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泣けない泣き虫③洪水

ウルとの突然の別れは何歳の時だったっけ?

本州に台風が直撃した

大雨、裏の川の氾濫、床上浸水、停電、断水

とにかく怖かったのだけは覚えてる

1980年代生まれの人はもしかしたらおぼえてるかもね

怖くて怖くて2階の部屋で家族みんなで震えて夜を明かした

朝になって1階に降りると、水で畳が浮いてた

家具もグチャグチャ

幼いボクはよく分からなかったけど、茫然とする家族を見てとにかくこれが異常事態なんだってことはわかった

そしてボクはひたすらに泣いていた

泣いて泣いて泣き疲れて寝て…

少し落ち着いたら何も言わず親の手伝いをした

家の中から出ないように…


そして大切なことを忘れてた


いや、本当は気づいてたかもしれない


でも、コワかったんだ


動くのも、見に行くのも……


雨と浸水が落ち着いた翌朝、見に行ったよ


ウルを。


小屋はひっくり返って流されて場所も変わってた


ウルは?ウルは?……ウルはどこ????


「クゥゥゥゥゥン……」


?!生きてる!!!


チェーン目いっぱい引っ張て庭の高台に上って震えてる

ブルブル震えながらこっちを見るウル

「ごめんね!!!」

「生きててくれてありがとう!!!」

けど、安堵も束の間

流石にウルにとってのストレスは相当なものだったんだと思う

その日以降エサを食べることなく

みるみるやせ細っていき

そして数日後には………


ウルの「いのち」とのお別れだった


泣く母

泣く長姉

泣く次姉

庭に埋める父


黙々とそして淡々と父の手伝いをするボク


姉「あんなに可愛がってたウルが死んじゃったのになんで泣きもしないの???」


分かるけど、出ないんだよね。いつもは直ぐ涙出るのに

この後すぐ泣いたよ?

でもそれは起こる姉が怖かったからだ

ウルとのお別れに涙した訳じゃなかった

どうして仲良しだったウルとのお別れにボクは泣けなかったのか未だに分からない


これがボクが覚えてる限りで最初の


「泣けない泣き虫」。


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