実際、科学的に確立したと言ってよい量子力学や、その一つの具体例である素粒子の標準模型でさえ、その予言の全てが実験的に検証されつくしたわけではないし、そのようなことは不可能でしょう。

p.243

 この辺りは「なるほどなあ」と思うのと、それとは別に、筆者の「譲らんぞ」という感じがしていいね!
 理論としてうんぬん言えることはないのだけど、マルチバースはめちゃくちゃ面白そうな世界観なので、今後も期待して読んでいきたいね!

 宇宙論の本は、読みかけて止まってしまっている『時間の終わりまで』があるので、これもそのうちちゃんと読みたい。面白いんだけどあまりに手強くて、眠れぬ夜の特効薬みたいになってたからな……(ひどい)。

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