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80年前を描いた戦争映画「1941モスクワ攻防戦80年目の真実」


 11月20日にイオンシネマ広島西風新都で「1941モスクワ攻防戦80周年の真実」を見ました。
 広島県内だとイオンシネマ広島西風新都だけでしか公開されていない本作
 西風新都は昨年の「響け!ユーフォニアム~届けたいメロディ~」と「シン・ゴジラ」を見た時以来だ。昨年は自家用車で行ったものの、道に迷った事から今回は西広島駅まで電車で行き、バスに乗り換えて行きました。

あらすじ

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(↑主人公となるラブロフ(中央)3人ディミトリ(左)マーシャ(右))  

 1941年6月22日にドイツ軍はソ連に侵攻を開始
 ドイツ軍の進撃は止められず、ソ連の首都モスクワへ近づく。少しでもモスクワ防衛の戦力をかき集める為にポドルスクにある士官学校の士官候補生も前線へ行く事が決まります。
 士官候補生達はよく戦いドイツ軍を撃退するものの、ドイツ軍の猛攻に次々と倒れていく・・・

 そんな過酷な戦場の主人公は砲手として腕は良いが問題児であるラヴロフ、生真面目なディミトリ、看護婦のマーシャです。
 マーシャを巡り「抜け駆けするなよ」とがラヴロフと約束したものの、ラヴロフは約束したその日にマーシャと急接近してディミトリと喧嘩になります。
 喧嘩をした事から謹慎処分となってしまいます。
 そんな時に士官候補生達が前線へ出発する事に・・・・


士官候補生が戦場へ出ると言う意味

予告1941モスクワ


 軍人が主役の戦う戦争映画である。
 とはいえ本作の主役は士官候補生達、つまり軍での幹部になる教育を受けている途中の若者達だ。
 本来なら将来は部隊を率いる隊長になる者達が、兵士として前線へ出ると言うお話でもある。
 そういう切羽詰まった状況になってしまったのはソ連軍がドイツ軍に負け続けたからだ。
 1941年6月から開戦し、士官候補生が動員される10月までの3ヶ月以上の期間でソ連軍は戦力を多くうしなっている。
 スモレンスクで戦死傷者4万5000人、捕虜になったのが30万人
 キエフでは戦死傷者16万人、捕虜になったのが45万人
 この2つの戦いだけでも戦死傷者以上にドイツ軍へ降伏したソ連兵が75万人と多い。これでは人員の面も足りなくなり教育中の士官候補生も兵士として出ざるえなくなったのだ。
 (それでも極東のソ連軍は無傷で残っていてソ連の人的資源は基本的に厚みがある)
 

ミリオタの見所

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 本作の主人公ラヴロフは砲兵の砲手である。
 大砲を「戦場の女神」と称えるロシアらしいなと言える主人公だ。
 そんなラヴロフが扱う大砲は45ミリ対戦車砲だ。
 (ソ連の45ミリ対戦車砲はM1932とM1937と2つあるけど外観が似ているのもあって作中がどちらか区別はできなかった)
 この対戦車砲が戦う相手はティーガーではなく、1941年のドイツ軍らしく38t戦車やⅡ号戦車に短砲身のⅣ号戦車・Ⅲ号突撃砲だ。
 それらドイツ戦車は再現されたレプリカだが、出来が良い。動くこれらの戦車を見るのもまたミリオタとしては一興だ。

予告1941モスクワ2


 もちろん、ソ連軍T-34も登場する。こちらは本物だろう。
 だが、砲兵と歩兵がメインである本作なので登場する場面は僅かだ。だがその少ない場面でT-34と並んで走るT-60戦車らしき姿勢の低い戦車が走りながら登場するこれもミリオタとしての見所だ。
 (ただしワンカットで遠くからの撮影した場面だけ)
 だが何より目を見張るのは撮影の為に掘られた対戦車壕だろう。
 村のセットの中に出来た大きな対戦車壕は少なくとも自分は見た事がない。
 また個人的は煙幕でソ連軍陣地を撹乱または視界を奪いながら川を渡るドイツ軍の姿が描かれている事も感心するところだ。まさに渡河作戦の基本みたいである。
 第二次世界大戦が興味の対象であるミリオタなら見て満足の作品である。

悲劇と愛を織り交ぜた良作

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 本作はラヴロフとマーシャの恋愛模様が描かれています。
 野戦病院内での2人の様子を見てベテラン看護師がニヤニヤして、前線での2人の様子を見てヤレヤレと呆れる将校
 そんな場面があったりする本作はまさにメロドラマな展開であったりもする。
 だが、前線の描写は容赦なく倒れる士官候補生達を描く。
 空襲を受ける場面ではパニックから塹壕が飛び出してしまい、死んでしまう。だが塹壕に残っても塹壕が壊されて埋まってしまう。
 ドイツ兵との白兵戦でドイツ語が通訳できるインテリな士官候補生がなんとか勇気を出してドイツ兵を倒したと思いきや、すぐに別のドイツ兵によって倒される。
 火炎放射で焼かれ、大火傷を負ながらも部隊の全滅と守備していた地域が占領されたと伝達する政治将校
 爆風でひっくり返った対戦車砲で両足を切断してしまった士官候補生
 史実に基づくだけに次々と倒れる登場人物達、まさに戦場の無情を感じさせます。

 戦場の苛烈さ、恋愛模様、士官候補生たちの友情で物語は進みます。2時間以上の長さとは言え、中だるみなくテンポはよく進んで行く作品だと思います。戦争映画として見る側が間のラヴロフとマーシャの恋愛模様を見るのに難が無ければ良い戦争映画として楽しめる作品です。

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 本作はタイトルは原題の「The Last Frontier」から邦題で大きく変わりましたが、80年目と言う意味では意義深い作品だ。
 今年が第二次世界大戦でのドイツとソ連の戦争が開戦して80年目になります。(日本でも太平洋戦争開戦から80年目でもある)
 日本での公開時期も80年前にポドルスクの士官候補生達が戦った頃と重なる。多くの若者達が戦場で散る無情さを実感する映画になり、時期も思いを馳せるに頃合いが合った作品です。

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