桜の追憶 (散文⑵)
私は公園に入るやいなや、その桜を認めると、そのあまりの美しさに思わずためらった。
夕陽の琥珀色の明るみの中に乱れ立った桜の木々は、その花で空を一面に覆い、豊穣な桜の花が梢に美しく結実していた。
花々の反映を受けた桜の木々は、優美な空気の中で静かに微笑していた。それらの花びらが風に吹かれてそよぐ様があまりに叙情的で、私の胸を一層染めた。
今年の桜はほんとうに見事だった。ほんとうに桜は美しく咲き乱れているきりだった。
明日には大雨が降りしきって、明後日にはこの桜も落ちて緑色の葉が息づいてしまうだろうと思うと、この桜の栄華を一層目を開いて認めようと努めるばかりであった。
この美しさが永続すればいいのに!!…
…私は時間の残酷さを恨んだ。
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