本におかえりなさいませ。
本を読む時に必須なアイテム「栞」。
蔦屋書店で本を購入すると栞をサービスでつけてくれるのだが、そこに書いてあった一言。
「本におかえりなさいませ。」
当初なんて大袈裟でキザな言葉なんだと冷笑していた。帰るのは自分の家であって本ではないと。
だが…………。
我々は生存している以上、様々な事が身の回りで起こる。当たり前の話だ。
そして自らの内にある精神も様々な事象に一々捕らわれる事も珍しくない。
悩んだり、イライラしたり、憂鬱になったりと、とかくマイナス思考に陥りがちである。
発想を変えてプラス思考に転じたとしても限界というものがある。
普段突っ走っていても、ふと立ち止まって考える事は誰にでもある事だ。人間はそんな単純な生き物ではない。
翻ってみると自分自身はどうか?
職場や家でマイナスな想念が沸き起こっても、気付くと淡々と本を読んでいる。否、職場でも家でも時間があれば本を開いていると言った方が正しい。ふと気付くと息をする様に読んでいるのである。
それらの異常とも言える行動を人は「活字中毒」と言うのかも知れないが、自分自身としては心乱れた時に落ち着ける場所として無意識に本という場所(読書という行為)に立ち返る防衛行動なのかも知れない。
自らの内なる精神が外界の喧騒を避けて静謐な場所を欲しているのである。
そういう風に考えてみると、蔦屋書店の例の栞の一言。
「本におかえりなさいませ。」
………極めて本質を突いた瞠目すべき一言であるという事が判明する。
この短くも深淵なる一文を考えた人は、本という存在を知り抜いているだけでなく、本その物に愛を感じているのだろう。そして考えに考えた珠玉の一言に違いない。
正に魂の一言である。
大袈裟でキザな言葉だと思ってご免なさい。
蔦屋書店さん。
最後までお読み頂き有り難うございました。 いつも拙い頭で暗中模索し、徒手空拳で書いています。皆様からのご意見・ご感想を頂けると嬉しいです。