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小京都

ー コンサル経験三代目経営者は父のシステムを超えられるか ー

 「え!?」大きな声が轟いた。会議室で2人だったが、オフィスのある日本橋中に聞こえたんじゃないかと思うほどだった。その驚きの原因は、「私実は石川県輪島市の出身なんです。」という私の発言だった。会って直ぐに言っても良かったが、なんだか摺りようためのトークだと思われたくもなかったし、機会を逃し、結局3回目の対面で話すことになった。
 だから驚くのも無理ないが、これ以上遅くなって言うのもなんだな、と思い会議が始まる前に偶然二人だけの時間があったので、お客様になろうという三代目の若い経営者に自分が同県人だと告白することになった。

 加賀百万石といえば知らない人は、いないだろう。私が生まれたのは母の郷里の能登なので、元をたどれば別の国だが、今は同県人である。だから貢献したい気持ちがいつにも増し、なんとかしたい気持ちが強いということも、早々に告解した。「そうでしたか」少し嬉しく思ってくれたように見えた。
 「色々やりたいことがありまして」東京でコンサルティング・ファームにいたこともある若専務は、医療に自社製品を活用したいなど、夢とやる気の塊のように見える。自社の板金加工、特に曲げ・溶接・磨きといった技術は特殊である。
 そして何より特徴的なのは、自社でシステムを作れることであった。中小企業でエンジニアを数名抱え、増してや社長がプログラミング開発に携わっている会社は見たことがない。
 しかしこのあたりに落とし穴があった。

 今の生産管理システムを見せて頂くことになった。本社に伺い、システムをモニターで見せて頂きながら、メモを取りながら、頭の中での分析を深めていった。

 機能としては、色々と揃っていそうで、要求があると直ぐ社長が対応してくれるので、利用者は助かっているというコメントもあった。一方で社長しか解らない仕組みもあり、社内のエンジニアは困っているところもありそうだ。
 仕様書や設計書などを作って開発したわけでもないので、コードに付記されたコメントが頼りだ。全体像を知るには、少々骨が折れそうだ。社長が大学で学んだことをそのままプログラミングしているので、プロの目からするとデータ構造やUI/UXの設計は見直したくなるところもあった。一方でDBを使わずフラットファイルをメインにしていることで高速化を図るなど独自的な考え方は面白くもある。しかしながら解りにくく、共同作業に向かない構造であることは否めないので、そのあたりが若専務の悩みの一つであることも解った。

 最初にご紹介したときに資料にもあった「データ活用」「見積システム」のあたりが目に留まっていたようで、見積業務改善をしながら、今の基幹(生産管理)システムの機能を徐々に剥がし、再構築を進めていこうというシナリオになった。
 データのDB化を進めることになった。実は社長も進めようとした経緯があり、途中までやったが、サポートを頼んだ先が詰まってしまったのか、途中で断念したということだった。社長から「Master」「Slave」などの用語を聞いた時には驚いたが、かなりマニアックと言っていいほど、エンジニアな方だと解った。
 あるときには土日にも私に電話があり、質問されてお答えするととても喜んでくれた。あとでその話をしたら、若専務は「すいません、お休みなのに」いやいやそう意味ではなく、ほんとに社長=お父様は、お好きなようで、と笑った。
DB化も進んできたので、実績のデータは活用できるようになってきた。
我々の狙いは、「予実管理」だ。多くの中小企業では、見積が必ずしも正しいと言えない。というか正しかったかどうか確認する術がない。予定出る見積りと、実績データをひかく出来るようにすることから始める必要があった。
 工程のくくり方を決め、比較できるように活動を進めていく。今までバラバラだった見積書のフォーマットもこのプロジェクトのメンバーでもある会社の中核となろう社員さんと一緒に標準化を進めていく。

 若専務は、新卒で2人も優秀なエンジニアの卵を採用し、プログラミング言語の学習などを進めさせていた。
自社でのITを扱えない中小企業の方が多く、中途半端にやろうとするよりは、我々にアウトソーシングしてしまうことをお勧めしている。専門の人材を採用・育成するよりも安価であり、本業に専念出来るからだ。
 しかし、当社のように自社内で全て完結させると意気込み、体制をきちんと構築するところまで振り切るなら、中途半端なところで甘んじるよりは、いいのかもしれない。

 地元で旨い酒と肴をご馳走になったこともある。海外のお客様が多い、良店であった。こういうところで夢を語り合えるのは楽しい。将来が楽しみな会社であり、経営者である。

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