見出し画像

増嶋竜也に聞く「開幕戦、ジェフの5バックはなぜ30分間も耐えられたのか」

おとといの火曜日は、夕方からの打ち合わせで久しぶりにユナパへ。そのまま蘇我駅周辺で晩メシを食うことになったので、「あ」と思い立って駅前のリブマックス蘇我に泊まりました。宿泊代はまさかの税抜3796円。こりゃあもう、素直には喜べない新型デフレですよね。むしろ怖い。

明けて翌日の昨日も、朝からユナパに向かいました。

ファン・サポーターへの全面的な非公開練習が続く難しい状況ですが、メディア向けとしては2度目の公開日でした。ひまに飽きちゃうほどひまな最近は、相変わらずFC琉球との開幕戦を見返しています。で、何度見てもやっぱり、「よく守ったな」と感じるわけです。

どこかを痛めた新井一耀に代わって増嶋竜也が投入されたのが59分。その数分後にベンチから指示が飛んで5バックに変更された時は、さすがに「早すぎる」「長すぎる」「ヤバすぎる」と思いました。つまり、不安のほうが圧倒的に大きかった。

記者席にいた僕は、ピッチに入ったばかりの増嶋竜也のリアクションをじっと見ていました。尹さんから“5”の指示が飛んだ瞬間、3CBの左に入った彼はチャン ミンギュ選手にかなり大きめのジェスチャーで何かを伝えていた。結構強めに、厳しい顔で。

あの時、増嶋竜也は何を考えていたのか。それがずっと気になっていたので、昨日のトレーニング終了後、bayfmさんとJ:COMさんの取材対応を終えた彼を呼び止めました。

あの瞬間、増嶋竜也は「怖い」と感じていた。

――59分に投入されて、その数分後に5バックに変更された。あの時、チャン選手にかなり強めに声をかけていたでしょ?

まず、5バックになった瞬間の決め事として、「前に出て相手を潰すのは俺がやるから、お前は後ろでカバーに専念しろ」ということです。真ん中にいるチャンが前に出る守備をしてしまったら、間違いなくバランスが崩れる。でも、5バックになったからといって全員が下がり過ぎたら、もっとおかしなことになりますよね。

だから、サイドの選手は相手のサイドの選手、ボランチは相手のボランチに必ずプレッシャーをかけて、真ん中に入ってきたら俺が潰しに行く。それだけをパッと、決め事として伝えました。

――その伝達がスムーズで、選手たちの意識がサクッと切り替わったことに驚いた。だから、きっと5バックに変更する可能性があることはみんなの頭の中にあったんだろうなと。

今のチームには「こういう時はこう守ろう」という決め事がちゃんとあって、それを尹さんがちゃんと作ってくれていて。ゲームの途中で自分が入って、そのタイミングで戦い方を変えたとしても「こうやって守ろう」という意思の統一を図りやすいと思います。そういう部分は、あの試合で間違いなく生きましたね。30分間は長かったけれど、「守れる」と思えましたから。

まあ、中身はカッコ悪かったかもしれないですけれど。それでも、開幕戦で、最後まで守り切って、勝って、勝点3を取った。だから、あれはあれで良かったのかなって。

――やっぱりあの試合の“すべて”はそこにあって、それができるかどうかは、ジェフにとってはめちゃくちゃデカいことだから。

そう。それがずっとできなかったですからね。

――昨シーズンのラストもそうだった。山口戦(第38節)とか、最終節の栃木戦とか、増嶋選手は“締め”を託されて途中出場したけれど、その直後に失点する試合が続いてしまった。あのショックは、かなり大きかったんじゃないかと思って。

正直に言うなら、自分を許せなかったですよ。何ひとつとして、与えられた仕事をこなせない自分が。ああいう展開で、自分が入ってから失点して負けるなんて、守備の選手としてはあり得ないですから。

夏場に盲腸になって、コンディションがなかなか戻らなかったこともあって、周りはみんなフォローしてくれました。でも、結局その状態のまま最後までいってしまって。このチームに自分がいる意味を考えさせられる半年間だったし、どうしようかなって。結構マジで、めちゃくちゃ悩みました。

――それを聞くとなおさら、あの30分を守り抜いたことの価値を感じる。

まあ、ここからですよね。俺、開幕戦のあのタイミングでいきなり途中出場することになって、自分でもびっくりしたけど、頭をよぎったんです。試合に出られなくなって、自分が出ても失点して、それで負けてという、あの昨シーズンの後半のことが。

マジで久しぶりだったんですよ。ピッチに立つのが「怖い」と思ったの。だから、もちろんできる自信はあったけれど、やっぱりちゃんと結果につながって良かったなって。

**********************************************

だから尹さんは「形」にこだわる(かもしれない)

というわけで、今回はジェフ千葉の増嶋竜也についての取材記事でした。

たったの179センチで、しかももうすぐ35歳になる増嶋竜也は、なぜあんなにヘディングが強いのか。その答えを考えるだけで、サッカーはもっと楽しくなります。琉球戦の彼は、隣のチャン選手に「俺が競るからお前は待て」と指示しました。そうやって“環境”を作ったからこそ、相手の攻撃をヘディングで跳ね返しまくることができた。もしかして、あれなら30分間と言わず40分間でもいけたかもしれません(いやそれはキツいか)。

しかしそう考えると、増嶋が言うピッチ内の「決め事」を作ることが、選手のポテンシャルをフルに発揮する上でどれだけ大事かということもよくわかります。

だから尹さんは「形」にこだわるのでしょう。「サッカーがうまいヤツが自由にやってどうすんだ。うまいヤツが“ちゃんと”やるから強いんだろ?」なんて、選手たちにはそんなことを伝えているかもしれません。単なる妄想ですけれど。

いつも応援ありがとうございます! いただいた温かいサポートは、これからの取材活動に活用させていただきます。