見出し画像

美術展『キュビスム展 美の革命』 -出会いと試行の光輝-

いつの間にか、感傷的になるのが得意になってしまった。
でも、それは時に心地が良かったり、溜まった毒素を排出するための浄化作用にもなったりして、割と嫌いじゃなかったりする。
「ネプトゥーヌス」を聴きながら電車に揺られ、外の灯りをただじっと眺めていたら、そんなスイッチがついうっかり入ってしまった・・・けど、違うんだ、今日はそんなんじゃないんだ!

ものすごく、いい気分なんだ。
大好きな人たちに、会えたんだ。


ロベール・ドローネーとクプカは、ABSTRACTION展以来だから、5ヶ月ぶり!やほ。
ルソーはいつぶりだろう。久しく会っていなかった。
だって、ルソーが視界に入った瞬間、「うわぁ久しぶりー!」って喋りかけたもん。右手を振りながら、大きな声で。(at 心の中)
大好きだけど、なかなか会えない。
そんなルソーとの久々の再会が、あんな大作だなんて!
ルソーの1枚を観ただけでもう、「来て良かった」が確定した。
たまらなく、たまらん。。。

ルソーの色が好きだ。
ルソーが描く緑が好きだ。
ルソーの構図が好きだ。
画面全体が好きだ。空の色も好きだ。
自分は大画家だと信じて描き続けた人柄が好きだ。

色彩を、画面を、目に焼き付けようとじっくり見ていく。と、右下に描かれた彼のサインが気になった。
名前の下に、ふぃんふぃんと、外に跳ねる線が2本、一列に並んで描いてある。
こ…これはもしや…!

アンリ・ルソー 出典 : Wikimedia

印象的な口髭!
2本の線は、彼のトレードマークとも言える口髭を表しているのでは?
初めて気が付いたけど、もしかして、ルソーのサインには全部あれが描いてあったのか?!それとも、髭の意図は無く、ある時期から装飾として描かれた線なのか?
気になる案件が発生してしまった・・・。
がしかし!今日は常設展も観たいのだ!閉館前の10分間だけでも常設展に充てて、私は、モネが観たいのだ!!!



10月に行った山口晃さんの展覧会をきっかけに、それ以降の美術展は、なるべく感覚を研ぎ澄ますことを意識して、作品を観るようになった。

作者やタイトルよりも先ず、作品と向き合う。
「好き」も「嫌い」も「違和感」も、自分のアンテナに引っ掛かって感知するもの。作品を観たときの最初の新鮮な感覚は、大切にしたい。
アートに限らず、前情報無しで何かと向き合うと、予定調和の無いワクワクが生まれる。
対象と正面からぶつかり合い、感覚が埋もれないように五感を開き、相手を知ろうと集中する。
映画『君たちはどう生きるか』も、そうだった。

そうだったんだけど、今回はキュビスム誕生の背景を知ってから行きたい気持ちもあって、事前に少し予習して行った。

「ピカソは具象画しか描いていない」っていう話、目から鱗が落ちたなぁ。
五郎さんの解説は本当に分かりやすいし、面白くて聞き入ってしまう。
大まかな変遷を理解してから行ったことで、展覧会場の解説をほぼすっ飛ばし(後で図録読みます ごめんなさい…!)、作品と向き合う時間をしっかりと確保することが出来た。
鑑賞時間が限られていた私にとっては、かなり有効な策となった。グッジョブ。

やっぱりやっぱり、色が好きだ!

撮影可能な展覧会は増えた。
私も、感情が揺さぶられた作品は撮ってきた。
けれど、今回はほぼ撮らなかった。撮らないようにした。
撮ってしまったら、画像を保存したことによる妙な満足感が、感性を希薄にしてしまう気がしたから。そして、撮る数秒をも惜しく、実物をもっと脳裏に刻みたいと思ったから。今回に限らず、今後もそうして観ていこう。
と、決意した、が、これだけは…これだけはどうしても収めたいと思ってしまった。

1913年 ソニア・ドローネー 作
《シベリア横断鉄道とフランスの小さなジャンヌのための散文詩》

たまらーーーんっ!!!
この作品の前で、一体何度叫んだか。(at 心の中、再び)
実験的に色彩を減らしていくブラックやピカソの試みも好きだが、やっぱり、色!なのだ。この豊かな色彩に、脳が、毛穴が、細胞がブワ〜っと喜んだ。
展覧会のメインビジュアルになっている、ロベール・ドローネーの《パリ市》は圧巻だし、色彩も絶妙でたまらんが、それと向かい合うように配されたドローネー夫妻の色彩×抽象の一画がもう、もう、もう!!!だった。
本当に興奮している時は、語彙なんて要らないのさっ。



国立西洋は常設展も素ん晴らしい

閉館まで残り10分。
足早に常設展へ行き、途中いくつもの作品に後ろ髪を引かれながら、私はモネを目指した。
国立西洋がリニューアルしてから、初めて観る常設展。
(観ると言っても、大半を素通りしているわけだが・・・。)

とにかく、今日、これが観たかった。

1916年 クロード・モネ 作《睡蓮》

ワックス裏打ちが施されていない、貴重なモネ!しかも大画面!
この色彩を、筆致を、絵具の盛り上がりを、どうしても観たかったのだ。

アートって、単純に好きかどうかで観ても楽しいが、時代の変化と密接でもあるから、その背景を知ってから観ることも楽しい。
更には、画家個人の思考や交友関係、それによる影響と変遷を辿るのもまた楽しい。
今回のように、一つのテーマに沿って様々な画家の作品が一堂に会すると、鑑賞者である自分自身の好みもよく分かり、自分を知ることにも繋がる。
探求心に溢れ、色彩に溢れたキュビスム展。
年内最後の美術鑑賞に相応しい、大興奮の展覧会だった!!!
2023年も残り1週間。今年のひとり大回顧展をやらねばだ🍊

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?