『キャナリー・ロウ』/本・海外文学

内容(「BOOK」データベースより)
カリフォルニア州サリーナスにほど近い港町キャナリー・ロウで、ある日突飛なパーティーが催される。―皆から「先生」と呼ばれ尊敬されている生物学者、ビジネスにはうるさい雑貨商リー・チョン、女主人ドーラの経営する売春宿の女たち、「ドヤ御殿」と名づけられた小屋に寝泊りする浮浪者たちが巻き起す笑いと涙の物語。

・文学効能事典から「現状に満足できないとき」で紹介されていたので読んだ。「オッケーグーグル、元気になれる本を教えて」みたいなやつ! ひゃー恥ずかしい!
 あ、ちなみに効能についてはよくわかりませんでした!

・名前だけ知ってた、スタインベックを初めて読んだ。このへんはもう恥ずかしくないんだ! 開き直ってるからな!

・第十二章まで読んで、作家ジョシュ・ビリングズの死体処理の話はいったいなんなんだろう……? と不思議に思う。ただ、それはそうなのだ、みたいな話。
 思い返すとプロローグで、こんなふうに書かれていた。

 この詩と悪臭と噪音を──いわば一種の光、色調、習慣、夢を──生き生きと描くにはどうしたらいいだろうか? 海の生物を採集していると、ある種の扁形動物にであう。これはひじょうに繊細なので、完全な形で捕えることは不可能にちかい。触るとバラバラになってしまうからだ。それが自分の意志でだらだらと滲みでるようにナイフの上に匍いあがるのを待って、そっと持ちあげ、海水をいれた壜に落とさなければならない。そして恐らく、そのやり方がこの本の書き方かもしれない──ページを開き、物語がひとりでに入ってくるようにするのだ。

P.11

 解説曰く、「非目的論的思考」とのことで、物語の因果律を絶対視することを排して書かれているらしい。ふーむなるほど。
 すっごい雑な印象論だけど、なんとなく記憶に残るエピソードのある小説がこういう書きかただったりする? 『ライ麦畑でつかまえて』の世界中の卑猥なラクガキとか、『風の歌を聴け』のじゃかいもの皮むきとか。

 大筋としてはマックたちと先生、パーティの話が中心だけど、さっきも書いたようになんかよくわからないエピソードがたくさん出てくる。妙な感じがするので羅列してみよう。

 夕暮れ時に老いた中国人が現れて、そこがはがれかかった重い靴でぺったんぺったんという音を立てて歩いている。
 廃棄されたボイラーに住み着いた夫婦がいて、妻はカーテンが欲しくて泣く。
 育児放棄された少年が、自分を世話してくれる先生のために何かしたいがうまくいかずに絶望する。
 亡くなった作家の死体処理で渓谷に捨てられた内臓を、近所の少年と犬が拾う。
 朝まで飲み明かした4人の男女が私有地の砂浜で寝そべり、出て行かせようとする管理者を無視する。
 タコを採集しに行った先生が奇妙に美しい水死体を見つける。
 デパートの宣伝のために旗竿スケーター(なにそれ???)が、世界記録の127時間を更新しようと屋上で回り続ける。彼は用を足すために空缶を持っている。
 いつまでも作りかけの舟に住む男が、女と出会っては別れる。
 憂鬱になりがちな作家を妻が励まそうとするが、ねずみを殺す猫を見てショックを受ける。のちに妊娠する。
 2人の子どもが遊んでいて、一方の父親が失業して殺鼠剤を飲んで自殺したことを冗談にされる。からかわれたほうの子が銅貨を見つけるが、からかったほうの子がそれを横取りする。
 雄ねずみが良い土地に居をかまえるが雌が見つからない。探しに行くがすでに雄がいて返り討ちにあう。やがて住む場所を変えるが、そこはねずみ取りの罠が毎晩仕掛けられている。

 こう見ると、繰り返しねずみが出てくるなあ。
 そういえばメインの話に絡んで犬も何度か出てくる。犬たちは毎回人間に助けられている。猫は人間とつかず離れずで好きにしている。ねずみは相手にされていない?
 あとは、捨(棄)てられたものがやたら出てくるのかな。
 このへんはうまくなにかをアレすると一席ぶてそうだけど、よくわからない。引っかかるところはある。

・解説でいうと、自然/文明の対比はよくわからなかった。ノスタルジー的な雰囲気はどことなくわからなくもないけど……。

「なぐられたとき、おれは嬉しかった」マックはつづけた。「おれは考えたよ──『これはいい教訓になる。忘れないようにしろって』しかし、だめなんだ、みんな忘れちゃうんだ。性懲りもなくまたやってしまうんだ」マックは声をあげて泣いた。「おれのみたところじゃ、みんな嬉しそうだったし、楽しかったんだ。先生のためにパーティをしているんだから、先生だって嬉しいだろうと思っていたんだ。それで、おれたちも嬉しかったんだ。おれのみたところ、いいパーティだったんです」彼は床に散らばっている破片のほうを指し示した。「結婚したときもこうでしたよ。よく考えてやったのに──そうはならなかったんだ」

P.161-162

 もう単に悲しくなってくる。うまくやれない。
 これは……文明の象徴であるパーティを開きたいが最初はうまくいかない、みたいなことなのかなあ……単純化しすぎか!

・スタインベック、『ハツカネズミと人間』も読んでみようと思ってるので、そちらもいずれそのうちに! あれ、これもネズミか……。

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