第68回 最終借入の直前に父が入院
3月半ばには一通り建物は完成した。あとは、M信用金庫から最終資金を融資してもらい、施工会社に支払うだけだ。45百万円の融資(証書貸付)実行資金で、これまでの2度のつなぎ融資(手形貸付)を借り換えると同時に、施工会社への完成時の最終支払いに充当する。
3月末までにこの借入を完了しなければならない理由があった。2020年4月から民法が改正され、融資時の保証人の認定が、ものすごく面倒になるからだ。
具体的には、個人が事業用の融資の保証人になる場合、公証人による保証意思の確認手続が必要になる。保証意思確認手続きは、公証役場で行い、手数料1万1000円程度を支払って公正証書を作成しなければならなくなる。息子である僕が保証人になるために、わざわざ公正証書まで作成するとは、ばかばかしい。
時間もかかってしまい、信用金庫の担当者もそれを避けたがっていた。また、施工会社への完成時の最終支払いが、年度をまたがせてしまうのは申しわけない。
しかしここで問題が発生した。3月4日、父が肺炎で入院してしまったのだ。確かに2月下旬に実家に帰った時に嫌な咳をしていた。新型コロナウィルスの危険が迫ってきている、この時期によりによって・・・。幸いPCR検査は陰性だったが、肺に黒い影があるという。病院は感染リスクを最小化するために、面会をきつく制限した。当初は、母も病室には入れなかった。もちろん、僕が東京から会いにいくこともできない。幸い着実に快方に向かったが、いかんせん高齢のため、担当医師は慎重だ。
問題は、最終資金の融資実行には、借主である父の署名捺印が必要ということだ。しかも、署名は信用金庫担当者の面前で行わなければならないという社内ルールがある。父が退院するか、担当者が病室に入らなければ融資が実行できない。
何度も母経由で担当医師にお願いし、なんとか3月27日に信用金庫担当者の病室への入室が認められた。その日に融資実行、即施工会社への振り込みも完了。ほとんど、ギリギリのタイミングだった。そして、父は4月の初めに無事退院した。父はこの間の状況をあまり理解していないようで、元気になったのはありがたいが、ふらふら出歩いているそうだ。
しかし、新型コロナの影響はここからが本番だった。
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