見出し画像

米倉恒貴に聞く「『確認しまくっている“守り方”』についてのヒント」

さて、昨日の記事の続きみたいなもんです。

船山貴之と話し終えると、少し離れたところでライターの赤沼さんが米倉恒貴と話していたので僕も合流しました。米倉はちょうど、この日の「話したい選手(その2)」でした。特別な理由はありませんが、なんとなーく、船山と米倉に話を聞けたらこの日の取材は終わりと考えていました。話すだけでも結構疲れちゃうので、1日にあまりたくさんの選手の取材はできません。

尹さんのトレーニングにはいくつかの“定型”があります。その1つが、(誰かに怒られそうなのでテキトーにしか表現しませんが)チームとしてどう守るかの基本理解を深めようとするもの。この日、開幕戦と同様に右サイドMFのポジションに入ってプレーしていた米倉には、尹さんからの細かい指示が何度も飛んでいました。

もっとも、指示が飛ぶのは米倉だけじゃありません。同じポジションに入る他の選手、その下に入るサイドバックの選手、逆サイドMF、ボランチ、センターバックと、DFライン4枚、中盤4枚のほとんどすべてに「こうなったらこうでしょ」みたいな指示がある。それらは基本的には日本語ですが、「こうなったらこうでしょ?」の後にちょっと韓国語っぽいニュアンスの「んあ?」(わかるよな?)みたいな言葉があり、「あの『んあ?』に謎の迫力があるんですよね」とあるスタッフは言っていました。同感。

では、尹さんはどのような守備と、その先にあるどのような攻撃を作り上げようとしているのでしょう。赤沼さんの取材が落ち着いたところで、ちょっとだけ聞きました。

「伸びしろですねぇ」としか言えません

――サイドバックとサイドハーフの動き方、特に守り方の原則の違いと難しさをどんなところに感じている?

僕が今までやってきたのは、サイドハーフでもサイドバックでも、互いをカバーし合うような動き方ですよね。例えば自分がサイドハーフであるとして、もしサイドバックが前に出て相手にそのスペースを使われたら、自分がちゃんと相手についていってカバーする。そういう守り方。

でも、尹さんのやり方は基本的にゾーンなので、ヘタに形を崩してまでサイドハーフが戻るのではなく、そのまま前でプレッシャーをかけられるようにコントロールしろと。そこが大きく違う。

僕の場合、それまでのやり方が体に染みついてしまっていたから、どうしても相手についていこうとしてしまって。そこがなかなかうまくいかなかったところだったんです。でも、最近になって、感覚的にちゃんと理解できるようになってきました。細かいところはすごく難しいですけど。

――今日のトレーニングでも、守り方についてかなり細かい指示を受けていました。ああいう感じのコミュニケーションを、ずっと取り続けている感じですか?

チームとしてはもちろんですけれど、僕自身、個人としてずっとその話をしてもらっています。僕がなかなかうまくできなかったところがあったので、そういう戦術の確認はずっと続けているし、これからもそうじゃないかなと。

尹さんのサッカーであのポジションをちゃんとこなすためには走力も必要だし、もちろん守備だけじゃダメ。守備をして、しかも前に出て行くという肉体的にはキツいことを求められているので。すごく難しいんですけど、鳥栖もセレッソも、それをやったことで結果を出したという事実がありますから。だから、やれば結果が出ると信じているし、最近は、最初の頃に比べて全体がスムーズに攻撃にいけるようになっていると思います。

――そこがスムーズになるほど、サイドハーフの負担を自分でコントロールできるようになりそうですね。“抜くところは抜く”みたいな。

そうですね。自分がしんどくならないくらいの状態で“うまく守る”ことができれば、その次の“いい攻撃”にも間違いなくつながりますから。

――30歳を過ぎてみっちり仕込まれる楽しさというか、それを全身で感じているように……見えますよ。

「伸びしろですねぇ」としか言えません(笑)。

----------------------------------------

ニヤリと笑って、米倉はクラブハウスに戻っていきました。「楽しいでしょ?」と聞かれて「伸びしろですねぇ」と返すということは、楽しさよりもキツさが上回っているということでしょうか。そのあたりはよくわかりません。

とまあそんな感じで、この日は「話したい選手(その1)」と「話したい選手(その2)」の取材があまりにもスムーズに流れていったので、もうひとり聞いてみようかなという気になりました。そこにタイミングよく戻ってきたのが、「話したい選手(その5)」くらいの候補だったゲリアさん。

琉球との開幕戦、右サイドは米倉とゲリアのコンビでした。で、そこをバンバン崩されて……ということをもう一度よく考えるために、こりゃあ話を聞いてみようと考えたわけです。お願いジェイソン。

いつも応援ありがとうございます! いただいた温かいサポートは、これからの取材活動に活用させていただきます。