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台湾新総統就任で迎える中台危機

 5月20日に台湾(中華民国)の指導者である総統として新たに就任する頼清徳氏
 瀬新総統が迎える台湾の危機、中国(中華人民共和国)との危機は新たな段階を迎えます。

頼新総統の対中方針

 まずは頼清徳氏が対中方針をどう考えているか。
 台湾総統選挙で勝利した時に頼氏は「現状維持する」として蔡英文政権の方針を受け継ぐと述べている。
 また、中国との交流や協力したい事も述べている。
 蔡英文氏と同じ民主進歩党でもあり、台湾の独立性を持たせつつ、中国との交流など経済関係を望むと表明している頼氏

 そんな頼氏は2015年の台南市の市長であった時には「台湾独立」を強く主張する発言をしている。
 この当時は中国との関係改善を実行する馬英九氏が総統の時で、そうした背景から述べたと思われる頼氏の発言
 総統として現状維持路線を取るとする頼氏には、台湾独立の思考があると言えます。少なくとも中国との関係は距離を取りながら交流する事になるでしょう。

中国の台湾への接触

 頼新総統が就任となる直近の日々で、中国は台湾との接触を図っています。
 4月27日に台湾の野党である国民党のトップである傅コンキ氏が国民党の立法委員(台湾で国会に相当するのは立法院で、国会議員に当たる人を立法委員と呼ぶ)達を連れて北京を訪問
 北京で中国共産党の指導部序列4位の王滬寧政治局常務委員と会談した。
 ここで王氏は「1つの中国」の原則を掲げ、台湾の独立と台湾が他国と協力関係を結ぶ事に反対であると述べています。
 傅氏はこの会談が出来た意義を好意的に述べている。

 また、これより前に2008年から2015年にかけて台湾の総統であった馬英九氏が4月10日に北京で習近平国家主席と会談
 ここでも習氏は「1つの中国」を述べ、「家族と国家が一緒になる歴史の流れをとめることができない」と語っている。
 中国の台湾野党と台湾前総統への接触
 頼清徳氏が新たな総統に就任する事への警戒感が強いと言える。
 だから野党と対中関係の良好を望んで実行した元総統と国家主席が会談する。

 先に書いた国民党の訪問団は中国からの台湾への観光旅行の再開を取り付けたと発言している。
 中国文化観光省は4月28日に台湾と海峡を挟んで隣り合う福建省の住民による台湾への観光目的の渡航を許可すると発表した。
 人の交流が多くなり友好が高まるのは良いものの、野党への接近は中国が台湾内部から頼新総統の政権を揺さぶる狙いがあると見える。

台湾有事は起きるか?

 中国は「1つの中国」の考えで台湾は中国の一部であると考えています。
 台湾と中国大陸が統合して1つの中国が完成すると言う考えであり、何らかの形で台湾が中国になる事を望んでいる。
 それが台湾が自ら中国への統一・併合を申し出たり、台湾が香港並みの自治を約束した上で中国との統一をするような台湾から進んで中国になるのが中国にとって一番良い展開と言えます。
 中国とは経済関係で繋がりたいものの、中国になろうまでは考えていない台湾の人々
 このギャップはそうそう埋まる事は無い。

 そうなると武力による強引な台湾統一となる。
 近年の中国海軍が東アジアで最大の海軍戦力を持ち、強襲揚陸艦「玉申」が3隻(もう1隻が建造中)にドック型輸送揚陸艦「玉昭」8隻をはじめ上陸作戦に必要な揚陸艦を揃え、6個の海軍陸戦隊旅団を持ち台湾に上陸する戦力は揃っています。
 台湾独立に関して大きな支持を集められる蔡英文氏が総統でなくなり、頼清徳氏が総統として支持が集まるか不明な状況
 後は中国がいつ実行するかの段階にあると言えます。

 まずは頼氏が総統として中国にどんな態度を示すかによります。
 頼氏が中国との融和や友好を第一にすると示すと、中台での対立が高まらない一方で台湾内部での不満は高まる。
 馬英九政権の時は中国との友好政策に反対した学生による「ひまわり学生運動」が起き、台湾の国会である立法院の議場を学生達が占拠する事件も起きている。

 では台湾独立を強く示すとどうなるか?
 より中国は台湾周辺での軍の活動を強めるでしょう。また、中国との友好を求める国民党が政権を突き上げる可能性もある。
 極端に寄れば内部が揺れる台湾、だからこそ頼氏は現状維持路線を取ると発言しているのです。
 中国の圧力と経済を始めとした内政をどう対処するか、頼清徳氏が総統として歩む先は困難が予測されます。
 

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