見出し画像

クロチアゼパム日記②        長く会社勤めをしてきた 2024/7/21

 今は国民健保料に驚くフリーランスだけど、61歳まではサラリーマンだった。バブル時代に仕事を覚えたせいか、創造も付加価値も大して生まない、仕事のための仕事をやってきたのが実態だ。 教養は乏しく、志も低い、頑張りが効く働き手でもなかった。先人の蓄積に頼り、失われた30年を生んだ当事者の端くれだ。Vシネマによると「クスリを商売にする奴は外道」らしいが、僕たちの世代は、下請けや非正規、外国人労働者を搾取して、個の成績と身分を守ってきた外道世代と呼ぶのが相応しい。いくら声高に執拗に叫ばれてもDXが興らないのは、外道世代が多重下請け構造でIT部門をスポイルしたせいである。そのスポイルを僕は生業にしてきた。外道世代は、社会の矛盾や目指すべき将来に無頓着で、既得権の固着や弱者の貧困を気にも留めようとしない愚昧世代とも言える。愚昧で外道、そんな世代の特性を僕は強く有している。
 そんな僕が言うのもかなり無理があるのだが、昨今の企業活動に対する告発・批判については、強い違和感を抱いている。特に車の型式認定に係る「不正」報道だが、これってそんなに責められることであろうか。ユーザーの安全性を脅かしたり、輸出規制が掛かって国益を損なったりというようなこととは全然違う。 この「不正」とは別の会社であるが、2002年にタイヤを空に飛ばして死亡事故を起こした自動車メーカーがあった。これは本当にひどい悪事であり、会社の腐り方を端的に示す出来事だった。コロナ真っ盛りの頃、僕はその会社で仕事をしており、ある場面に立ち会っている。それは、事故のその日に全社全部署で各部の部長がこの悪事を振り返り、拭いきれない罪をリマインドする訓示をし、全社員が黙とうするというものだ。僕も黙とうしたが、モノづくりをする企業の生真面目さと名門企業のプライドというかプライドを傷つけたことへの深い悔恨を感じ取った。この会社は存続する限り、この日のこの10分間を続けていくのであろうと確信した。名門企業も腐るし、根っから腐った会社もあるし、外道な部分も現存するが、日系企業と社員の根底は善良だ。 実害のない手続きミスのようなものを、大悪事のように騒ぎたてるのは、日本の産業界を貶めることだ。叩いて騒いで消費するネタとすべきではない。ともかくも、型式認定の厳格さと車の安全性は無関係であることは、はっきりした。では、何のための制度なのか。役所の存在感を示すための道具でしかないのなら、自動車メーカーの生産性を下げる旧弊としてメスを入れるべきである。自動車メーカーは、世界市場で戦い我が国の富を稼ぎ、多大な雇用を生んでいる基幹産業である。尊敬され尊重されてこそ正しく、事象の深掘り無しに貶められる存在ではない。
 ついでに川崎重工の裏金接待問題だが、僕に言わせれば “そんなこともあるでしょう、人間ですもの”という感じだ。潜水艦のような複雑で繊細な装置のメンテナンスは、さぞやシビアな仕事であることだろう。国防の要となる領域であり、乗組員の命に直結する整備に抜かりがあってはならないし、期間も限られている。こんな仕事は発注・受入側と受託・実施側の緊密な意思疎通や相互調整(譲り合い)がないと作業品質が落ちる。受託側が言いたいことが言える関係を築こうとするのは、自然な流れであるし、発注側も余りにも堅い拒絶で、関係性をギクシャクさせたくないという思いがあるだろう。嫌なことは、自衛官の金品に対する弱さである。普通なら幹部交代時にチェックと是正が入るべきことが、慣習化していまっている。武人が、特にこういう精鋭が金を欲しがるようでは、国防の根底に不安がある。川重は悪くない、自衛隊員の処遇が悪いのである。三菱重工製の修繕担当自衛官が、三菱以外の組織集団から金品を得ていないかと心配になる。
 かつてのぐうたら社員の意見ではあるが、「日本産業界の生産性の低さ」には一言ある。確かに無駄な会議や意思決定の遅さは否定しない。しかし、時代にそぐわない行政に対するコスト(規制や監督・指導への対応、接待、天下りの受入などなど)、不当に高い電力料金、人材の入替えの障害となる労働基準法、さまざまな既得権益集団との調整など、この国の行政システムこそが、企業活動の足をひっぱり生産性を阻害しているのでないか。経団連は、「旧姓の通称使用」によるロスに触れるくらいなら、もっと他に言うべきことがあると思う。そもそも経団連の存在自体が、我が国の生産性向上に寄与しているものなのか疑わしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?