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第69回 あの手この手の募集作戦

まだ完成する前の2月初めには、すでに募集を一任した不動産会社(ミニミニ)に問い合わせはいくつか入っていた。最初の問い合わせは、ドイツ出身でご主人が周辺の企業に勤務する若いご夫婦からだった。まだ生まれたばかりのお子さんとの三人暮らし。日本語はほとんどできず、最初は通訳を伴って内見に来られた。日本の賃貸住宅に満足できず、住みやすい家を探しているそうだ。勤務する会社から住宅補助も支給されるとのこと。営業担当者から外国人でも構わないかとの質問を受けたが、もちろん問題ないと返答した。

ちょうど、僕が最終検査のため現地を訪れた3月初めにも、何度目かの内見に自ら車を運転していらしていた。僕はご主人に簡単に挨拶した。奥さんはベビーカーの赤ちゃんと表で待っておられた。営業担当によるとD棟が気にいっているとのこと。僕はこういう家族に住んでもらいたかったので、大いに期待した。母も、英語は喋れないと嘆きつつも嬉しそうだった。

しかし、後日営業担当者から契約に至らなかったとの連絡をもらった。ご主人は大いに建物や環境を気にいっていたが、奥さんは立地が気にいらなかったようだ。確かに、ご主人が仕事に行っている間は、小さなお子さんと家にいることになる。周囲には外国語ができる人はいない。気をまぎらわすことができるような娯楽施設も、近所にはほとんどない。慣れない異国暮らしには、きついかもしれない。残念だが仕方ない。

その後、日に日に新型コロナの影響が広がり、こんな田舎でも人の移動が激減してしまった。そして、時々内見には来ても、契約にまで至ることはなかった。

2月、地元ケーブルテレビ局のディレクターを紹介してもらい、彼が担当するお散歩系番組で、このAWAZUKU HOUSEを紹介してもらうように話をつけた。その会社のケーブルを各棟に敷設し、借主がすぐに契約し使用できるように整えていたので、多少便宜を図ってくれたのかもしれない。若い女性タレントが散歩して、地元の面白いところや人に巡り合うというような企画。撮影日には、僕も現地に行き出演することになっていた。当初3月下旬だった撮影予定日は、コロナの影響で4月上旬に延期され、そして緊急事態宣言が発令されに至り、結局無期延期になってしまった。

僕は、コロナ禍でも何とか打開策を打ちたいと考え、あらためて「物件をたしなむ不動産エンタテイメント」を掲げる「物件ファン」というサイトに連絡し、掲載を依頼した。全国のこだわりの建物を紹介しているので、建築好きにリーチできるかもしれない。実は年末にも打診したのだが、まだ完成前ということもあり、うまくいかなかった。今度は完成後の写真も豊富に見せることができたので、緊急事態宣言さなかのゴールデンウィーク中に掲載していただけた。とても良いページになっていると思う。

この効果があったのか、若い建築家夫婦が内見に来たそうだ。建築家のご主人は大いに気にってくれたそうだが、おそらく立地の問題で、やはり契約には至らなかった。

コロナ禍でリモートワークが当たり前になり、都会の会社に勤務しながら地方で暮らすライフスタイルが注目されつつある。そうした方にも関心を持ってほしい。決して大自然に囲まれているとか、温泉地といった観光地ではないが、リモートワークやリモートオフィスの拠点としては悪くはないと思う。「災い転じて福となす」としたいものだ。

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